ぶんかつブログ

「ぶんかつ島」へようこそ!「あつ森」で日本美術 前編

文化財活用センター〈ぶんかつ〉は、Nintendo Switchのゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』(あつ森)のなかに「ぶんかつ島」をつくり、夢番地を本日公開しました。夢番地とは「あつ森」の中で「ぶんかつ島」に訪れるために必要なコードです。
「ぶんかつ島」は、東京国立博物館や九州国立博物館など、国立文化財機構の所蔵品をモチーフとした、さまざまなエリアで構成されています。日本の文化財が織り成す豊かな世界の一端を、「あつ森」の世界でも体験していただけるよう工夫しました。
このブログでは「ぶんかつ島」の元ネタとなった日本美術やみどころを3回にわけて、くわしくご紹介します。

◆「ぶんかつ島」ってどんなところ?!
「ぶんかつ島」は、日本の文化財をイメージしたエリアからなる、日本美術に親しむ島です。
「埴輪 踊る人々」、「見返り美人図」(菱川師宣)、(以上、東京国立博物館蔵)、「針聞書」、「鬼瓦」(以上、九州国立博物館蔵)など、国立文化財機構が所蔵する縄文時代から近代までの文化財をモチーフにした、10個ほどのエリアで構成されています。

「あつ森」をプレイしている方は、ぜひ下記の夢番地から「ぶんかつ島」へ遊びにいらしてください。
夢番地コード:DA-4716-9183-8075
※Nintendo Switch Onlineに加入されている方のみ

◆「ぶんかつ島」を体験!YouTube動画
Nintendo Switch『あつまれ どうぶつの森』をプレイしていない方も、YouTube動画で「ぶんかつ島」を楽しめます。ぶんかつ【文化財活用センター】YouTubeチャンネルにて、「ぶんかつ島」体験動画を公開中、ぜひご覧ください。
https://youtu.be/VyscPmzvoPs

◆「ぶんかつ島」に着ていこう~新作マイデザインのご紹介~
ゲームの「あつ森」には、絵や服などの模様を自分の好きなように作れるマイデザインという機能があります。このたび「ぶんかつ島」オープンを記念して、東京国立博物館が所蔵する日本美術をモチーフにしたマイデザインを新たに公開しました。

マイデザインID:MA-9014-0004-4727


「みかえりびじんふう きもの」 / 「見返り美人図」(菱川師宣)


「こはんのゆかた」&「こはんのうちわ」 / 「湖畔」(黒田清輝)


「おどるハニワ ぼう」 「おどるハニワ」顔出し看板 / 「埴輪 踊る人々」

 

既に公開しているマイデザイン(「ふゆきなこそで えどふう」、「ふゆきなこそで いまふう」)も引き続き配布中です。
▷関連ブログ「「あつ森」マイデザイン 〈ふゆきなこそで〉を公開!」の記事を読む

◆なんの作品かわかるかな?!「ぶんかつ島」エリア紹介
ここからは「ぶんかつ島」の元ネタとなった日本美術についてご紹介します。

〈ぶんかつ島 屋外エリア〉
・「踊る埴輪」エリア


前方後円墳の上でハニワたちが踊っています。

「あつ森」をプレイしている方はご存知かと思いますが、「あつ森」の世界では、喫茶店の鳩のマスターが奥の部屋にハニワをコレクションしたり、工事になるとハニワが工事費用の募金を集めたり、たびたびハニワが登場します。
「あつ森」に登場するハニワのモデルのひとつと考えられるのが、「埴輪 踊る人々」(東京国立博物館蔵)です。

埴輪 踊る人々 埼玉県熊谷市 野原古墳出土 古墳時代・6世紀 東京国立博物館所蔵

▷ColBaseで「埴輪 踊る人々」を見る(写真 左)
▷ColBaseで「埴輪 踊る人々」を見る(写真 右)

ハニワ(埴輪)とは、古墳の上や周りに並べられた、土で作られたやきものです。
用途は、古墳に埋葬された人のための祭祀などと考えられています。
この「埴輪 踊る人々」が本当に踊っているのかどうかについては、諸説あるようです。

そのほか、パネルにつかわれた埴輪はこちらです。
▷ColBaseで「埴輪 挂甲の武人」を見る
▷ColBaseで「埴輪 盛装女子」を見る
▷ColBaseで「馬形埴輪」を見る
▷ColBaseで「埴輪 馬」を見る
▷ColBaseで「犬形埴輪」を見る

 

・「八橋」エリア


「あつ森」の世界にはカキツバタの花がないので、紫のパンジーやチューリップをカキツバタに見立てて、「八橋」の場面を再現しました。

「八橋(やつはし)」とは、平安時代を代表する文学『伊勢物語』第九段の舞台となった場所で、三河国(現在の愛知県)にあったとされます。

『伊勢物語』の主人公が東下り(京の都から離れて東国へと下ること)の旅の途中に、入り組んだ川に八つの橋が架かる「八橋」で休憩する際、川辺に咲くカキツバタが「いとおもしろく咲」くのを見て、主人公が都への未練の気持ちを詠む象徴的な場面です。
これによって「八橋」といえばカキツバタ、というイメージが定着しました。

『伊勢物語』が書かれた平安時代以降、「八橋」を象徴するモチーフの組み合わせとして、橋とカキツバタがセットで絵画や工芸にあらわされるようになり、やがて日本の伝統的な画題となります。

八橋蒔絵螺鈿硯箱 尾形光琳 江戸時代・18世紀 東京国立博物館

▷ColBaseで「八橋蒔絵螺鈿硯箱」を見る

こちらは江戸時代、京都の有名な呉服商「雁金屋(かりがねや)」に生まれた尾形光琳(おがたこうりん)がデザインした硯箱(すずりばこ)です。

硯箱の周囲に八橋とカキツバタを螺鈿(らでん)と蒔絵(まきえ)であらわし、蓋を開けると、川の流れを表す流水の模様が描かれています。
呉服屋に生まれた光琳らしい、とてもおしゃれな趣向です。

〈ぶんかつ島 屋内エリア〉
「ぶんかつ島」の奥にある、島民代表すたっふの家の中にも、文化財を楽しめる飾り付けがされています。

・「見返り美人」の間


「見返り美人図」の前で、「みかえりびじんふう きもの」のマイデザインを着て、記念撮影してみましょう。
※マイデザイン「みかえりびじんふう きもの」は袖丈の短い着物ですが、「見返り美人図」の女性が来ているのは袖丈が長い振袖です。

「あつ森」でキツネの美術商・つねきちが島に売りに来る絵画の中に、「しなやかなめいが」として「見返り美人図」(東京国立博物館蔵)が登場します。


見返り美人図 菱川師宣 江戸時代・17世紀 東京国立博物館

▷ColBaseで「見返り美人図」を見る

「見返り美人図」は菱川師宣(ひしかわもろのぶ)による肉筆(手書き)の浮世絵で、あざやかな紅色の振袖を着た女性が振り返る後ろ姿を描いたものです。

振袖には細かな模様が描かれ、帯は当時流行した「吉弥結び」という結び方をしています。
また、髪型も当時流行した「玉結び」をしていることから、流行に敏感な、とてもおしゃれな女性を描いたものだとわかります。
実際にこのような華やかな女性が街を歩いていたのか、想像が膨らみます。

・「花下遊楽」の間


小袖幕で江戸時代のお花見を再現してみました。

背景に着物が連なっているのは、「小袖幕(こそでまく)」という、宴(うたげ)の空間を仕切る幕を再現したものです。

「小袖幕」とは、小袖(着物)の袖口に紐を通して、幕としてつかうもので、江戸時代に活躍した井原西鶴の小説にも登場します。
江戸時代には、自慢の着物を幕にして飾る、というおしゃれな文化があったのです。

花下遊楽図屏風 狩野長信 江戸時代・17世紀 東京国立博物館

▷ColBaseで「花下遊楽図屏風」を見る

「花下遊楽図屏風(かかゆうらくずびょうぶ)」は、江戸時代のはじめに描かれた屏風です。 春に咲く海棠(かいどう)の下に幕を張り、その中で男女が楽しそうに歌い、踊る様子が描かれています。

この屏風のお花見でつかっているのは普通の幔幕(まんまく)で、小袖幕ではありませんが、江戸時代のお花見の華やかさを感じていただくために「ぶんかつ島」では小袖幕にしてみました。

小袖幕に使用した小袖はこちらです。

画像上段左から
▷ColBaseで「I-2924 小袖 黒綸子地波鴛鴦模様」を見る
▷ColBaseで「I-2779 小袖 白茶縮緬地桐石畳模様」を見る
▷ColBaseで「I-4272 振袖 白絖地楓竹矢来文字模様」を見る
▷ColBaseで「I-2823 小袖 白綸子地叉手網模様」を見る
画像下段段左から
▷ColBaseで「I-2775 小袖 染分綸子地若松小花鹿紅葉模様」を見る
▷ColBaseで「I-2953 振袖 白綸子地菊雲模様」を見る
▷ColBaseで「I-3936 小袖 染分紗綾地雪輪山吹模様」を見る

ここまで「ぶんかつ島」の一部をご紹介しました。続きはブログ続編(来月公開予定)をお待ちください。

たくさんの方が「ぶんかつ島」の夢を見てくださり、そして日本美術を身近に感じてくださるととても嬉しいです。

「ぶんかつ島」で撮影した写真は、ぜひ「#ぶんかつ島」とつけてSNSに投稿してみてくださいね。

◆ぶんかつ島アンケートのお願い
「ぶんかつ島」にお越しくださった方は、ご意見・ご感想をぜひお聞かせください。
アンケートにご協力いただいた方には、「ぶんかつ島の秘密」をお教えします。(アンケート実施期間:2022年12月31日まで)
▷「ぶんかつ島」アンケート

◆踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクト とは?
東京国立博物館の創立150年にあたる今年、東京国立博物館と文化財活用センターが共同して「埴輪 踊る人々」と「見返り美人図」の作品をはじめとする、所蔵文化財の修理に関連する費用のために皆様からのご寄附を募る修理プロジェクトを立ち上げました。あたたかいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
▷踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクトのページを見る

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カテゴリ: 文化財の情報