ぶんかつブログ

ぶんかつデジタル資源担当から3周年によせて

文化財活用センター〈ぶんかつ〉は2021年7月1日に3周年を迎えました。
〈ぶんかつ〉では企画、貸与促進、保存、デジタル資源、総務の担当セクションがそれぞれの歩みを進めています。
〈ぶんかつ〉3周年リレーブログ、第4弾はデジタル資源担当課長の村田からデジタル資源担当の取り組みについて、これまでとこれからの展望をご紹介します。

〈ぶんかつ〉の発足以来、デジタル資源担当が主に取り組んできたのは、「ColBase」(コルベース)[https://colbase.nich.go.jp/?locale=ja]と「e国宝」[https://emuseum.nich.go.jp/]という2つのデータベースです。いずれも国立文化財機構に属する4つの国立博物館と2つの文化財研究所が所蔵する文化財を対象としたデータベースですが、「ColBase」は全所蔵品を対象としたデータベース、「e国宝」は国宝・重要文化財に国が指定した文化財に限定して高精細画像と詳しい解説で紹介するもの、という違いがあります。実は、ともに〈ぶんかつ〉発足よりも以前から公開されていたものなのですが、発足と同時に〈ぶんかつ〉デジタル資源担当が運用管理を担うこととなりました。まずはそれぞれについて見ていきましょう。

ColBase
2017年3月に公開されたColBaseは、東京、京都、奈良、九州の4つの国立博物館の所蔵品を対象とするデータベースとしてスタートしました。文化財の名称や作者などの基本的な情報にくわえて、解説文や画像があるものについてはあわせて掲載しました。「あるものについては」というのは、すべての所蔵品について、すでに画像や解説文があるわけではないからです。各館には多数の所蔵品があり、まだ写真撮影が行なわれていないものや、解説文が執筆されていないものが数多くあります。画像や解説文は、展覧会や調査研究といった機会があるごとに少しずつ蓄積されていくものなのです。この3年の間にも、それらは着実に増えてきています。掲載件数は、2021年3月末時点で137,843件となりました。それらをデータベースとして確実に公開していくことがデジタル資源担当の仕事です。

名称や解説文などの文字データは、当初は日本語と英語の2言語、2018年12月に中国語と韓国語を追加し、現在は4言語となっています。4言語がそろっているのはまだまだ一部の文化財に限られますが、国際的な文化財情報の発信のためにこつこつと追加をしています。 2020年2月にはシステムのリニューアルを行ないました。画面デザインを新しくするとともに、対象に奈良文化財研究所の木簡を追加しました。また、東京国立博物館の一部の所蔵品について音声ガイドアプリ「トーハクなび」で公開している音声ファイルもご利用いただけるようにしました。


ColBaseの「夏秋草図屏風」データ。画面左下のリンクから各言語による音声ガイドもお楽しみいただけます。

▷関連ブログ「ColBaseリニューアル」の記事を読む

今後は、まだ掲載されていない文化財を順次追加しつつ、解説文や画像を充実させていきます。また、個々の文化財に関する参考文献や過去の展示歴、3D画像や動画など、さまざまなデータの掲載も検討しています。
誰もが自由に使える文化財情報を、さらに広く国内外に発信していきます。

e国宝
以前のブログ記事でも書いたとおり、「e国宝」は最初の公開が2001年に遡る「老舗」の文化財データベースです。「ColBase」同様、〈ぶんかつ〉が管理運用することとなったあと、2020年に2度目のリニューアルを行ないました。

▷関連ブログ「『e国宝』リニューアル」の記事を読む

このリニューアルでは画面のデザインを大きく変更し、あわせてiOS版、Android版のモバイルアプリもリニューアルしています。また、ColBaseと同様、奈良文化財研究所の木簡の情報を追加しました。2021年3月末現在の掲載件数は、1,112件となりました。

▷e国宝で奈良文化財研究所の「平城宮跡出土木簡」の情報を見る

「e国宝」公開以来、国内外を含め多くのサイトで文化財の高精細画像が公開されるようになってきました。その流れの中で、高精細画像をWebで公開する方式について、技術的な国際標準が現れてきました。「IIIF」(International Image Interoperability Framework、「トリプルアイ・エフ」と読みます)と呼ばれる仕組みです。「e国宝」は「IIIF」の登場よりも先に開発されたため、現在は独自の方式を使っています。今後はこうした国際標準を採用し、さらに画像利用の促進につなげたいと考えていますので、ご期待ください。

文化財デジタル資源の活用支援
デジタル資源担当では、「ColBase」や「e国宝」のように国立文化財機構が保有する文化財を対象としたものだけでなく、所蔵文化財以外のデジタル資源利活用に幅広く貢献したいと考えています。例えば政府では、日本のデジタルアーカイブを推進するため、知的財産戦略本部で「デジタルアーカイブジャパン推進委員会及び実務者検討委員会」を開催していますが、この「実務者検討委員会」にデジタル資源担当が参加しています。ここでは、「国の分野横断型統合ポータル」として昨年正式版が公開された「ジャパンサーチ」の運営や、そのほか広くデジタルアーカイブに関する情報共有・意見交換、あるいは実務的な課題について議論を交わしています。

[参考]デジタルアーカイブジャパン推進委員会及び実務者検討委員会[https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/digitalarchive_suisiniinkai/index.html]

また、規模も分野もさまざまな国内外のミュージアムから、デジタル資源の利活用に関して相談を受けています。データベースの構築、画像の公開、データの保存など、デジタル資源に関わる実務的な課題に対して、私たちの経験や国内外の事例を紹介したり、助言をしたりしています。こうした支援活動についても、今後さらに広げていくことができればと考えています。ミュージアムの現場でなにかお悩みのことがあれば、ぶんかつウエブサイトにはお問い合わせフォームから、どうぞお気軽にご相談ください。

次回のブログは保存担当よりお送りします。どうぞお楽しみに。