ぶんかつブログ

【未来の博物館】高精細複製屛風で四季と日本美術を感じる

東京国立博物館(ト―ハク)の創立150年を記念した特別企画「未来の博物館」が先週オープンしました。この展覧会は、〈第1会場 時空をこえる8K〉〈第2会場 四季をめぐる高精細複製屛風〉〈第3会場 夢をかなえる8K〉という3つの会場で、「デジタル×日本美術体験」を楽しんでいただこうという企画です。

特別企画「未来の博物館」をくわしくご紹介するブログ、初回は〈第2会場 四季をめぐる高精細複製屛風〉(協賛:キヤノン株式会社)の様子をお届けします。

▷特別企画「未来の博物館」の特設ページを見る

真っ白の展示室に高精細複製屛風が4つ。トーハクではめずらしい展示室の色ではないでしょうか。
屛風に描かれた季節と、その絵の世界観のみに没入していただけるよう白い展示室にしています。


この白さを保つべく、実は開幕直線まで関係者はスリッパで展示室に入っていました。もちろん、みなさまは遠慮なくお入りください!

展示しているのは、春夏秋冬それぞれの季節を感じる4つの国宝絵画、「花下遊楽図屛風」:春、「納涼図屛風」:夏、「観楓図屛風」:秋、「松林図屛風」:冬、の高精細複製屛風です。
現代の私たちの生活においてごく自然に感じている「季節」を展示の軸にすることにより、描かれた風景を身近に感じて自分の体験や経験に重ね、これらの屏風を描き、使い、受け継いできた人たちへ思いを寄せていただきたいというコンセプトをもとに、それぞれの屛風にプロジェクションマッピングを投影しています。

プロジェクションマッピングされるコンテンツは春(約3分)→夏(約1分)→秋(約1分)→冬(約3分)のループで、再生されているコンテンツの足元には「いまここの映像が再生されていますよ」という意味も込めて光の揺らぎを表現しています(コンテンツが再生されていない間は白い光が屛風にあたっていますので、屛風の細部まで間近でご覧いただけます)。


(春)花下遊楽図屛風の高精細複製屛風。消失部分を復元した高精細複製品を展示しています

原品では消失した部分を復元して複製制作したこの屛風、もとは2020年3月開幕「体感!日本の伝統芸能」展で公開される予定でした。新型コロナ感染症の拡大のためにあえなく展覧会自体が中止、この高精細複製屛風とプロジェクションマッピングを投影するコンテンツも一般公開できませんでした。それが今回、やっとお披露目となりました。
桜と海棠(かいどう)の花が咲きほこるなか、着飾った女性たちの宴が催されるうららかなシーンが蘇ります。400年の時を超え、貴人たちの花の宴に迷い込む、夢のひとときを体験してください。


(夏)納涼図屛風 今回のために新たに制作したコンテンツです

月の満ち欠けとともに描かれた情景を見てみると、私たちのごく身近にある平穏な暮らしに見えてくるかもしれません。みなさんの記憶の中にある、風や光、空気、湿度など肌で感じるものを思い浮かべながら、ぜひお楽しみください。
屏風の前に立つと、葉のこすれる音や虫の声も聞こえてきます。夏の夜の空気につつまれる感覚がしてくるようです。


(秋)観楓図屛風 こちらも今回のために新たに制作したコンテンツです

紅葉が風にゆれ、雁がはばたき、雪化粧の京の愛宕山を背に白鷺が舞い降りる、秋から冬へ移り変わる季節の中で、紅葉と宴を楽しむ人々の姿を見ることができます。ぜひ、そんな風景を散策する体験をお楽しみください。
落ち葉のうごきや、川の流れるスピードなど、作品の世界観をより高めるために開幕の直前まで調整を重ねました。


(冬)松林図屛風 2019年1月、2020年10月にも公開しています

朝もやの中から松林が浮かび上がり、陽の光によって松の色が変化し、雪が降り積もり、夜を迎える、晩冬の一日が映し出されます。屛風に映し出される映像に心を寄せると、周りに広がる風景とともに音、香りなど記憶の中にある風景を思い出すことができるかもしれません。

過去の日本人の営みの中で生まれた道具が、人の手から手へ受け渡されて今ここにあり、未来へ受け継いでゆく「文化財」となっていますが、その背景にあるものは四季折々の自然を美しいと思う心や、日本の伝統的な行事を楽しむ行為、機能と美を追求する精神など、今の私たちに続くものだと考えています。
この展示室で作品の世界を感じていただくことによって、本物の文化財を見るときの感じ方や見え方(想像力)が広がっていき、文化財を身近に感じていただくことにつながっていけば、本当にうれしく思います。

みなさまにとって文化財が身近なものになるよう、そして1000年先の未来に文化財が残せるよう、これからも私たちは努力してゆきます。

▷関連ブログ「失われた花宴~よみがえる花下遊楽図屏風~前編」の記事を読む
▷関連ブログ「失われた花宴~よみがえる花下遊楽図屏風~後編」の記事を読む
▷関連ブログ「松林図の世界を間近で体感! ~高精細複製品によるあたらしい屛風体験」の記事を読む

「未来の博物館」各会場の様子をご紹介するブログは次回、〈第3会場 夢をかなえる8K〉をテーマにして公開予定。お楽しみに。

東京国立博物館創立150年記念 特別企画「未来の博物館」

会期 2022年10月18日(火)~12月11日(日)

開館時間 9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで

会場 東京国立博物館 (東京都台東区上野公園13-9)
第1会場 〈時空をこえる8K〉 本館/特別5室
第2会場 〈四季をめぐる高精細複製屏風〉 本館/特別3室
第3会場 〈夢をかなえる8K〉 東洋館/エントランス

休館日 月曜日 ※会期、開館日・開館時間、入館方法等については、諸事情により変更する場合がありますので、「未来の博物館」特設ページでご確認ください。

観覧料 総合文化展観覧料(一般1,000円、大学生500円)もしくは開催中の特別展観覧料[観覧当日に限る]でご覧いただけます

主催 東京国立博物館、文化財活用センター、NHK(第1会場)
協賛 キヤノン株式会社、シャープ株式会社

▷「未来の博物館」特設ページ

カテゴリ: 展示・イベント