ぶんかつブログ

床の間で鑑賞する国宝掛軸の高精細複製

複製品や先端技術を使った文化財の活用を各地のミュージアムで展開する文化庁の委託事業。
今回は、宮崎県の都城市立美術館で公開中の【床の間で鑑賞する国宝掛軸の高精細複製】をご紹介します。


都城市立美術館外観。1981年に宮崎県内で最初に開館した公立美術館です。

都城市立美術館では、開館40周年を記念した特別展「日本美術の源流―雪舟・狩野派から近代美術―」を12月5日(日)まで開催しています。中世から近代に至る地元都城ゆかりの画家たちの作品を一堂に集め、都城・南九州の視点から日本美術の流れを振り返る意欲的な展覧会です。

▷特別展「日本美術の源流―雪舟・狩野派から近代美術―」の開催概要を見る


特別展「日本美術の源流―雪舟・狩野派から近代美術―」ポスター

※会期中一部の作品の展示替えがあります。

詳細は同館HP https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/site/artmuseum/

展覧会チラシ

この展覧会の会期にあわせて、文化財活用センター〈ぶんかつ〉のプロデュースのもと、同館ロビーに設置したのが、【床の間で鑑賞する国宝掛軸の高精細複製】です。室町時代からの伝統的建築様式である「床の間」で、東京国立博物館が所蔵する国宝掛軸の高精細複製をご覧いただく鑑賞プログラムです。

現在は、博物館や美術館のガラスケース越しに眺める機会の多い掛軸ですが、本来は、季節や行事ごとに、室内に掛け替えて楽しむものでした。今回の展示では、床の間を模した造作に、限りなく実物に近い高精細複製の掛軸を掛け、間近での作品鑑賞をお楽しみいただけます。


【床の間で鑑賞する国宝掛軸の高精細複製】展示風景

ご覧いただく作品は、室町時代を代表する絵師、雪舟等楊(1420~1506?)によって描かれた「秋冬山水図」(原品:国宝、東京国立博物館蔵)。都城の周辺では、雪舟の高弟である秋月等観(生没年不詳)が活躍したと伝えられ、雪舟の画系とも縁の深い土地であることから、この作品を選定しました。


国宝 秋冬山水図 雪舟等楊筆  2幅 紙本墨画 室町時代・15世紀末~16世紀初 各47.7×30.2㎝ 東京国立博物館蔵

「秋冬山水図」は、歴史の教科書でもよく紹介される有名な作品ですが、じつは多くの謎に包まれています。例えば、その季節。雪景色を描く左の掛軸が「冬」を示しているのは明らかですが、右には「秋」を示す目立った特徴はなく、明治時代には「夏冬山水図」と呼ばれていました。また近年の研究では、画面右下に描かれる梅の古木の描写から、「春冬山水図」と呼ぶべきとする見解も出されています。


明治42年(1909)に刊行された『東洋美術大観』。図版番号「第百五十八」で「夏冬山水」と表記しているのがわかります。

このように、本作の四季描写には「揺らぎ」があり、鑑賞者のその時々の解釈によって、異なる季節の印象を与えるともいえるでしょう。そこで今回の鑑賞プログラムでは、障子の向こう側に、色とりどりの四季の映像を添えてみました。映し出される春夏秋冬の風景によって、作品の見え方がどのように変化するのかを感じながら、ご覧いただければ幸いです。

丸障子の向こうに映し出される四季の映像。会場では、20秒ごとに映像が切り替わります。

なお、本コンテンツの高精細複製品は、国立文化財機構とキヤノン株式会社による「高精細複製品を用いた日本の文化財活用のための共同研究」の一環として活用しています。和紙に印刷して仕上げていますが、水墨の微妙なグラデーションやニュアンスをとことん再現するために、色合わせを根気よく何度も繰り返して制作しました。会場でご覧いただいても、ちょっとやそっとでは複製だと気づかない方もいるかもしれません。ぜひそのクオリティを間近でご覧いただければと思います。

キヤノン株式会社と京都文化協会による色合わせの様子。

また、美術館訪問の際には、ぜひ都城や宮崎の美味しいグルメも堪能いただければと思います。オススメのメニューはたくさんありますが、とくに鳥レバーのお刺身は絶品そのもの。これ以上ないくらいに新鮮なお肉がリーズナブルに食べられて、心から幸せな気分になること間違いなしです。そういえば、都城市のキャッチコピーは、「幸せ上々、みやこのじょう~日本一の肉と焼酎、とっておきの自然と伝統~」なのでした。なるほど納得です。

宮崎県のご当地グルメ。鳥のレバーやハツなどの刺身。鳥の炭火焼きに冷や汁、チキン南蛮。

※本ブログでご紹介した鑑賞コンテンツは、「令和3年度 地域ゆかりの文化資産地方展開促進事業(先端技術を活用した文化資産コンテンツ制作プロジェクト)」の一環として〈ぶんかつ〉が実施しています。

日本美術の源流ー雪舟・狩野派から近代美術ー

会期 2021年10月30日(土) ~ 2021年12月5日(日)

会場 都城市立美術館

開館時間 午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)

休館日 月曜日

観覧料金 一般:1000円(800円)、高大生:600円(400円)、中学生以下無料
※カッコ内は、前売り、65歳以上、20名以上の団体等の割引料金
フリーパス:1300円(会期中何度でも入場できます)

主催 都城市立美術館特別展実行委員会(都城市立美術館、MRT宮崎放送)
特別協賛 霧島酒造株式会社
協賛 南日本酪農協同株式会社
後援 宮崎県・一般社団法人都城芸術文化協会・一般社団法人都城観光協会・宮崎日日新聞社・南日本新聞社・朝日新聞社・毎日新聞社・読売新聞西部本社・ 西日本新聞社・NHK宮崎放送局・MBC南日本放送・KTS鹿児島テレビ・KKB鹿児島放送・KYT鹿児島読売テレビ・エフエム宮崎・エフエム鹿児島・BTV株式会社
助成 文化庁(令和3年度地域ゆかりの文化資産を活用した展覧会支援事業)、一般財団法人自治総合センター
協力 文化財活用センター

都城市立美術館 https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/site/artmuseum/