ぶんかつブログ

動画公開!「あつ森」で「やきもの」に親しもう

文化財活用センター〈ぶんかつ〉では、Nintendo Switchのゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』で、日本美術をテーマにした「ぶんかつ島」を作っています。(2022年8月に夢番地を公開)
「あつ森」をプレイしていない人にも「ぶんかつ島」を楽しんでもらえるよう、「あつ森」の世界の中で日本美術を楽しむ、研究員の解説動画「あつ森でわかる!」シリーズを〈ぶんかつ〉YouTubeチャンネルで公開中。第一弾は「きもの」をテーマにおおくりしました。
本日公開の第二弾!は「やきもの」を取り上げます。このブログでは動画のみどころ、制作の裏話をご紹介します。

テーマは「やきもの」ということで、東洋陶磁がご専門の三笠景子さん(東京国立博物館主任研究員)をお招きし、島づくりを担当した〈ぶんかつ〉デジタル資源担当の川合さん(動画の中では「カワイ」さん)が、前回に引き続き、みなさんを「ぶんかつ島」にご案内します。

「ぶんかつ島」について簡単におさらいすると、国立文化財機構が所蔵する絵画や工芸、考古など文化財をモチーフにした複数のエリアで構成され、さまざまな日本美術に親しんでいただけるようになっています。
「ぶんかつ島」について、もっと知りたい方はこちらもご覧ください。
▷あつ森・夢番地「ぶんかつ島」であそぼう!のページを見る

第一弾は、「ぶんかつ島」を構成しているエリアのモチーフとなった「洛中洛外図屛風(舟木本)」、「花下遊楽図屛風」など、文化財から「江戸時代のきもの」をひも解いていきましたが、今回は「あつ森」で入手できる「やきもの」アイテムに注目して研究員が解説をしていくというもの。

これって「あつ森」ファンにとって、なかなか熱くないでしょうか?


「ぶんかつ島」展示室。「あつ森」で入手できる「やきもの」が展示してあります

ところで、どうしてこのような企画が生まれたのでしょう?
じつは、「カワイ」こと川合さんは、動画では「やきものが好きなキャラクター」を演じていますが、実際は単なるやきもの好きではなく、在野の研究者で17世紀の日本のやきものが専門。現在は〈ぶんかつ〉のデジタル資源担当での業務に従事しています。

動画の第二弾を検討するミーティングの中で、川合さんの「『あつ森』の「やきもの」って、見れば見るほど玄人っぽさがただよってくるんです……」という発言をきっかけに、企画案をまとめ、あわせて「あつ森」に登場する「やきもの」に似ている文化財のリストをつくりました。
それらを研究員の三笠さんに見てもらったところ、これは「やきもの」についての知識がきちんとある人が携わっているとしか思えない。と興味を示してもらい、今回の動画制作がスタートしたというわけです。


撮影風景

「あつ森」の世界には、東京国立博物館の所蔵作品をそのままお手本にしたような美術品もありますが、「やきもの」の類は、なにか特定の作品をコピーしたというわけではなく、「やきもの」のつくられた時代や場所、様式を想起させるような、質感、色使いの特徴をうまくとらえて表現しているそう。

例えば、こちらの《こぶりなつぼ》は、「やきもの」に詳しい人がみると、ぱっと「古九谷(こくたに)」だ!と気が付く色使い。濃い紫色や緑に特徴が表れています。
よくみると蝶も描かれていますね、吉祥といわれるおめでたいモチーフです。


《こぶりなつぼ》

ゲーム内で入手することができます。

*本ブログでは、「あつ森」におけるアイテムの呼び名を《 》で表記しています。


色絵蝶牡丹文大皿 伊万里 江戸時代・17世紀 東京国立博物館
▷ColBaseで「色絵蝶牡丹文大皿」を見る

こちらの《かめ》は、大胆でのびやかに描かれた模様が「唐津(からつ)」そのもの。


《かめ》


絵唐津草文壺 唐津 安土桃山~江戸時代 17世紀 九州国立博物館
▷ColBaseで「絵唐津草文壺」を見る


銹絵草花文大鉢 唐津 江戸時代・17世紀 東京国立博物館
▷ColBaseで「銹絵草花文大鉢」を見る

このように、動画では、実在する所蔵作品をあわせて紹介していきます。
ゲームの話でしょう、と侮ることなかれ。
どんどん「やきもの」を見る・知る、楽しさに引き込まれていきますよ。

そして、「やきもの」といえば、食器もあります。
「あつ森」で入手できる食器類はいくつかあるのですが、動画では《すやきのしょっき》のリメイクで作ることのできる《素焼き》、《粉引》、《おりべ》、《モダン》を紹介しています。

「このセレクトが絶妙!」と三笠さんもおもわずテンションがあがってしまうほど。


どう絶妙か、くわしくは動画をご覧ください!

そして、カワイさんがつい居酒屋さんでチェックしてしまうという織部のお皿はこちら。


織部角鉢 美濃 江戸時代・17世紀 東京国立博物館
▷ColBaseで「織部角鉢」を見る

東京国立博物館で展示されているものと同じ技法・様式でつくられた食器が、じつはわたしたちの身近にあるんですよね。

ちなみに、動画には収録されていないのですが、事前打合せでの一幕。
4種類の食器アイテムはベースになる形状(シルエット)はほとんど同じなのですが……、「近寄って見てみると、《粉引》は面取りがされているんですよ!」と川合さん。一同、うわぁ~と、感嘆の声をあげました。


《粉引》

取り入れる「やきもの」の種類の選択だけでなく、こういった細かいディテールからも、相当な調査をしてゲームに反映させたに違いない!と、「あつ森」クリエイティブチームの熱量と秀逸さを感じます。
どんな方がご担当されたのかお目にかかってみたいです。(ご連絡をお待ちしています!)

「あつ森」プレイヤーのみなさんは、自分の島に置いている《つぼ》や《かめ》に似た文化財を展示室で探してみてはいかがでしょうか。
そんな風なきっかけでも、「やきもの」を鑑賞してみようかな?ミュージアムに行ってみようかな?という入口になればうれしいです。

さて、動画ではかわいらしいキャラクターの動きにもご注目!
お話しする三笠さん・カワイさんに合わせて、今回も〈ぶんかつ〉職員がキャラクターを動かしていました。休日や帰宅後にゲーム操作の練習もしてくれたとか。


撮影中、キャラクターを動かす〈ぶんかつ〉職員

そんな見どころいっぱいの『あつ森でわかる!「やきもの」の世界』は、本日(2023年12月21日)から公開です。

展示室でケースに入っている「やきもの」を見ると、少し身構えてしまう……、難しいと感じていた方もこの動画をみたあとには感じ方が変わってくるかもしれません。

ぜひお楽しみください。

動画の視聴はこちらから!

【あつまれどうぶつの森】あつ森でわかる!やきものの世界
https://youtu.be/rEEF36l7ycs

動画にご登場してくださった三笠さんは、日頃から「やきもの」を手に持つ感覚や、触れたときの手触りも感じてほしいとお話しされています。

でも、博物館で展示されている作品には触れることができませんよね。
そんな触感を体験できるデジタルコンテンツの展示が、東京国立博物館 本館特別3室「日本美術のとびら」で年明けからスタートします。

8Kで文化財 ふれる・まわせる名茶碗(2024年1月2日~)
▷日本美術のとびらのページを見る
かたちも重さも実物の文化財そっくりに制作した茶碗型ハンズオンコントローラーを動かせば、8Kモニター上の高精細画像を360度好きな角度から鑑賞できます。

同じく年明け、三笠さんが担当する、特集「茶碗 茶の湯を語るうつわ」(本館4室 2024年1月2日~ 2024年3月10日)も開幕。
動画に登場した「織部角鉢」など東京国立博物館の所蔵品を中心に、茶の湯を彩るさまざまなうつわをご覧いただけます。

また、〈ぶんかつ〉が運営する「ColBase(コルベース/国立文化財機構所蔵品統合検索データベース)」[https://colbase.nich.go.jp/] は、ご自宅からも文化財を検索することができます。
「粉引」と検索したり、「織部」と検索してみたり、お気に入りの「やきもの」を見つけてみてくださいね。


おまけ:ゲーム画面に島民さんが写り込むNGシーン

今回の動画の舞台となった「ぶんかつ島」では、オリジナルのマイデザインも配布しています。
「ぶんかつ島」夢番地コード DA-4716-9183-8075

2023年3月に公開した第一弾もおすすめ!あわせてご覧ください。


【あつまれどうぶつの森】あつ森でわかる!着物と恋心
https://youtu.be/odOSK_c8jyI

▷関連ブログ「動画公開!「あつ森」で「江戸時代の着物」に親しもう」の記事を読む

カテゴリ: 文化財の情報