ぶんかつブログ

トーハクの名品から複製きものが完成!

日本人が長い時をかけて育んできた美意識を、色や模様に表わした「きもの」。洋服が当たり前になった現代に生きる我々も、結婚式の礼装や夏祭りに着る浴衣など身近で親しい文化のひとつです。東京国立博物館(トーハク)では現在、特別展「きもの KIMONO」を開催しています。この特別展では数百年も大切に受け継がれ、今や文化財となったきものが数多く展示されていますが、この華やいだ会場にいらっしゃるお客様がそれぞれにおしゃれを楽しみ、きものを着こなす姿もまた、隠れた見どころと言えるのではないでしょうか。

さて、文化財活用センター〈ぶんかつ〉では、企業や各種団体と連携して、先端的な技術によるさまざまな文化財の複製を製作しています。このたび新たに、複製きもの3種が完成しました。いずれもトーハクが所蔵する名品といっても過言ではない重要文化財の染織(小袖)2件、絵画1件をもとに製作したものです。トーハクの監修のもと、数々の文化財修理に携わってきた実績を持つ株式会社 染技連(京都市中京区)が一連の製作を統括するかたちで、江戸時代の名品を再現しました。


複製きもの① 若衆がまとう勇猛な鷹模様の友禅染
(原作品)重要文化財 振袖 白縮緬地衝立梅樹鷹模様 江戸時代 18世紀 東京国立博物館
※特別展「きもの KIMONO」(東京国立博物館)にて、会期中全期間展示

▷ColBaseで「振袖 白縮緬地衝立梅樹鷹模様」の作品情報を見る


複製きもの② 裕福な奥方が高名な絵師に頼んだ一点もの
(原作品)重要文化財 小袖 白綾地秋草模様 (通称:〈冬木小袖〉) 尾形光琳筆 江戸時代 18世紀 東京国立博物館
※特別展「きもの KIMONO」にて、会期中全期間展示

▷ColBaseで〈冬木小袖〉の作品情報を見る


複製きもの③ 流行を意識した町娘の華やかな振袖
見返り美人図に描かれたきものを再現
(原作品)見返り美人図 菱川師宣筆 江戸時代 17世紀 東京国立博物館
※特別展「きもの KIMONO」にて、会期中全期間展示

▷ColBaseで「見返り美人図」の作品情報を見る

この複製きものの布地は、①は綾、③は花紋を織り出した綸子という絹製の織物です。原作品で使われている、または描かれている材質に近いものを選びました。②の原作品は縮緬ですが、複製きものでは細かい模様の再現性を高めるために平織の絹地としました。

複製きものの模様は、原作品の作品画像からデジタルデータでオリジナルの版を作り、インクジェットプリントの技術で布地にプリントしています。

また、帯の色や模様、幅や結び方は、原作品の製作時期に近い絵画作品を参考にして作られました。


柱時計美人図(部分)
西川祐信筆 江戸時代 18世紀 東京国立博物館
白い綸子に墨で菊模様を描いた小袖を身に付ける女性。帯は前結びにしています。
※特別展「きもの KIMONO」にて、会期中全期間展示


小倉山荘図(部分)
奥村政信筆 江戸時代 18世紀 東京国立博物館
友禅染の模様が鮮やかな振袖を身につけ着飾った若衆が歩いています。
※特別展「きもの KIMONO」にて、会期中全期間展示

これらは実際に着用することを想定し、3種の複製きものそれぞれに合わせた帯も製作しています。また、男女問わず着用体験ができるようサイズはSMLをご用意。複製の完成により、着用した姿での鑑賞が可能となっただけではなく、きもの本来の用途である「身に着けること」を楽しむことができるようになりました。

もともと特別展「きもの KIMONO」にご来場の方に、この複製きものを着用する体験イベントを予定していました。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、みなさまには今回、着付け展示をご覧いただくこととなりました。

 

特別展「きもの KIMONO」を開催しているトーハク平成館1階に複製きもの展示コーナーがあります。こちらは写真撮影OK、きもの展鑑賞の記念写真はここで!

  

この複製きもの、実際に身に着けた姿を見たことあるよ!?と思った方、気づいてくださってありがとうございます。特別展「きもの KIMONO」の広報大使を務める、美容家のIKKOさんに「複製きもの② 裕福な奥方が高名な絵師に頼んだ一点もの」を着ていただきました。

「複製きもの① 若衆がまとう勇猛な鷹模様の友禅染」を着てくださったのは、舞台『刀剣乱舞』の三日月宗近役を務め、特別展「きもの KIMONO」では音声ガイドナビゲーターである俳優の鈴木拡樹さんです。

文化財の複製は展示イベント、教育普及で公開活用するほか、ミュージアムや企業団体へお貸し出しし、露出展示や調度利用など幅広い用途にご活用いただけます。もしご利用をお考えでしたら〈ぶんかつ〉企画担当までご相談ください。

 

複製きもの 製作情報

製作期間:平成31年(2019)4月~令和2年(2020)3月

監修:東京国立博物館 製作:文化財活用センター

   製作統括:株式会社 染技連(京都市中京区)

   生地・帯製織:永井織物株式会社(京都市下京区)

   プリント:スギシタ有限会社(京都市下京区)

 

 


特別展「きもの KIMONO」公式サイト ▶▶▶ https://kimonoten2020.exhibit.jp/

 

カテゴリ: 複製の活用