疫病退散!木製祭祀具にこめられた古代の祈り
長野県千曲市に位置する長野県立歴史館では、2025年10月4日(土)から11月16日(日)まで「疫病退散!除災祈願の考古学~木製祭祀具にみる古代の祈り~」が開催されています。

長野県立歴史館 外観

▷「疫病退散! 除災祈願の考古学 ~木製祭祀具にみる古代の祈り〜」の開催概要をみる
本展は、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館・東京文化財研究所・奈良文化財研究所が所蔵する各地域ゆかりの文化財を貸し出す「国立文化財機構所蔵品貸与促進事業」による、令和7年度の展覧会です。
▷貸与促進事業とは
こちらの企画展では、千曲市屋代遺跡群を始めとした、信濃国の役所で出土した木製祭祀具が展示されています。
『続日本紀(しょくにほんぎ)』には、奈良時代の信濃国での病の流行について記されています。これらの未知のウイルスに対して、また知らず知らずのうちに身についてしまった不浄や災厄をはらうため、古代の人びとは木製祭祀具に祈りを込めました。
木製祭祀具には先端を剣先状に尖らせた形状の斎串(いぐし)や、顔の表現を持つ人形(ひとがた)、馬形などがあります。また、屋代遺跡群には蛇形とされる、蛇行した形の特徴的な木製祭祀具があります。これは、屋代遺跡群に特有のものです。

これらの木製祭祀具は、国が律令体制を整えていく中で都から各地に広まったとされます。今回の展示では、貸与促進事業のもと、奈良文化財研究所が所蔵する藤原京、平城京の木製祭祀具を長野県立歴史館で展示できることになりました。

約1300年前に存在した都と信濃国の木製祭祀具を、一度に、そして比較しながら観覧することができます。
貸与促進事業で貸し出し中の人形についてみてみましょう。

人形 完 平城宮跡出土 8世紀 奈良文化財研究所 [左:表、右:裏]
上にあげた写真は奈良時代の人形で、墨書きで顔の表現があります。胴部には「右目病作(おこる)、今日、今」と書かれています。これは、人形を作った人がまさに今日、眼病を患ってしまい、この眼病を治したい、という祈りが込められた人形と考えられています。
本展示では、長野県北相木(きたあいき)村で小学生たちが担っている伝統行事「かなんばれ」の紹介がされています。

かなんばれで流す人形
「かなんばれ」では男女をかたどった人形を桟俵(さんだわら)にのせて川に流すのですが、ここに「流し去りたいもの」を書き込んで共に流します。例えば、「好き嫌いをする」、「汚い字を書く」などの流し去りたいものが書き込まれています。「右目病作(おこる)、今日、今」と書かれた人形もまさに、病という流し去りたいものを人形に書き込んで、流したのではないでしょうか。1300年前と現在、人びとが人形にこめた思いには通じるところがあるように感じました。
本展示の最後には、近年我々が向き合ったコロナについての記録が展示されています。我々がコロナ禍でアマビエ様に祈ったように、古代の人びとも木製祭祀具に疫病退散を願ったのでしょう。
さらに本展示では人形にちなんだグッズ(人形ステッカー)が販売されています。皆さんも観覧のおともに人形ステッカーを手に取り、流し去りたいものを書き込んでみてはいかがでしょうか。

人形ステッカー全2種 各300円
疫病退散! 除災祈願の考古学 ~木製祭祀具にみる古代の祈り~
会期 2025年10月4日(土)~2025年11月16日(土)
会場 遠長野県立歴史館(長野県千曲市大字屋代260-6)
開館時間 午前9時~午後5時 ※入館は午後4時30分まで
休館日 月曜日(10月13日・11月3日は除く)、10月14日(火曜日)、11月4日(火曜日)
入館料 企画展のみ:一般300円(200円) 大学生150円(100円)
※高校生以下は無料・( )内は20名以上の団体料金
※大学生(高等専門学校4年生以上、専門学校生を含む)は学生証を提示。県内に所在する大学等の学生は無料
長野県立歴史館・公式サイト https://www.npmh.net/
長野県立歴史館・X https://x.com/official_NPMH
長野県立歴史館・Facebook https://www.facebook.com/naganokenriturekisikan/
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- 2025年10月28日 (火)