「ふれる・まわせる名茶碗」きゅーはく版

九州国立博物館〈きゅーはく〉は、今年開館20周年を迎えました。
それを記念した展覧会やイベントの開催が目白押しですが、そのうちの一つに、現在、文化交流展示室(常設展)で公開中の、きゅーはく版「8Kで文化財 ふれる・まわせる名茶碗」があります。
茶碗鑑賞のデジタルコンテンツ「8Kで文化財 ふれる・まわせる名茶碗」は、文化財活用センター〈ぶんかつ〉がシャープ株式会社・東京国立博物館とプロトタイプ版を共同開発し、2020年東京国立博物館において初公開しました(詳細は ▷8Kで文化財「ふれる・まわせる名茶碗」2020年11月 へ)。
かたちも重さも実物の作品そっくりに作られた茶碗型ハンズオンコントローラーを動かすと、8Kモニター上の高精細画像を360度好きな角度から鑑賞できるコンテンツです。
初期版で制作された茶碗は東京国立博物館所蔵の3作品で、コントローラーもそのうちの1作品にのみ設置されていましたが、2022年には、体験できる茶碗のラインナップを6作品に増やし、すべてにコントローラーを用意した6碗版へと進化しました。これまで、愛知県陶磁美術館、きゅーはく、岡山県立博物館で公開してきましたが、このたび、きゅーはくが所蔵する名碗3作品で、さらなる進化を遂げたバージョンとなって、きゅーはくに帰ってきました。
文化交流展示室中央スペースに登場!
進化を続けるデジタルコンテンツ
6碗版が制作されるときに、きゅーはく所蔵の 重要文化財「油滴天目(ゆてきてんもく)」が加わることになり、きゅーはくも「ふれる・まわせる名茶碗」の制作に参加することになりました。2023年の夏の特別展「憧れの東洋陶磁―大阪市立東洋陶磁美術館の至宝」でこのコンテンツを公開したところ、数多くのお客様に体験していただき、大変好評でした。この人気ぶりを受けて、20周年を迎えようとしていたきゅーはくでは、常設展にこのデジタルコンテンツを取り入れることができれば、という希望が芽生え、ぶんかつ・シャープ株式会社との協力により、きゅーはくの所蔵品だけのオリジナルバージョンを制作することになりました。
きゅーはくオリジナルバージョンの誕生
きゅーはくだけの「ふれる・まわせる名茶碗」では、気軽に体験していただけるように、3碗版にすることにしました。まず6碗版に含まれていた「油滴天目*」はそのまま活用することにしました。
〈油滴〉は、黒い釉(うわぐすり)に、銀色に輝く油のしずくのような斑紋(はんもん)があることからそのように呼ばれますが、この斑紋は、角度によって虹のように色が変化して見えます。このような現象を「構造色」といい、コンテンツでは画面上で再現するために何度も3Dデータの改良を重ねました。8K 画像で見る斑紋の美しさは、まるで宇宙を見ているかのようです。
▷▷ColBaseで「油滴天目」を見る
*本コンテンツのうち「油滴天目」のデータは、文化庁「令和3年度 地域ゆかりの文化資産地方展開促進事業(先端技術を活用した文化資産コンテンツ制作プロジェクト)」により制作したものです。
実物の茶碗と8K映像を見くらべてみよう!
そして、やきものの一大生産地である九州で作られた茶碗を加えることにしました。
一つは、九州のやきものなかで最も早く生産が始まった唐津焼を代表して、「彫唐津茶碗 銘 五葉(ごよう)」。5つの方向にたわめた大振りで大胆な作風の茶碗は、いかにも男性的な力強さがあり、戦国武将好みといえます。ぜひその大きさと重さを、コントローラーを持って体験してみてください。
もう一つは、福岡を代表するやきもの、高取焼の「半筒茶碗 銘 村雨(むらさめ)」です。小堀遠州(こぼりえんしゅう)の指導を受けた高取焼では、釉薬を重ねて表情を生み出す、洗練された作風の茶道具が作られました。この作品は、重ねられた釉薬が混じり合って流れ、その様子がまるで雨のように見えるため、“村雨(にわか雨)”と呼ばれます。
▷▷ColBaseで〈五葉〉を見る
▷▷ColBaseで〈村雨〉を見る
〈五葉〉(左)と〈村雨〉(右)を体験中
きゅーはく版では、室町時代より名碗として名高い小ぶりな油滴天目、大胆で大型の桃山様式の彫唐津茶碗、江戸時代寛永期の洗練されてスマートな高取焼の3碗によって、日本の茶の湯における時代性を辿りつつ、各時代に好まれたかたち・重さ・手触りをも体験することができます。お時間のある方は、ぜひ3碗を比較して体験していただきたいと思います。
さらに、きゅーはくでは初めから長期的に常設展に設置することを決めていたため、コスト削減のためにも、スタッフが常駐しなくても、お客様がひとりで最初から最後までコンテンツを楽しんでいただけるように、モニターに表示される言葉・コントローラーの動作など、より分かりやすさを追求した改良を加えました。また、コンテンツの使用方法を日本語・英語で説明する映像を、別のモニターで常時流しています。
改良や工夫を重ねたきゅーはく版の「ふれる・まわせる名茶碗」。文化交流展示室に入ってすぐ目に入ってくる、中央スペースに設置されています。公開からすでに2か月、老若男女を問わず、そして日本だけでなく、海外からのお客様にも毎日大勢の方々にお楽しみいただいています。
コンテンツ上の3碗は、実物の作品を目の前で観ることができます。
展示期間をお確かめの上、ぜひ太宰府にお越しいただき、体験してみてください!
▷各碗の展示期間をみる
九州国立博物館
福岡県太宰府市石坂4-7-2
開館時間 午前9時30分~午後5時(金曜・土曜は午後8時まで) ※展示室への入場は閉館の30分前まで ※夜間開館の実施については変更になることがあります。
休館日 月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は翌日)、年末
観覧料 一般700円、大学生350円、高校生以下・満70歳以上無料ほか
九州国立博物館・公式サイト https://www.kyuhaku.jp/
九州国立博物館・Instagram https://www.instagram.com/kyuhaku_koho
九州国立博物館・X https://x.com/kyuhaku_koho
九州国立博物館・facebook https://www.facebook.com/kyushu.national.museum
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- 2025年09月23日 (火)