ぶんかつブログ

皆様の支援がここに結実!〈冬木小袖〉修理後初展示

文化財活用センター〈ぶんかつ〉と東京国立博物館が共同で行なってきた、東京国立博物館が所蔵する尾形光琳が秋草模様を描いたきもの、重要文化財「小袖 白綾地秋草模様」(通称〈冬木小袖〉)を皆様のちからで未来につなぐ、「〈冬木小袖〉修理プロジェクト」。
▷〈冬木小袖〉修理プロジェクトのページを見る

その成果である修理後初の展示が、東京国立博物館本館10室で始まっています。2023年12月3日(日)まで。

〈冬木小袖〉は白い絹地に秋草が描かれたきもの。
修理前は傷んだ表地を補強するために施された縫い目が、秋草模様の上に目立っていましたが、今回の修理では過去の修理による補修糸を掛け替えることで、光琳の絵画表現がより鑑賞しやすくなりました。
今回は独立型のケース内に展示されており、正面、背面、側面、好きな角度から鑑賞することが可能になっています。
どうぞじっくりとご覧ください。

補修箇所以外に目を引くのはやはり裾部分でしょうか。
裾に見えている紅色の部分は、裏地を表に折り返して、表から少し見えるように仕立てた「袘(ふき)」と呼ばれる部分。

過去のブログでもご紹介しましたが、裏地に使われている紅の絹地は、〈冬木小袖〉に合わせた特注品。
袖口に見えるも黒い覆輪とともに、同時代の小袖や浮世絵美人画に描かれたきものを参考に製作されました。

▷関連ブログ「〈冬木小袖〉修理レポート・6【新調裏地】」の記事を読む

ここにも、より制作当初の姿に近づけることを念頭に行なわれた今回の修理の成果が感じられますね。

さらに、今回は同じケース内に展示されている巻物にもご注目ください!

こちらは、〈冬木小袖〉の模写図巻。〈冬木小袖〉とともに東京国立博物館へと伝来した図巻です。
今回展示されている場面は、模様の模写の一部。
模写は江戸時代後期の南画の大家として知られる谷文晁(たにぶんちょう)の弟子である喜多武清(きたぶせい)によるものとされています。
この図巻、実は作品自体に落款のない〈冬木小袖〉が尾形光琳の手によるものであると考えられている根拠のひとつ。
喜多自身が「冬木家蔵光琳真蹟地白ぬめ 天保九戊戌二月」と書いているほか、尾形光琳の真筆であるとの鑑定書が2通貼付けられています。
〈冬木小袖〉の来歴の一端を示す貴重な図巻もお見逃しなく。

なお、本館特別3室脇の階段室には、〈冬木小袖〉の修理後初の展示を記念して、「〈冬木小袖〉修理プロジェクト」の一環として作成された「〈冬木小袖〉ミク」の等身大タペストリーが、〈冬木小袖〉を着用したフィギュア(「ねんどろいど 初音ミク 冬木小袖Ver.」)とともに再登場しています。

このフィギュアは、先日開催されたG20ニューデリー・サミットの関連企画として催された「Culture Corridor – G20 Digital Museum」でも、日本代表として〈冬木小袖〉の複製きものとともに出品されました。

伝統文化と現代のコンテンツのコラボレーションにより文化財の修理を行なったユニークな例として、現地メディアにも取り上げていただきました。

今回の修理プロジェクトは、多くの方に〈冬木小袖〉や文化財修理について知っていただくきっかけにもなりました。
ぜひこの機会に、あたたかい支援のもとで魅力を取り戻した〈冬木小袖〉の実物を展示室でご覧いただければと思います。皆様のご来館、お待ちしています。


ぶんかつYouTubeチャンネルでは、解体から補修、仕立てまでの一連の修理工程を作業の様子を交えて〈冬木小袖〉の修理過程と修理後の作品の見どころをご紹介する動画、「〈冬木小袖〉~みんなのちからで守り伝える 令和の修理プロジェクト~」を公開しています。どうぞご覧ください。

▷「〈冬木小袖〉~みんなのちからで守り伝える 令和の修理プロジェクト~」を見る
https://www.youtube.com/watch?v=dT2IX4wivRQ

これまでの〈冬木小袖〉修理レポートはこちらからご覧いただけます。
▷〈冬木小袖〉の修理・過去の修理レポートを見る

展示情報

展示期間 2023年10月3日(火)~12月3日(日)

会場 東京国立博物館 本館 10室

開館時間 9:30~17:00 *入館は閉館の30分前まで

休館日 月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)

観覧料 総合文化展観覧料(一般1,000円、大学生500円)もしくは開催中の特別展観覧料[観覧当日に限る]でご覧いただけます