小山 弓弦葉(東京国立博物館 工芸室長)
当館に
私が初めて〈冬木小袖〉を展示したとき、写真で見るのとはあまりにも異なる
光琳直筆による描絵小袖で完全な形で
皆様のあたたかいご支援に、心より御礼を申し上げます。 皆様の東京国立博物館に対する愛情、江戸時代の画家・尾形光琳の画業に対する敬意、そして日本の伝統文化である「きもの」への思い、そういったお志をこのような形でお届けくださいましたことに一同胸を熱くしております。
〈冬木小袖〉は、今年の1月に修理工房へ運ばれました。そしてこの春まで解体が行なわれ、どのような修理をするか、その方針が話し合われました。今後は傷んだ表地の補強のための修理、またその表地をさらに補強するための裏打ちの作業などがこの2年間を通して行なわれることになります。 修理は2022年の末に完了し、2023年の公開を予定しています。
美しい姿になった〈冬木小袖〉をお見せすることができるように、関係者一同頑張ってまいりますので、これからもご支援のほどよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
2021年7月5日
〈冬木小袖〉について
重要文化財
本作品は、江戸時代に活躍し琳派の語源としても知られる尾形光琳が白い絹地に秋草を描いたきものです。
京都出身の光琳が、宝永元年(1709)に寄宿した江戸・深川の材木問屋、冬木家の夫人・ダンのために描いたといわれ、そのため〈冬木小袖〉という名称で親しまれています。
墨や淡彩で布地に直接模様を描く染色技法「
シンプルな形で描かれた青と白の
花芯や葉に添えられた
菊、萩、
藍と墨の濃淡による表現に黄、赤のぼかしが彩りを添えます。
〈冬木小袖〉には、菊、萩、
また、〈冬木小袖〉全体の様子を見てみると、ちょうど帯の当たる部分に空間を配していることもわかります。光琳の生家はもともと安土桃山時代から続く