【未来の博物館】最新の8K映像技術で作品を360°堪能する
東京国立博物館(トーハク)の創立150周年を記念して、文化財活用センター〈ぶんかつ〉では特別企画「未来の博物館」を開催しております。この展覧会は、〈第1会場 時空をこえる8K〉〈第2会場 四季をめぐる高精細複製屛風〉〈第3会場 夢をかなえる8K〉という3つの会場で、「デジタル×日本美術体験」を楽しんでいただこうという企画です。
「未来の博物館」をご紹介するブログのシリーズ最終回、今回ご紹介する第1会場「時空をこえる8K」(本館特別5室)は、NHKと東京国立博物館が共同で進める「8K文化財プロジェクト」の集大成ともいえるものです。最先端の8K映像技術や3DCG技術を用いて、3つのコンテンツをお楽しみいただけます。
〈空間をこえた出会い―法隆寺 謎に満ちた金色の秘仏〉
第1会場の入り口は本館大階段の左手。グリーンで縁取られた入り口と足元の照明が、そのまま皆様を会場の中へと誘ってくれます。アプローチを一歩進むたびに期待感が高まりますね。30歩進むと、そこは東京から400㎞離れた奈良・法隆寺。空間をこえた秘仏との出会いが待っています。
第1会場入り口(本館大階段の左手です)
会場内のアプローチ 期待感が高まります
まずは会場内のスクリーンの大きさに驚かされます!本館特別5室にこれほど大掛かりな装置が入ったことは記憶にありません。
正面に高さ4.5m、幅8mのスクリーン、その両隣には幅2.7mのスクリーンが2面。巨大スクリーンが映し出す法隆寺の境内を一歩一歩、聖徳太子ゆかりの夢殿(ゆめどの)へと近づいていきます。
8K文化財 国宝「救世観音像」法隆寺
いつもは見ることのできない秘仏である救世観音を、同じ目線でじっくり見るまたとない機会です。瞳や口元にあらわれた表情、宝珠の形を模した光背の繊細な透かし彫りもくまなくご覧になれます。
映し出しているのは、NHK放送技術研究所が開発した最新鋭の8Kレーザープロジェクター。大画面で圧倒的な美しさを誇ります。
続いて、〈時間をこえた出会い―洛中洛外 400年前の京都へ〉
ここでは、時間をこえて400年前の京都へタイムトリップ。6人のナビゲーターがそれぞれの関心に沿って「洛中洛外図屏風 舟木本」を堪能します。
本作には京の街並みとそこに暮らす人々の暮らしぶりがありのままに描かれています。その数2500人余りというから驚きです。
8K文化財 国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」東京国立博物館
高さ2.7mの高精細LEDディスプレイに映し出された洛中洛外図屏風。あまりの鮮明さに、目の前に本物の作品があるかのような錯覚をおこしてしまいます。
魚を調理する姿が生き生きと描かれています。
後半の「京あるき」コーナーでは京の街の様子を眺めながら、じっくりと鑑賞することができます。実際には4㎝程に描かれた人物も、等身大にまでズームアップ。料理好きな私は二条城の城内で鯉や雁を調理しているシーンにくぎ付けになってしまいました。
自撮りもできるので、お気に入りの場面でぜひ撮影してみてください!
等身大でも違和感ありません。
自撮りもできます!
最後を飾るのは、〈デジタル ハンズオン・ギャラリー〉
トーハクが所蔵する3つの作品を、360°自由自在に動かしてご覧いただくことができます。
・重要文化財 遮光器土偶 青森県つがる市木造亀ヶ岡出土 縄文時代(晩期)
・重要文化財 樫鳥糸肩赤威胴丸 陸奥三春藩主秋田家伝来 室町時代・15世紀
・重要文化財 能面 小面〈天下一河内〉焼印・金春家伝来 江戸時代・17世紀
8Kで撮影された高精細画像をもとに作られた3DCG。作品の隅々までピントが合っています。実際には人間の眼ではここまで近づいて全体を見ることはできません。まさに最新技術のなせるワザ。さらに、普段展示室では見られない作品の裏側や内部を、大迫力の画面で間近に見ることができるのです。
たとえば、能面は光の当たり具合や見る角度によって、表情が大きく変化します。デジタルハンズオン・ギャラリーではその利点を最大限に生かし、自由に能面を動かすことで、喜怒哀楽のさまざまな表情を引き出すことができます。
能面の表情の変化も自由自在(右:「曇ラス」悲しみの表情、左:「照ラス」喜びの表情)
体験できるコンテンツは3つ。3台設置しているモニターでも同様に3つの文化財から選ぶことができます。左から遮光器土偶、樫鳥糸肩赤威胴丸、能面 小面
また、遮光器土偶のコンテンツではクローズアップに加えて、土偶の体の中にも入ることができます。普段、土偶の展示をおこなっている私でも、内側に入ってぐるりと見渡す経験はもちろん初めて。縄文人が土偶を作った時に残された指のあとなど、外側からは見えない痕跡まで鮮明にみることができます。これまで博物館の展示室では出来なかったことが、出来るようになる。『未来の博物館』では文化財の新たな見方や鑑賞体験を通して、本物の文化財に対する興味や関心を深めていただければと思います。
本物では叶えられない、自分だけの鑑賞体験をみなさまも実現してください。
※「遮光器土偶」は下記のサイトでもご覧になれます。
▷[ 有名な文化財を自由に動かして鑑賞できるインタラクティブ博物館「ものすごい図鑑 文化財編」NHK for School ] https://www.nhk.or.jp/school/bunkazai/
シリーズ3回にわたって、「未来の博物館」の3つの会場の様子をご紹介してきました。それぞれの会場に足を運んでいただくと、同じ文化財(屏風や仏像)でも、鑑賞の方法が変わることで見え方・感じ方が違うことに気づかれるかもしれません。
新しい日本美術体験を楽しみに、ぜひお越しください。
▷関連ブログ「【未来の博物館】四季をめぐる高精細複製屏風で日本美術を感じる」の記事を読む
▷関連ブログ「【未来の博物館】みほとけ調査とぶつぞう調査隊」の記事を読む
東京国立博物館創立150年記念 特別企画「未来の博物館」
会期 2022年10月18日(火)~12月11日(日)
開館時間 9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで
会場 東京国立博物館 (東京都台東区上野公園13-9)
第1会場 〈時空をこえる8K〉 本館/特別5室
第2会場 〈四季をめぐる高精細複製屏風〉 本館/特別3室
第3会場 〈夢をかなえる8K〉 東洋館/エントランス
休館日 月曜日 ※会期、開館日・開館時間、入館方法等については、諸事情により変更する場合がありますので、「未来の博物館」特設ページでご確認ください。
観覧料 総合文化展観覧料(一般1,000円、大学生500円)もしくは開催中の特別展観覧料[観覧当日に限る]でご覧いただけます
主催 東京国立博物館、文化財活用センター、NHK(第1会場)
協賛 キヤノン株式会社、シャープ株式会社
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- 2022年11月24日 (木)