ぶんかつブログ

〈ぶんかつ〉ことはじめ-後編-

〈ぶんかつ〉ことはじめ-前編-では文化財活用センター発足前夜の話を書かせていただきました。この後編では発足後、どういった活動をしてきたのか〈ぶんかつ〉の〈かつ〉を時系列で振り返りたいと思います。

◆2018年 7月 〈ぶんかつ〉開所式/事務室(東洋館)開所
7月2日に行なわれた開所式には、宮田亮平文化庁長官のご出席を賜ったほか、多くのマスコミの方々に取材していただきました。センター長には、NHKおよびNHKプロモーションで長く文化事業・イベント業務に携わってきた旭充が就任いたしました。


2018年7月2日 文化財活用センター開所式

◆7月~ ミュージアムの保存環境に関する相談窓口の開設【保存】
発足と同時に保存環境に関する相談窓口を開設しました。昨年度の総相談件数は53件です。展示施設や収蔵庫の改修に関するものから、展示ケースの環境、虫菌害についてなど幅広い相談に対応してきました。

◆7月~ ColBaseの多言語化、画像追加【デジタル資源】
国立文化財機構所蔵品のデジタルアーカイブとして2017年にオープンしたColBase [https://colbase.nich.go.jp/] は、昨年度から〈ぶんかつ〉が引き継いで拡充しています。2018年度、懸案だった多言語化(中国語、韓国語の追加)に対応するとともに、約8千点の画像を追加しました。

◆7~9月 「トーハク×びじゅチューン!なりきり日本美術館」開催【企画】
〈ぶんかつ〉・東京国立博物館「親と子のギャラリー」・NHK Eテレ「びじゅチューン!」のコラボ企画、「なりきり日本美術館」を実施しました。デジタルとアナログを駆使して様々な参加型コンテンツを用意し、日本の美術に親しむ企画です。約1か月半の会期でしたが、10万人を超えるお客様でにぎわいました。

 

左 :「なりきり日本美術館」ポスター
中央:見返り美人になりきって、ポーズ!
右 :同時期開催の特別展「縄文」とコラボしたハンズオン体験

◆7月~ 東博収蔵品貸与促進事業による展覧会を各地で開催【貸与促進】
これまで東京国立博物館が行なっていた、所蔵品を他館の展覧会等へ積極的に貸し出す事業が、〈ぶんかつ〉の取り組みのひとつとなりました。2018年度は6つの展覧会に合計61件の所蔵品をお貸し出しし、のべ10万人もの方がそれらの展覧会へ足を運びました。アンケートではどの展覧会も大変満足度が高く、多くの方が「よかった」と回答しています。

◆10月~ 〈ぶんかつ〉× キヤノン 共同研究プロジェクトの発足【企画】
キヤノン株式会社と〈ぶんかつ〉は、文化財複製の制作と活用に関する共同研究をはじめることになりました。その一環として、キヤノンと京都文化協会による「綴プロジェクト」からご寄贈いただいた「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」(大英博物館蔵)の複製を活用した展示「高精細複製品によるあたらしい屏風体験」を開催しました。


ガラスケースなしで、畳に座ってじっくり屏風を眺めるという本来のスタイルで鑑賞することができます。

◆11~12月 8Kで文化財「国宝 聖徳太子絵伝」開催【企画】
国宝「聖徳太子絵伝」の高精細画像を、8Kモニターでお楽しみいただく展示を開催しました。オリジナルは千年近く前に描かれたものであるため、公開の時期や展示環境などにさまざまな制限があります。そこで高精細画像と解説を組み合わせたアプリケーションを開発し、超高画質を再現できる大型8Kモニターで映し出すなど、くわしく鑑賞できる機会を設けました。


メインメニュー画面。作品画像から、また聖徳太子の伝説的なエピソードから、好きなところを選んで操作します。

◆11~12月 2019年度 東博収蔵品(キリシタン関係遺品)貸与促進事業 募集【貸与促進】
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されたことに伴い、キリシタン関係遺品に特化した貸与促進事業を実施することになりました。公募による審査の結果、2019年9月に大分県立先哲史料館で開催される「大分のキリスト教史」展で公開されることになりました。


重要文化財 板踏絵 キリスト像(ピエタ)江戸時代・17世紀 東京国立博物館

◆12月~ 文化財複製の貸出を開始【企画】
これまでに制作・ご寄贈いただいた文化財複製を、国際会議や映画の撮影などさまざまなシーンで活用していただけるよう、有料で一般にお貸し出しする事業を開始しました。

◆2019年 1~2月 高精細複製品によるあたらしい屏風体験「国宝 松林図屏風」開催【企画】
日本の水墨画の最高傑作と称えられる長谷川等伯「国宝 松林図屏風」の世界を、文化財複製と映像のインスタレーションで体感していただく展示を行ないました。ガラスケースなしで、畳に座ってじっくり屏風をながめるという本来の鑑賞スタイルは、日本人はもちろん、海外からのお客様にも大変好評で、約1か月の会期で9万人を超えるお客様が展示をご覧になりました。

◆2月~ 2019年度 ぶんかつアウトリーチプログラム 募集開始【企画】
全国各地のこどもたちを対象に、文化財に親しんでいただくための教育プログラムの募集を開始しました。精巧に作られた文化財の複製を、学校やミュージアムに持ち込むスタイルで、いつもの場所で国宝や重要文化財といった名宝と向き合う体験ができます。

このように昨年度の〈ぶんかつ〉は、そのミッションに沿って、より多くの方々に文化財に親しんでもらうためにさまざま考えをめぐらせ、手を動かし、それぞれの活動に邁進してきました。これからの〈ぶんかつ〉は、地域のミュージアム、企業や学校との連携の強化など、さらなる広がりを求めて積極的に活動していく所存です。

2019年4月、新年度を迎えたフレッシュな時期に、公式ウェブサイトもリニューアルして公開となりました。パワーアップしたこのサイトから、今後も〈ぶんかつ〉の〈かつ〉動をどんどん発信していきます。ご期待ください!

カテゴリ: ぶんかつとは