ぶんかつブログ

「ぶんかつ島」へようこそ!「あつ森」で日本美術 中編

文化財活用センター〈ぶんかつ〉は、Nintendo Switchのゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』(あつ森)のなかに「ぶんかつ島」をつくり、夢番地を公開しています*。

「ぶんかつ島」は、東京国立博物館や九州国立博物館など、国立文化財機構の所蔵品をモチーフとした、さまざまなエリアで構成されています。このブログは、3回にわけて「ぶんかつ島」の元ネタとなった日本美術やみどころをくわしくご紹介するうちの2回目の記事です。

*夢番地とは「あつ森」の中で「ぶんかつ島」に訪れるために必要なコードです。
島夢番地コード:DA-4716-9183-8075(※Nintendo Switch Onlineに加入されている方のみ)

▷関連ブログ「「ぶんかつ島」へようこそ!「あつ森」で日本美術 前編 」の記事を読む

◆なんの作品かわかるかな?!「ぶんかつ島」エリア紹介
前回は「踊るハニワ」エリアや「見返り美人」の間などをご紹介しました。今回も引き続き「ぶんかつ島」の元ネタとなった日本美術についてご紹介します。

〈ぶんかつ島 屋外エリア〉
・浜松エリア


なんだかありがたい雰囲気が漂います…

海辺の松原の景色を描く「浜松図」は、古くから「やまと絵」の代表的な画題でした。
「浜松」は、絵画だけでなく、蒔絵などの漆芸品や小袖(着物)などの染織品にもよく表現されます。

宮城県の「松島」など、現在でも松の名勝地は日本各地にあります。
広々とした浜辺に松の林が続く様子は、心安らぐ感じがします。

日本の心象風景といったところでしょうか。


松図屏風 伝土佐光信筆 室町時代・16世紀 東京国立博物館所蔵
▷ColBaseで「松図屏風」を見る

・礎石(そせき)エリア


規則的に配置された大きな石は、何の跡?

大きな石が規則正しく配列するこのエリア。
どうやら、ここにかつて存在した、大きな建造物の柱の跡のようです。また、地表に現れているのは、大きな鬼瓦です。


鬼瓦 高48.7 奈良時代 8世紀 福岡県太宰府市都府楼跡出土 九州国立博物館
▷ColBaseで「鬼瓦」を見る

こちらの鬼瓦は、現在の福岡県太宰府市にあった大宰府の政庁(都府楼)の跡から出土したもの。もしかしたら「ぶんかつ島」の礎石は、都府楼のような大きな建物の跡かもしれません。
歴史のロマンを感じます。

・大皿エリア


お花の文様のお皿に囲まれて…

江戸時代の初め、17世紀の日本では30cmを超える「大皿」が盛んに使われるようになりました。その背景のひとつに、世界的な大皿の流行があったようです。
実際に、江戸の遺跡から、中国やトルコで作られた大皿が日本へもたらされたことが分かっています。

また、17世紀には肥前地方(現在の佐賀県)の有田で、それまで陶器しか作ることができなかった日本で初めて堅牢で純白な「磁器」が作られるようになったため、新興大名などの富裕層が日本産の磁器の大皿を求めたようです。

それにとどまらず、日本産の磁器の大皿がオランダ東インド会社などを通じて西洋に輸出されたのだとか。
お皿から見える国際交流、興味深いですね。

▷「色絵蝶牡丹文大皿」を見る(左上:日本産・国内向け)
▷「色絵花卉文大皿」を見る(右上:日本産・輸出向け)
▷「青花八宝文大皿」を見る(左下:中国産)
▷「白釉色絵草花文皿」を見る(右下:トルコ産)

・日本庭園エリア


山水風?庭園にポツリとたたずみ気持ちは文人

石川県の「兼六園」や京都府の「桂離宮」など、日本庭園は全国各地にあります。
日本の庭園には中国の神仙思想に基づくものや、仏教の世界観を表現したものなどがあります。
庭園でくつろぐことも重要ですが、その庭園を作り上げた思想を調べてみるのも楽しいです。

「ぶんかつ島」の山水風の庭園は、島民たちの憩いの場です。

深淵なる山水画の世界をがんばって表現した山水風の庭園で、ちょっとだけ文人(かつて日本人が憧れた、山水画によく描かれる、隠遁生活を送る中国の知識人)気分を味わえます。

〈ぶんかつ島 屋内エリア〉
「ぶんかつ島」の奥にある、住民代表「すたっふ」の家の中にも、文化財を楽しめる飾り付けがされています。

・展示室


この床板、東京国立博物館の本館展示室の床と似ているのです

島民代表すたっふの家に入ると、最初に現れるのは展示室。
「あつ森」の世界では展示ケースや美術品も充実しています。「あつ森」のお部屋を展示室にされている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここから繋がる部屋には、文化財に着想を得た飾りつけがされています。

・「風神雷神」の間


あつ森のアイテム「こあくまなつの」を付けていますが、風神雷神は悪魔でも鬼でもなく、神様なのです

「あつ森」に登場するのは俵屋宗達「風神雷神図屏風」(建仁寺所蔵)です。
この屏風は、17世紀に制作されました。

それからおよそ100年後、18世紀に、前回のブログでご紹介した「八橋蒔絵螺鈿硯箱」を作った尾形光琳がこの屏風を写しました。

それが、こちらです。

 

風神雷神図屏風 尾形光琳筆 江戸時代・18世紀 東京国立博物館所蔵
▷ColBaseで「風神雷神図屏風」を見る

今から300年前に、その100年前の名作が写され、しかもそれが両方今にまで伝わっているということに驚きます。
このように、直接師弟関係のない人物の作品などからその人を師匠として尊敬し、写しなどを通して学ぶことを「私淑」といいます。このような文化継承のあり方も素敵ですね。

尾形光琳が私淑した、俵屋宗達の「風神雷神図屏風」の前で、雷神さんになりきり。

「あらしのよるのかべがみ」の雷鳴のタイミングでうまくシャッターを押すと、雷を起こす雷神さんのかっこいい写真が撮れますよ。

ここまで「ぶんかつ島」の各エリアをみなさんと見てきましたが、解説するエリアも残すところわずかとなりました。続きはブログ続編(12月公開予定)をお待ちください。
たくさんの方が「ぶんかつ島」の夢を見てくださり、そして日本美術を身近に感じてくださるととても嬉しいです。

「ぶんかつ島」で撮影した写真は、ぜひ「#ぶんかつ島」とつけてSNSに投稿してみてくださいね。

◆ぶんかつ島アンケートのお願い
「ぶんかつ島」にお越しくださった方は、ご意見・ご感想をぜひお聞かせください。
アンケートにご協力いただいた方には、「ぶんかつ島の秘密」をお教えします。(アンケート実施期間:2022年12月31日まで)
▷「ぶんかつ島」アンケート

◆「ぶんかつ島」を体験!YouTube動画
Nintendo Switch『あつまれ どうぶつの森』をプレイしていない方も、YouTube動画で「ぶんかつ島」を楽しめます。ぶんかつ【文化財活用センター】YouTubeチャンネルにて、「ぶんかつ島」体験動画を公開中、ぜひご覧ください。
https://youtu.be/VyscPmzvoPs

◆「ぶんかつ島」に着ていこう~新作マイデザインのご紹介~
「あつ森」には、絵や服などの模様を自分の好きなように作れるマイデザインという機能があります。「ぶんかつ島」オープンを記念して、東京国立博物館が所蔵する日本美術をモチーフにしたマイデザインを新たに公開しています。

マイデザインID:MA-9014-0004-4727

既に公開しているマイデザイン(「ふゆきなこそで えどふう」、「ふゆきなこそで いまふう」)も引き続き配布中です。
▷関連ブログ「「あつ森」マイデザイン 〈ふゆきなこそで〉を公開!」の記事を読む

◆踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクト とは?
東京国立博物館の創立150年にあたる今年、東京国立博物館と文化財活用センターが共同して「埴輪 踊る人々」と「見返り美人図」の作品をはじめとする、所蔵文化財の修理に関連する費用のために皆様からのご寄附を募る修理プロジェクトを立ち上げました。あたたかいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
▷踊る埴輪&見返り美人 修理プロジェクトのページを見る

▷関連ブログ「「あつ森」で考える、ゲームの学術的な可能性 」の記事を読む

▷関連ブログ「ColBaseで「あつ森」を楽しもう!国際ミュージアムデー編」の記事を読む

▷関連ブログ「ColBaseで「あつ森」を楽しもう!鳥獣戯画編」の記事を読む

▷関連ブログ「ColBaseで「あつ森」を楽しもう!」の記事を読む

カテゴリ: 文化財の情報