ぶんかつブログ

8Kで手に取る 戦国武将が愛したうつわ

突然ですがみなさん、博物館でこんな風に感じたことはありませんか?
「展示ケース越しの文化財にはちょっと距離を感じる。もっと近くでじっくりみたい」
「この作品、どこがどうすごいのかな?よくわからないな...」
「興味はあるけど、博物館ってなんだかちょっと敷居が高い」

わかります、わかります。なぜなら博物館で働く私たちも、同じ悩みを抱えているからです。作品を間近でご覧いただきたい一方で、かけがえのない文化財をながく後世に伝えるためには、展示期間や公開方法に一定の制限を設ける必要があったり、限られた文字数の中でその魅力をいかに伝えるか、作品解説に頭を悩ませたり…。

どうしたらより多くの人に文化財のおもしろさを伝えることができるだろう?これは2018 年の文化財活用センター〈ぶんかつ〉発足以来、私たちが継続して取り組んでいる大きなミッションでもあります。

そしてこのたび、そんなモヤモヤを解決すべく、新しい鑑賞体験コンテンツを開発しました!


70インチの大型モニターに8Kの3D画像を映し出し、東京国立博物館所蔵の名碗「大井戸茶碗 有楽井戸(重要美術品)」「青磁茶碗 銘 馬蝗絆(重要文化財)」「志野茶碗 銘 振袖」を自由自在に鑑賞するコンテンツです。
かたちも重さも実物の文化財そっくりに制作した茶碗型ハンズオンコントローラーを動かせば、高精細画像による8Kモニター上の茶碗を 360度好きな角度から鑑賞できます。
さらに、画面に現れる「見どころマーカー」を茶碗型コントローラーで画面中央に合わせると、作品の見どころポイントも教えてくれる優れもの。手と目を使って楽しみながら、文化財への理解を深めることができます。

このコンテンツをともに開発したのはシャープ株式会社。シャープと〈ぶんかつ〉は2019 年から、文化財の新たな鑑賞体験の開発に共同で取り組んでいます。

いまも昔も、手に取って愛でられてきたものだからこそ、手元でじっくり眺めてみたい…そんなおもいから私たちが最初に選んだのは「お茶碗」。東京国立博物館(トーハク)の三笠研究員も加わり、トーハク×シャープ×ぶんかつによる本プロジェクトがはじまりました。

三笠研究員に話を聞いてみると、やきものは日常でも手にする、かなり身近な存在であるにもかかわらず、展示では苦労も多いのだとか。
例えば「茶道」に用いられる道具には決まりごとも多く、お茶碗の扱い方ひとつとっても作法があり、とっつきにくいと感じること。さらに、日本人が評価してきたやきものは「美しい」「技巧に富んでいる」といった視点だけでは語ることが難しく、特に海外のお客さまにその魅力を伝えるのが難しいこと、などなど。
そういう意味で、今回のテーマ「お茶碗」は、取り組むべき、やりがいのある対象だったと感じています。

制作にかかった期間はおよそ1年。その様子を写真とともに少しご紹介します。

まずは「文化財の鑑賞ってなんだろう?」から意見交換をスタートし、どうしたらお茶碗に興味をもってもらえるのか、作品のどんなところに注目してほしいのか、そのためにはどんな仕掛けが必要かなど、何度も議論を重ねました。

共同研究会の様子

そうして生み出したコンセプトを、シャープの技術でかたちにしていきます。


お茶碗を360度ぐるりと撮影。このデータをもとに高精細3D画像を作成します。

それぞれのお茶碗の質感のちがいは?重さは?作品を取り扱う三笠研究員の話をもとに、実物そっくりな茶碗型コントローラーの制作に挑戦。

ふだんは異なる分野で活躍するシャープとの共同研究はとっても刺激的。いつもとはちがう視点にハッとしたり、こんなアプローチの方法もあったのか!と驚いたり。私たち自身もワクワクしながら制作に取り組みました。


馬蝗絆の透き通るような粉青色を画面上で再現するのは思った以上に難しい...!展示室の照明のもとで作品を実際に見たりしながら、試行錯誤を重ねました。

このようにしてできあがった新コンテンツ。
いかがですか?実際にどんなものか、体験してみたくなりませんか?

そんなあなたに!7月29日〜8月2日の期間、トーハクでこのコンテンツを体験いただける実証実験をおこないます。
(事前予約制ですので、気になる方はお早めにオンラインからのご予約を)

博物館のお客さまにご覧いただくのははじめての機会となるこの実証実験。どんな反応が寄せられるのかちょっぴりドキドキしながら、公開の準備を進めています。体験後はぜひ、アンケートでご感想をお聞かせくださいね。みなさんのご参加をお待ちしています。

 

8Kで文化財 ふれる・まわせる名茶碗

日  時 2020年7月29日(水)〜8月2日(日)10:00〜16:00
会  場 東京国立博物館 東洋館1階ラウンジ(台東区上野公園13-9)
主  催 東京国立博物館・文化財活用センター・シャープ株式会社
予約定員 30分毎に2組 (2名まで一組)
対  象 小学生以上、体験後にWEBアンケートにご協力いただける方
料  金 無料
※ぶんかつWEBからの事前予約が必要です

オンライン事前予約はこちら▶▶▶
8Kで文化財 ふれる・まわせる名茶碗(事前予約制・実証実験)
※オンラインでの事前予約が必要です。申し込み方法はオンライン予約のみ、日時指定の完全予約制です。
※当日の参加料および東京国立博物館総合文化展観覧料は無料です。ただし、特別展「きもの」の観覧には別途、特別展観覧料と、別途オンラインでの「日時指定券」の予約が必要です。ご注意ください。
※体験モニターは、東京国立博物館の総合文化展(常設展)オンライン入館予約は不要です。
※マスクを着用してご来館ください。東京国立博物館正門にて、予約確定メールの確認、検温等を行ないます。
※会場入口前の受付で、予約確定メールを再度ご提示ください。
※事前予約は、各体験日の2日前に締め切ります。

 

カテゴリ: 展示・イベント