ぶんかつブログ

まいにちワークショップ「ほとけさまにふれよう!」

文化財活用センター〈ぶんかつ〉は、先端技術を用いて国立博物館の収蔵品の複製やデジタルコンテンツを開発し、それらを活用する活動を行なっています。
このブログでは、奈良国立博物館(奈良博)が2022年度に制作した国宝 薬師如来坐像の模像についてご紹介します。

奈良博の教育普及スペース「ちえひろば」では、開館日毎日、仏像をはじめとした仏教美術に親しめるワークショップを開催しています。

2025年2月19日から、ワークショップに新しいお品書きが加わりました。その名も、まいにちワークショップ「ほとけさまにふれよう!」です。これは、奈良博所蔵の国宝 薬師如来坐像の模像を「さわれる仏像」として活用したワークショップです。

奈良博所蔵の国宝 薬師如来坐像

国宝 薬師如来坐像(奈良国立博物館)


国宝 薬師如来坐像が造られたのは、平安時代の初め頃の9世紀です。カヤの木材でできており、頭と体の主要な部分を1つの木材から彫り出す「一木(いちぼく)造り」という方法で造られています。

 

彫りの深い顔立ちや、厚みがあるどっしりとした体つき、鋭く彫り込まれた衣のひだなどが大きな特徴で、平安時代の初め頃に造られた仏像を代表する存在です。

そして、この国宝 薬師如来坐像は、国立博物館が所蔵する仏像のうち、唯一国宝に指定されており、まさしく奈良博の「顔」といえる貴重なコレクションです。2025年に奈良博は開館してからちょうど130年を迎え、開館130周年を記念するロゴマークには、この国宝 薬師如来坐像の横顔がデザインされています。

奈良博開館130周年の記念ロゴマーク

模像の製作
この国宝 薬師如来坐像を同じ材料と方法で再現した模像を造ろうと企画し始めたのは、今からおよそ2年前の2022年の夏ごろ。
この国宝 薬師如来坐像の模像を造り、触れるようにすれば、仏像の姿や、国宝 薬師如来坐像の魅力を体感的に知ってもらえるのでは…と考え、同じ材料・同じ方法で再現しよう!というプロジェクトを開始しました。

数々の仏像の模刻や修理などを手がけられてきた彫刻家の中村恒克氏に模像の制作を依頼し、2023年の春から2024年3月にかけての約1年の製作期間を経て、模像が完成しました。


国宝 薬師如来坐像の模像

左:国宝 薬師如来坐像、右:国宝 薬師如来坐像の模像

オリジナルの像と模像を並べた写真をご覧いただくと、細部に至るまで忠実に再現されているのがお分かりいただけるのではないでしょうか。奈良博の彫刻部門の研究員3名全員が「素晴らしい出来栄え!」と感動するほどの、完成度が非常に高い模像が誕生しました。

それから、専用の展示ケースを製作するなど、さまざまな準備をして、いよいよ模像が「さわれる仏像」として、2025年2月19日より公開されました。

ワークショップの内容
このワークショップでは、ボランティアによる解説のもと、国宝 薬師如来坐像の模像を触りながら、如来というグループのほとけの姿の特徴を知ることができます。

仏像は、姿や役割から、如来・菩薩・明王・天の4つのグループに大きく分けられ、そのうち如来は、人間には無いさまざまな体の特徴をもっています。例えば、頭のてっぺんが盛り上がった形、たくさんのつぶつぶが付いたような髪型、手の指の間に表された水かきのような膜など…。そうした特徴を見るだけでなく、模像に実際に触れてみることで、理解が一層深まります。

また、国宝 薬師如来坐像の表現の魅力を体感できるのも、このワークショップの大きな特色です。くっきりと表された目鼻立ちや、彫りの鋭さなどは、やはり触れてみてこそ、実感できるところが大きいといえます。

「ほとけさまにふれよう!」の実施の様子

 

さらに、国宝 薬師如来坐像と同じカヤ材で造られているため、その手ざわりや香りを知ることができるのも、このワークショップならではの体験です。仏像の材料となる木材のサンプルに触れたり、香りを嗅いだりすることで、仏像を造る木材の主な種類を学ぶことができる体験型展示「さわって!発見!仏像の木」とあわせてお楽しみいただけるようにもなっています。


「さわって!発見!仏像の木」の実施の様子

ぜひ、「さわれる仏像」に実際に触れていただき、仏像をより身近に感じていただけたら幸いです。

まいにち ワークショップ「ほとけさまにふれよう!」

日程:開館日毎日(ただし、とくべつワークショップ開催日の第2・4日曜はのぞく)

時間:10:00~16:00

場所:ならはく教育普及スペース「ちえひろば」(地下回廊)

入場・参加料 無料

事前申込 不要

*地下回廊の「ちえひろば」では、仏像をより楽しむことができるワークショップをほかにも開催しています。お気軽にご参加ください。詳細は奈良博ウェブサイトをご覧ください。

ならはく教育普及室ウェブサイトhttps://edu.narahaku.go.jp/

奈良国立博物館・公式サイトhttps://www.narahaku.go.jp/

奈良国立博物館・公式Xhttps://x.com/narahaku_PR

 

カテゴリ: 複製の活用