ぶんかつブログ

2020年度貸与促進事業がいよいよ始まりました

文化財活用センター〈ぶんかつ〉とトーハクが、2017年度より取り組んできた「貸与促進事業」*。今年、4年目を迎えました。

この3年間で、

2017年 秋田県立近代美術館(秋田・横手市)、福島県立博物館(福島・会津若松市)
2018年 大阪歴史博物館(大阪・大阪市)、斎宮歴史博物館(三重・多気郡)、彦根城博物館(滋賀・彦根市)、大分県立美術館(大分・大分市)、堺市博物館(大阪・堺市)、板橋区立郷土資料館(東京・板橋区)
2019年 三重県立美術館(三重・津市)、三内丸山遺跡センター(青森・青森市)、高岡市美術館(富山・高岡市)、大分県立先哲史料館(大分・大分市)、千葉県立美術館(千葉・千葉市)

合計 10都府県12都市13施設において158件のトーハク所蔵の文化財が公開され、148,526人の方々にご来場いただくことができました。皆様のお住まいの地域でもトーハクの文化財をご覧いただく機会はありましたでしょうか?

さて、芸術の秋を迎え、2020年も貸与促進事業の展覧会が5つの会場で順次開幕しています!

特別展
「伝わるかたち/伝えるわざ-伝達と変容の日本建築」
東北歴史博物館(会期:2020年9月26日~11月23日)

公式ウェブ https://www.thm.pref.miyagi.jp/exhibition/3951/

はじめにスタートを切ったのは東北歴史博物館の「伝わるかたち/伝えるわざ-伝達と変容の日本建築」展。トーハクからは、昭和7年 (1932)に完成した高さ3メートル超えの「法隆寺五重塔模型」(1/10縮尺)、細部まで精巧に作られた「東大寺鐘楼模型」、江戸時代に作られた「飛雲閣紙製模型」 はじめ、16件の文化財を貸し出しています。トーハク内でも展示機会の少ない文化財が数多く出品されています。なかでも「法隆寺五重塔模型」の公開は15年ぶり。会場では写真撮影も可能です。巨大模型とのツーショットは貴重な「映え」フォトとなること間違いなしです。


【左】東大寺鐘楼模型 昭和41年(1966)東京国立博物館蔵
【右】法隆寺五重塔模型 昭和7年(1932) 東京国立博物館蔵

開館10周年記念特別展
「福岡の至宝に見る信仰と美」
九州歴史資料館(会期:2020年10月6日~11月29日)

公式ウェブ http://www.fsg.pref.fukuoka.jp/kyureki/index.html

10月6日から始まった九州歴史資料館の「福岡の至宝に見る信仰と美」展には、トーハクからは27件の文化財を貸し出し中。博多・承天寺の住持を務めた円爾(えんに)ゆかりの国宝「聖一国師(しょういつこくし)あて尺牘(せきとく)」(板渡しの墨跡)が14年ぶりに九州で公開されるほか、福岡藩主黒田家伝来の重要文化財「唐絵手鑑」や、福岡県春日市日拝塚古墳出土の「単鳳環頭柄頭(たんほうかんとうつかがしら)」など、アジアとの交流で生まれた福岡ならではの名宝が里帰りを果たしています。


国宝 聖一国師あて尺牘(板渡しの墨跡)
無準師範筆 中国 南宋時代・淳祐2年(1242) 
松平直亮氏寄贈 東京国立博物館蔵(展示期間:10/6-11/1)

 
重要文化財 〓童傀儡図(唐絵手鑑「筆耕園」のうち)蘇漢臣款
中国 明時代・15~16世紀 東京国立博物館蔵(展示期間:11/3-11/29)
※注「〓」は人偏+辰

令和2年度企画展
「ちばの縄文 貝塚からさぐる縄文人のくらし」
千葉県立中央博物館(会期:2020年10月10日~12月13日)

公式ウェブ http://www2.chiba-muse.or.jp/www/NATURAL/contents/1585717226011/index.html

縄文ファンの皆様は、10月10日にオープンしたばかりの千葉県立中央博物館の「ちばの縄文 貝塚からさぐる縄文人のくらし」展もお見逃しなく!
実は千葉は、全国の約1/3にあたる約700か所もの縄文貝塚が所在し、貝塚数日本一を誇る県。近代考古学の黎明期より研究者の熱い注目を集めてきた土地なのです。この展覧会には、主理台(長谷部)貝塚、岩井貝塚、加曽利貝塚、余山貝塚など、千葉県内の遺跡から発掘された考古資料44件をトーハクから貸し出し中(今年度事業では最多数!)。最新の発掘・調査情報も踏まえながら、貝塚を通して縄文人の暮らしを紹介する展覧会です。


【左】土偶頭部 縄文時代(後期)・前2000~前1000年 千葉県銚子市余山貝塚出土 吉野長太郎氏寄贈 東京国立博物館蔵
【右】深鉢形土器 縄文時代(中期)・前3000~前2000年 千葉県市川市姥山貝塚出土 杉原荘介氏寄贈 東京国立博物館蔵

古河市合併15周年 開館30周年記念特別展示
「国宝参上。―鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財―」
古河歴史博物館(会期:2021年1月9日~2月7日)

公式ウェブ https://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/lifetop/kogameguri/art/3/3874.html

年明け1月9日からは、古河歴史博物館(茨城県古河市)において「国宝参上。―鷹見泉石像と古河ゆかりの文化財―」展が開催される予定。この展覧会で注目すべきは、念願の里帰りを果たす「鷹見泉石像」(国宝)。地元ゆかりの古河藩家老を江戸時代後期の画家・渡辺崋山が描いた名品です。ほかにも、古河出身の河鍋暁斎や奥原晴湖が手掛けた絵画、古河出土の「埴輪 大刀をもつ男子」、古河藩主土井家ゆかりの「若松桜蒔絵化粧道具」など、トーハクが所蔵する地元ゆかりの文化財15件が展示される予定です。


国宝 鷹見泉石像(部分)渡辺崋山筆
江戸時代・天保8年(1837) 東京国立博物館蔵

第42回特別展
「東城寺と『山ノ荘』―古代からのタイムカプセル、未来へ」
土浦市立博物館(会期:2021年3月20日~5月5日)

公式ウェブ http://www.city.tsuchiura.lg.jp/section.php?code=43

最後に、今年度事業を締めくくるのは、茨城県の指定文化財(史跡)・東城寺経塚群の発見から130年目を記念して開催される土浦市立博物館の「東城寺と『山ノ荘』―古代からのタイムカプセル、未来へ」展。トーハクからは東城寺経塚出土の経筒や鏡、平安時代・長徳4年(998)に藤原道長が記した「紺紙金字法華経巻第一残欠」(重要文化財)など14件を貸し出し予定です。


蝶鳥鏡 平安時代・12世紀 茨城県土浦市東城寺経塚出土 東京国立博物館蔵

今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言などの影響により、全国のミュージアムの臨時休館が相次ぎました。海外から巡回する大型展覧会やコレクション展の実施は困難を極め、開催中止や延期、会期の変更などを余儀なくされた館も少なくありません。私たちが取り組んでいるこの事業においても、作品の輸送や職員の移動が困難な状況下で、貸与が実現しなかった例も出ています。そのような中、実現の可能性を探り安全対策をとりながら、開幕を迎えることができた展覧会をぜひご覧いただければと思います。

国立博物館所蔵の地元ゆかりの文化財を全国のミュージアムに貸し出して活用する「貸与促進事業」は、コロナ禍の今だからこそ、改めて自国の文化を見つめなおすよい機会。各地域に里帰りする地元ゆかりの名品を通して、一人でも多くの方が日本文化や地域文化の魅力に触れ、文化財に親しむきっかけとなるような活動を続けていきたいと思います。

*「貸与促進事業」は、2017年度は東京国立博物館の単独事業。

それぞれの展覧会の詳細については、以前のページをご覧ください。

▷貸与促進事業 実績を見る

「貸与促進事業」については、以前のブログでも詳しくご紹介しています。

▷ブログ「貸与促進事業って、なに?」の記事を読む

▷ブログ「国立博物館の文化財であなたの地域の魅力を発信!」の記事を読む

▷ブログ「2019年度の貸与促進事業を振り返る」の記事を読む

カテゴリ: 文化財の貸与