ぶんかつブログ

「ひかり拓本」で石碑の文字を誰でも簡単に見える化

皆さんは町をあるいているとき、文字が彫られた石を見たことがありませんか?
この石は石碑と呼ばれ、大きな町でも、ほとんど誰も来ない山奥でも、探してみると案外身近にあるものです。既にあそこに「石碑がある」と思い当たる方もおられるかもしれません。

今回のブログでは、石碑に刻まれた文字「碑文」をより簡単に読み解くことができる技術、「ひかり拓本」についてご紹介します。


ひかり拓本撮影の様子と結果

まず、石碑にはどういう内容の文章が彫られているかご存知でしょうか?
彫られている内容は、過去におきた大きな地震や台風、洪水などの災害について、その石碑の立っている地域の昔のことについてなど、実に色んな事が彫られています。しかし、石碑の多くは屋外にあるため、少しずつ削れていく「風化」という現象によって、徐々に文字が読めなくなっていきます。
そのため、書かれている文字を読もうと思うと、なかなかにパワーが必要です。例えば、昔から拓本という、紙と墨を使用して文字を写し取る技術が使われてきました。

拓本は、先ず紙を石碑などに張り付けて、それを少し濡らしたタオルなどで窪んだところ(彫られた文字など)を押し込んでいき、紙の表面に凹凸をつくります。その後、タンポという綿などを布でくるんでハンコのようにしたものに墨を付けて、少しずつ紙に凹凸を写し取っていく技術です。


拓本の様子

ひかり拓本てなに?
この度紹介する「ひかり拓本」は、この拓本を、墨ではなく光で、紙ではなくカメラとパソコンで、誰でも簡単に作ることができる技術です。

文字が彫られた石碑に斜めに光をあてるとどうなるでしょうか。文字の影ができますね。ひかり拓本は、この影だけを撮影する技術です。


影だけを撮影

大きな石碑の場合は、一回光を当てただけでは全体を照らせないかもしれません。そんな時は、光の角度と照らしている位置を少しずつ変えながら、どんどん撮影していくと、前の影と新しい影をくっつけてくれます。
すぐに刻まれた文字がくっきりわかる画像が生成されるので、その場で確認できるのもひかり拓本の特徴で、撮影に失敗しても、その場で確認してやり直しができます。


普通の撮影(左)とひかり拓本の画像(右)

これまでとこれから
これまで私たちは、この技術を使って全国の石碑を撮影してきました。しかし、日本中に数多くある石碑を私たちの研究チームだけで調査することは不可能です。また、調査をしている中で、「ひかり拓本で自分も撮影してみたい」、「校外学習などで子どもたちが地元の石碑を自らの手で拓本化する活動に使用できたら」などのお声もいただくようになりました。
そこで、この度、文化財活用センターと奈良文化財研究所とで、皆さんに気軽に使っていただけるように、スマートフォンアプリの開発費用のために、クラウドファンディングを実施することになりました。

このアプリは撮影も画像処理も全て行なってくれます。撮影者はスマートフォンを設置して、石碑に光をあてながらリモコンなどでボタンを押すだけです。あとはアプリが自動で影の撮影と影の合成を行なってくれるので、ひとりでも大丈夫。影が足りないときは再度光をあてつつ撮影を繰り返して影の追加もできます。

ちょっと応用
ひかり拓本は、石碑の文字を読むために開発しましたが、石碑にしか使えないわけではありません。例えば古銭や化石などでも使用できます。もっと身近なものでも凹凸のあるものであれば、読み取ることができるので、実験の時に私たち開発者が思いもつかないものを拓本した人もいます。
アプリがリリースされましたら是非、色々なものに試していただき、面白いものが取れましたら私たちに教えてください。

開発のためのクラウドファンディングで、是非目標を達成し、皆様にお届けできたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

▷ひかり拓本プロジェクトのページを見る

▷ひかり拓本プロジェクトに寄附をする
https://readyfor.jp/projects/hikaritakuhon01