ぶんかつブログ

ふしぎなヘビが福井へニョロリ

※今回のブログはヘビと対話しています。文字色がになっているところはヘビのセリフです!

🐍こんにちは、ヘビ(レプリカ)です。
皆さん、ヘビはお好きですか?
こう聞かれて、「はい、好きです」と答えてくれる人がどれほどおられるのか正確には分かりませんが、ワタクシ悲しい哉、一般的にはあまり好かれていない気がします。

ヘビちゃん、悲しまないで。
ぶんかつブログでこれまで2回紹介してきたように、ぶんかつと東博にはひそかに“ヘビ好キー”が存在していて、ひっそりと普及活動していたんだよ。
▷ぶんかつブログ「ヘビを自在に動かしたい」
▷ぶんかつブログ「ヘビを自在に動かしてみた」


動態展示されているヘビ(複製)

これらのブログにある通り、ヘビ普及プロジェクト(?)は、まず自在蛇のレプリカがニョロニョロ動くための動態展示台を制作し、巳年の干支にちなんだお正月展示として2025年1月に初公開するところから始まりました。最終目標は、この動態展示にあわせた解説パネルを携え、日本全国へ出張展示できるキットを作成することだったので、2月からは解説パネルや、それらを掲出するためのパネルスタンド等を作成していました。

解説文章ではなかなか伝えづらいリアルなヘビの動き。展示キットに生体のヘビはいないので、リアルな動きを見せるための動画(しかも、ちょうど見せたい動きをしているもの)をひたすら探す日々…。個人的にヘビは大好きなのですが、検索ワードに引っかかってくる別の生物の動画に「うひゃ―!」となったり、また見つけた動画を担当内で確認しあう中で「これは求めている動きなのかどうか?」と判断が付かなくなっては国立科学博物館に問い合わせたり(結局はプロのなせる業で、監修した科博の吉川夏彦先生がドンピシャな動画を見つけてくださいました)。こうして数か月かけてコンテンツは出来上がっていきました。

中身を充実させる一方で、外側、つまりこのコンテンツを展示物としてお見せするための展示什器(じゅうき)も作っていきます。東博デザイン室の研究員によるヘビ型にうねった屛風型のスタンドパネル。縦横の交わる部分がどうなるか心配していた格子のスチール繋ぎも、きれいに仕上がってきました。解説パネルの形状や設置方法、パネル転倒を防ぐため追加で作った重石なども、こだわりぬいています。


屛風型パネルスタンドの試作品を確認しているところ(2025年6月)

什器類が出来上がってきて、次はこれらをひとまとめにして、いかにコンパクトにパッキングできるかがさらなる課題でした。紆余曲折の末、さまざまな職種分野の皆さまのご協力を得て、ついに!出張稼働できる状態となったのです。

🐍へぇ~ワタクシが寝ている間にそんなことしてたのですか。
てなわけで外出第1歩(ニョロ)は近場から。2025年9月に国立科学博物館にて完成記念の試行展示にでかけてきたよ。この時はわずか2日間だけだったのだけど、860名の方に鑑賞してもらったんだ。


国立科学博物館での関係者内覧風景(2025年9月)

小さい子だけでなく、わりと大きな年齢の子まで「おぉ!」という目で見てくれたのが嬉しかったよね。
そしてこの秋、いよいよ長距離移動に耐えられるのか、実験の機会がやってきました。

このテスト運用にご協力いただいたのは、福井市立郷土歴史博物館。今は県庁が置かれる福井城の城跡から少し北に進んだところにある博物館です。こちらの博物館、もともとは福井市の中央部に位置する足羽山(あすわやま)に1953年に開館したのですが、その後2004年に、越前松平家の別邸であった「養浩館(ようこうかん)庭園」に隣節する現在の場所へ移転新築されたそうです。


福井市立郷土歴史博物館 外観

博物館では、福井市春嶽公(しゅんがくこう)記念文庫および越葵(えっき)文庫といった福井藩・越前松平家に関する資料を軸とした保存と収集、展示が行なわれています。令和6年度「国立文化財機構所蔵品貸与促進事業」の採択館として、昨年秋には特別展「鉄の名工 越前明珍」という特別展も実施されており、この時のご縁でヘビの初遠征を受け入れてくださったというわけです。
▷▷令和6年秋季特別展「鉄の名工 越前明珍」(福井市立郷土歴史博物館サイト)
▷「鉄の名工 越前明珍」開催概要
▷ぶんかつブログ「『鉄の名工 越前明珍』に、各地の明珍作品が大集結!」

長谷川健一館長にうかがったところ、こちらの博物館に保管されている「自在龍置物」(明珍吉久作、江戸時代・17~18世紀)は特に定期的に展示をされているわけではないとのことですが、今回ヘビキットの展示に合わせて「自在龍置物」も展示していただけることになりました。昨年の特別展以来なので、約1年ぶりの登場となるのでしょうか。

🐍ぶんかつを出た次の日に博物館に搬入されて一晩。ワタクシ暗いところは好きですが、そろそろ出たいな~と思っていたところ、翌日に覆いが取られてぷはーっ!となりました。わぁ~見たことない場所で緊張するなぁ。
開梱後は、こちらの博物館でワタクシを担当してくれている松村知也さんはじめ、3名の学芸員さんに組み立てていただきました。

ワタクシが設置されたのは、チケットもぎりを過ぎてすぐ左手にある「松平家史料展示室」。ここでは「史料が語る福井藩と城下町」というテーマ展示が行なわれていて(2026年2月2日(月)まで)、ワタクシ、周囲を貴重な史料で囲まれております。
え、ワタクシこんなお部屋のセンターを張っちゃっていいのでしょうか…ドキドキ。しかもドラゴン先輩(註:福井市立郷土歴史博物館保管の「自在龍置物」)も同じお部屋にいて、後ろからめっちゃ睨みをきかせてくるんですけど…。年末まで、ワタクシ一人で頑張れるかな…先輩、閉館したら毎晩おしゃべりしてくれるかな…(涙目)。


松平家史料展示室での展示風景


【左】福井滞在中のヘビちゃん(自在蛇レプリカ)
【右】背後で睨みをきかせる「自在龍置物」先輩。サイズは小さめですが迫力満点です!

あれれ、ヘビちゃんすっかり不安がってしまった。長旅お疲れさまでしたね。大丈夫、博物館の皆さんも、ヘビ嫌いじゃないよって言ってくれてたから、安心して!

せっかくなので館内の他の展示もご紹介。
まずキットが置かれた展示室では、ヘビちゃんが先にご紹介したように、福井藩と城下町を紹介する展示がされていました。
1.史料が語る福井藩・松平家
 テーマ1.『武鑑(ぶかん)』から分かる福井藩・松平家
 テーマ2.史料から分かる福井藩の収入と財政窮乏
 テーマ3.名品に見る御用職人たちの技
2.史料が語る城下町福井
 テーマ4.史料に見る「北庄」から「福居」、「福井」への改称
 テーマ5.史料に見る九十九橋(つくもばし)と足羽河原の伝承
 テーマ6.史料から分かる、城下の人口、物価と食生活
と、2章6テーマに分けて、絵画・書跡、蒔絵や刀剣などの工芸作品を通して城下町の成り立ちを丁寧に紹介した展示でした。展示室で紹介されていた大名行列の槍の復元がロビーに展示されているので、その長さを実感することもできます。


展示史料の一部と、ロビーの復元槍。※展示室内では許可を得て撮影しています。

「自在龍置物」は、“城下の名工の手による作品”ということで、テーマ3の流れで紹介されていました。それで今回は自在繋がりということで、キットを展示してくれたというわけです。

ヘビちゃんのいる松平家史料展示室の向かいに位置する「館蔵品ギャラリー」では、「福井城下の正月行事『馬威(うまおど)し』」という展示が始まっていました。
江戸時代半ばから福井城下で行なわれたという「馬威し」は、小正月の火祭り(左義長(さぎちょう)、どんど焼きとも)に関連する行事で、その勇壮さで周辺国に知れ渡っていたのだとか。左義長飾り周囲の決められたコースを馬で完走しようとする武士と、それを鳴り物や持っているものなどをはためかせて馬を驚かし邪魔しようとする「威し人」(町人たち)との、活気あふれる攻防の様子が知れる面白い展示でした。
余談ですが、キット設営のあと訪問した福井県立こども歴史文化館には、この馬威しの一登場人物になれる(しかも音声付)という、のぞき穴から見るお楽しみ展示もあったので、臨場感を味わいたい方はぜひ(福井市立郷土歴史博物館から徒歩25分ほどで行けます)。


「ふしぎなヘビ」の奥にちらっと見えているのが館蔵品ギャラリー

続く常設展示室は、福井市内で出土した考古品から始まり、1948年6月に起きた福井地震までを網羅する、まさに“郷土歴史博物館”にふさわしい展示が見られました。途中にクイズやスタンプラリーが点在しており、お子さんでも飽きないよう工夫された展示空間となっていて、こちらの博物館が地域の地元学習に欠かせない存在であることを感じさせる内容でした。


【左】常設展示室はじまり「ふくいのあゆみ」
【右】常設展示室「幕末維新の人物」。松平春嶽の詳しい紹介もここに。

馬威しも見て、すっかり午年ムードになってしまいましたが、2025年・巳年の最後を締めくくるべく、ヘビちゃんの活躍をぜひ皆さまご覧いただければと思います。ヘビちゃん、年末に迎えに行くから待っててね~。

動態展示 ふしぎなヘビ~自在蛇置物をうごかしてみた~

会期 2025年11月29日(土)~2025年12月26日(金)

会場 福井市立郷土歴史博物館 松平家史料展示室(福井県福井市宝永3-12-1)

開館時間 午前9時~午後5時 ※入館は午後4時30分まで

休館日 会期中無休(年末年始以外の定休日はありません)

観覧料 220円ほか

福井市立郷土歴史博物館・公式サイト https://www.history.museum.city.fukui.fukui.jp/
福井市立郷土歴史博物館・X https://x.com/FukuiHistory/
福井市立郷土歴史博物館・Facebook https://ja-jp.facebook.com/fukuihistory/

カテゴリ: 複製の活用