愛知県陶磁美術館で、やきものを味わい尽くす
食欲の秋ですね。
食事の楽しみのひとつといえば、うつわ。どんな料理にどんなうつわを合わせるかを考えるのも楽しいものです。
というわけで、愛知県陶磁美術館(愛陶)で開催中のうつわにまつわる展示をご紹介します。
愛知県陶磁美術館外観。日本やアジアをはじめとする世界各地のさまざまな陶磁を扱う、やきもの専門のミュージアムです。
▷特集展示「喫茶の碗の物語-中国陶磁への憧れ、そして…」(~12/12まで)の開催概要を見る
特集展示「喫茶の碗の物語-中国陶磁への憧れ、そして…」*は、本館2階の常設展「日本と世界のやきもの」の中にあります。本展で取り上げるうつわは、茶の湯で用いられた碗。
抹茶の喫茶法は平安時代に中国から伝えられました。室町時代には「茶の湯」が誕生し、喫茶の碗も時代とともに独自の発展を遂げることになります。この展示では喫茶の碗を「天目」と「茶碗」という二つのキーワードから追っていきます。喫茶が、そして日本独自の茶の湯が展開していく中で何を生み出したのか。中世から近世にかけて日本の茶陶を牽引した瀬戸や美濃の動きと共に、喫茶の碗の名品でご覧いただきます。
…詳しい内容は展示をご覧いただくとして、このブログでは見どころをぎゅっとまとめてお伝えします。
・愛陶・トーハクの名碗が勢ぞろい!
本展でご覧いただける19点の作品は、愛陶と東京国立博物館(トーハク)の所蔵品を中心に構成されています。トーハクからは「大井戸茶碗 有楽井戸(重要美術品)」「志野茶碗 銘 振袖」「黒楽茶碗 銘 尼寺」などの計9点をお貸し出し(有楽井戸の展示は10/19~)。粒ぞろいの作品により、室町時代から江戸時代にかけてのダイナミックな茶碗の展開をたどることができます。自分ならどの碗でお茶を飲みたいかな?と考えながら眺めるのも楽しいですね。
展示作品の美しい配置にもご注目。中央の3碗は畳に載せられ、普段のトーハクでの展示とはちがった味わいがありますね。
筆者のお気に入りは愛陶所蔵の黒織部茶碗(加藤舜陶氏寄贈、美濃 桃山時代 17世紀)。見る角度によって印象が大きく変わります。
・名碗にさわれる?デジタルコンテンツで名碗鑑賞
会場内に「8Kで文化財 ふれる・まわせる名茶碗」を併設**。70インチの大型モニターに「大井戸茶碗 有楽井戸(重要美術品)」「青磁茶碗 銘 馬蝗絆(重要文化財)」「志野茶碗 銘 振袖」の8Kの3D画像を映し出し、茶碗型のハンズオンコントローラーを使って自由自在に鑑賞することができます。2020年にトーハクで初公開し、ご好評いただいたこのコンテンツ。はじめての館外出張です!
コンテンツで取り上げた3つの茶碗のうち、有楽井戸と振袖のふたつは実物がすぐそばに展示されています。実物を見て、コンテンツを体験して、また実物を見て…と、行き来しながらじっくり楽しめます。
かたちも重さも実物の文化財そっくりに制作した茶碗型ハンズオンコントローラーを動かせば、8Kモニター上の高精細画像を360度好きな角度から鑑賞できます。まるでお茶碗を手に取って眺めているよう。(写真は2020年トーハクでの公開の様子)
デジタルコンテンツと実物の展示。同じ空間で両方楽しめるのは、愛陶ならでは。
実はいま、「ふれる・まわせる名茶碗」の進化版を開発中。来年の春には、さらにパワーアップしたコンテンツが愛陶にお目見えする予定です。どうぞお楽しみに。
さらに、このコンテンツを一緒に開発したシャープ株式会社と〈ぶんかつ〉で、新たに彫刻作品の鑑賞コンテンツ制作にも取り組んでいます。こちらはこの秋にトーハクでお披露目。続報にご期待ください。
▷関連ブログ「8Kで手に取る 戦国武将が愛したうつわ」の記事を読む
・イベント盛りだくさん!愛陶でやきもの三昧
10月19日からは、「喫茶の碗の物語」に展示される有楽井戸にまつわるリアル謎解きゲーム「もう一つの名茶碗」にも挑戦できます(~12/12まで、土日祝のみ)。謎解きキットを手がかりに、愛陶の各所に散りばめられた謎を、直感やヒラメキを使って解き進めていく体験型イベントです。
また本館では、特別展「華*花 -四季の花と中国陶磁史-」*も同時開催。目にも華やかな作品が並ぶ本展では、中国陶磁にあらわされた四季の花々から、花の色彩と技法の陶磁史をご覧いただけます。展覧会名には「中華の美しい花」という意味が込められているそう。常設展とあわせてみれば、やきものの奥深さをもっと知ることができるはず。
関連講座やワークショップなど、会期中には他にもイベントが盛りだくさん。この秋は、愛陶でやきものの魅力に浸る一日を過ごしてみてはいかがでしょうか。
*令和3年度 地域ゆかりの文化遺産を活用した展覧会支援事業
**8Kコンテンツの公開は、「令和3年度 地域ゆかりの文化資産地方展開促進事業(先端技術を活用した文化資産コンテンツ制作プロジェクト)」の一環として〈ぶんかつ〉が実施しています。
喫茶の碗の物語-中国陶磁への憧れ、そして…
会期 2021年10月9日(土) ~ 12月12日(日)
会場 愛知県陶磁美術館 第3展示室(常設展「日本と世界のやきもの」の中で展開します)
開館時間 午前9時30分から午後4時30分まで(入館は午後4時まで)
休館日 毎週月曜日
観覧料金 (常設展及びテーマ展)一般400円、高校生・大学生300円、中学生以下無料
※企画展及び特別展のご観覧には別途料金が必要です。
主催 愛知県陶磁美術館
特別協力 東京国立博物館
協力 文化財活用センター
助成 令和3年度 地域ゆかりの文化遺産を活用した展覧会支援事業
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- 2021年10月28日 (木)