ぶんかつブログ

〈春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46〉展覧会と図録の楽しみ方

日本美術と乃木坂46のコラボレーション、過去と現代を結ぶ展覧会〈春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46〉が9/4土曜、ついに開幕。東京国立博物館(トーハク)で、乃木坂46?!いったいどんな展覧会なのか、気になっている方も多いかもしれません。


表慶館は、当時の皇太子(後の大正天皇)のご成婚を記念して計画され、明治42年に開館した、日本で初めての本格的な博物館建築。設計は、現在の迎賓館なども手掛けた宮廷建築家の片山東熊。明治末期の洋風建築を代表する建物として、昭和53年(1978)に重要文化財に指定されました。

会場で手に入る公式図録は、日本美術と映像の解説はもちろん、映像のメイキング風景や、キービジュアルのアザーショットを多数収録した、本展の全貌を物語る豪華な内容。このブログでは、本展の企画および日本美術の解説を担当した松嶋雅人より、展覧会と図録の楽しみ方をご紹介。

公式図録は会場の特設ショップで入手可能。¥3,000(税込)

〈春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46〉開催にあわせて発行される図録、一見されると乃木坂46のメンバーが並んでいるので、アイドルの写真集と思われるかも知れません。でも違うのです。

この展覧会は、メンバーの織りなすパフォーマンス映像のインスタレーションと、日本の絵画や染織作品を取り合わせて、表慶館という、明治時代に建てられた建築物の中でご覧いただくものです。そこでは「春夏秋冬」を巡りながら、百年以上も前に作られた日本美術の本質を、現代の映像作家が、乃木坂46の世界観を重ね合わせながら、あらためて解釈したものを映像として表現しています。

図録には、本展覧会の会場となる表慶館の歴史を物語る図面や素描、開館当時の古写真といった歴史資料も収録。表慶館の建築の美しさを楽しめる、会場設計にもご注目。

かつて作られたものが、後年に再解釈され、新たな作品として生まれ変わることは、日本文化の歴史の中では、ままあることです。例えば今回展示されている酒井抱一が描いた「夏秋草図屏風」は尾形光琳の「風神雷神図屏風」が制作されたほぼ100年後に、その裏面に描かれたものです。

天上界の風雨を司る二神と、地上における雷とともににわか雨が夏草を打ちつけ、秋草は強風に吹かれる秋草の光景が関連付けられているのです。日本に暮らす人々の価値観や世界観が、時代を超えて変奏されたともいえるでしょう。

このように今回の展覧会は、日本の伝統的な文芸の「作り方」を踏襲しているともいえるのです。いいかえると現代のエンターテインメントは、日本でかつて作られた美術作品のもつ価値観と地続きであると、展示空間のなかで実感いただけると思います。

そして表慶館の展示室は、天候が晴れたり、曇ったりすると室内の明るさもかわり、一時として同じ状態がありません。そのような環境の中で、個々のメンバーは季節ごとに浮かび上がる日本美術の「花」というモティーフに見立て(花と一体化している)られ、パフォーマンスを行なっています。つまり会場では日本美術作品と乃木坂46のメンバーのパフォーマンスというノンバーバル(非言語)の体験をしてもらうことになります。

一方図録では「言葉」と写真で、表慶館という実空間では味わえない世界を知ってもらおうと思います。まずは展覧会の趣旨とともに、展示で取り上げた7つの日本美術を知ってもらいます。

それぞれの日本美術は春から四季をおって登場します。その特色(本質)に応じたテーマを、日本美術作品で取り上げて、そこに表わされる季節ごとのある「花」が、9人のメンバーに対応します。そして展示映像の構成やメカニズムを解説します。つまり言葉による「絵解き」がなされています。

その上で、パフォーマーであるメンバーの写真と、展示映像の作成の時に撮影された、いわばメイキング写真をみてもらうことで、美術作品の中に深くしみ込んでいる日本文化のエッセンスが、どのような思考経路を通って、現代のエンターテインメントとして表わされているかを知ってもらえると思います。

展覧会と図録の両方をご覧いただくことで、〈春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46〉の世界を、さらに深く味わっていただければと思います。

▷展覧会チラシ

春夏秋冬/フォーシーズンズ 乃木坂46

■会場:東京国立博物館 表慶館(東京都台東区上野公園13-9)

■会期:2021年9月4日(土)~11月28日(日)

■アクセス:JR上野駅公園口、または鶯谷駅南口下車 徒歩10分

■主催:東京国立博物館、文化財活用センター、ソニー・ミュージックエンタテインメント、文化庁、日本芸術文化振興会

■制作協力:NHKプロモーション、中山マネジメント

※本展は事前予約制(日時指定券)です。開館時間、入館方法、観覧料金等のご案内、詳細は展覧会公式サイトをご確認ください。

▷展覧会公式ウェブサイトで展覧会情報を見る https://nogizaka-fourseasons.jp/