ぶんかつブログ

【未来の博物館】みほとけ調査とぶつぞう調査隊

東京国立博物館(トーハク)の創立150年を記念して、文化財活用センター〈ぶんかつ〉は「未来の博物館」という特別企画を開催しています。ぶんかつ開設から5年目の集大成ともいうべきこの展覧会は、トーハク本館と東洋館にある3つの会場で、先端的なデジタル技術や高精細複製品を使った新しい日本美術体験を楽しんでいただきたいという企画です。

第3会場の「夢をかなえる8K」では、シャープ株式会社の協賛により、茶碗と仏像を取り上げた2種類のデジタルコンテンツをご体験いただけます*
*混雑緩和のため、第3会場では整理番号システムを導入しています。

▷特別企画「未来の博物館」の特設ページを見る


未来の博物館「夢をかなえる8K」会場(東洋館エントランス)

わたしはもともと仏像が専門分野なので、このうち8Kで文化財「みほとけ調査」を担当しております。8Kで文化財「みほとけ調査」は、博物館ではガラスケース越しで、あるいは遠く離れて見るしかない仏像に対して、懐中電灯を模したライトデバイスと高精細な3DCG映像によって、学芸員が日頃おこなっている調査のような鑑賞体験ができることを目指しました。


「みほとけ調査」コンテンツ(C-20菩薩立像)

2021年の実証実験を経て今回、8Kモニターの大きさが70インチから120インチへと大型化したほか、3体の仏像から1体をお選びいただき、じっくり見られるようにバージョンアップしているので、以前に体験済みという方もぜひこの機会にふたたび体験いただければ幸いです。

▷8Kで文化財「みほとけ調査」(2021年の実証実験)の開催概要を見る

今回試みのひとつとして、展示室で仏像を見るときにお使いいただけるワークシート「調書に挑戦!」もご用意しました。ワークシートは第3会場の「夢をかなえる8K」で配布しています。

▷ワークシート「調書に挑戦!」はこちらからダウンロードできます


ワークシート「調書に挑戦!」表紙

C-20 重要文化財「菩薩立像」鎌倉時代・13世紀

このワークシートは、学芸員による調査で作成する「調書」をイメージしたもので、わたしたち学芸員が仏像を見るポイントが挙げてあります。仏像を見て、それを「ことば」にしてメモすることで、仏像の名前や作られた時代が推測できるようになります。調査では懐中電灯をもって詳細をよく見ようとすることから、デジタルコンテンツの「みほとけ調査」ではライト型デバイスを使うスタイルにしています。見たいと思った部分をライト型デバイスで意識的に照らすことで、より能動的に仏像をご覧いただけるようにいたしました。

ワークシートで取り上げた仏像(C-20菩薩立像)は、8Kで文化財「みほとけ調査」でじっくりみられる3体のひとつで、トーハクの所蔵品のなかでもひときわ人気の仏像です。会期中はなんと!ホンモノが本館11室に展示されているので、「みほとけ調査」で予習してから展示室で仏像をじっくりご覧ください。

試みはもうひとつ、今回の展示にあわせて企画した「ぶつぞう調査隊」というワークショップを実施しています。
トーハクでは毎年「トーハクキッズデー」と題して、子どものためのさまざまなプログラムを実施しています。今年度は150周年を記念して毎月第4日曜日に「月イチ!トーハクキッズデー」を開催しており、「ぶつぞう調査隊」もそのなかのイベントのひとつとして、会期中の10月23日と11月27日の2日間、1日4回ワークショップを実施することにしました(10月23日は終了)。キッズデーは小学校低学年のお子さんでも楽しめます。10月23日の「ぶつぞう調査隊」では、子どもたちが調査隊の一員となって、隊長のわたしと一緒にC-20菩薩立像を「調査」する体験を楽しみました。

▷「月イチ!トーハクキッズデー」(トーハク150周年記念特設サイトへ)


「ぶつぞう調査隊」実施風景

ぶんかつの企画担当がおこなうアウトリーチプログラムでは、学校などへ高精細の複製屏風を持参して、その前でプログラムを実施します。

▷「ぶんかつアウトリーチプログラム」の実施概要を見る

わたしも講師としてさまざまな学校へ行って授業をしましたが、仏像をテーマに子どもたちにお話をするのは初めて。仏像はやっぱり難しいかな、みんな飽きてしまったらどうしよう、、、とドキドキしながら初回を迎えたところ、「ハイ!ハイ!」とみんな積極的に手があがり、たとえば「髪型はどうなってる?」と聞くと、「ソフトクリームみたい」「お相撲さんみたい」と、気づいたことを自分なりのことばで話してくれました。


「菩薩立像」の頭髪部分

長い髪の毛を高く結い上げています。

小さいお子さんも、モジモジしながらも勇気を出して発言してくれて、みんな立派に調査隊としての使命を果たしてくれたようです。ワークショップが始まる前に「仏像を見たことある?」と聞くと、博物館、お寺、修学旅行、親御さんの実家などなど、さまざまな場所で仏像との出会いがあることがわかります。普段、何となく見ている仏像。もちろん信仰の対象ですが、一方でわたしたち仏像を専門分野とする学芸員が仏像のどこを見ているか、一緒に体験してくれたことで、世界中にたくさんある仏像を大切に思い、身近に感じることができるようになるなら、調査隊長としてこれ以上の幸せはありません。

1日目は合計116名のお子さんにご参加いただきました。「ぶつぞう調査隊」は事前予約なしで当日ご参加いただけますので、2回目の11月27日も職員一同お待ちしております。

▷関連ブログ「【未来の博物館】四季をめぐる高精細複製屏風で日本美術を感じる」の記事を読む
▷関連ブログ「8Kモニターと懐中電灯で、仏像調査を体験してみませんか?」の記事を読む

 

「未来の博物館」をご紹介するシリーズブログ、次回は第1会場「時空をこえる8K」について、11月24日(木)公開予定です。

東京国立博物館創立150年記念 特別企画「未来の博物館」

会期 2022年10月18日(火)~12月11日(日)

開館時間 9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで

会場 東京国立博物館 (東京都台東区上野公園13-9)
第1会場 〈時空をこえる8K〉 本館/特別5室
第2会場 〈四季をめぐる高精細複製屏風〉 本館/特別3室
第3会場 〈夢をかなえる8K〉 東洋館/エントランス

休館日 月曜日 ※会期、開館日・開館時間、入館方法等については、諸事情により変更する場合がありますので、「未来の博物館」特設ページでご確認ください。

観覧料 総合文化展観覧料(一般1,000円、大学生500円)もしくは開催中の特別展観覧料[観覧当日に限る]でご覧いただけます

主催 東京国立博物館、文化財活用センター、NHK(第1会場)
協賛 キヤノン株式会社、シャープ株式会社

▷「未来の博物館」特設ページ