常設展示「日本美術のとびら」がトーハク本館にオープン!
皆さんは「博物館」や「文化財」と聞いてどんな印象を抱かれるでしょうか?
「博物館って難しくて、とっつきにくい・・・」
「文化財は美術や歴史の基礎知識がないとよくわからないし、楽しめない・・・」
「展示ケース内の文化財は、よく見えなくて興味がわかない・・・」
博物館で働いていると、時折そんな言葉をいただくことがあります。
そんな方にこそ、ぜひともお立ちよりいただきたい体験型の展示室「日本美術のとびら」が、東京国立博物館(トーハク)の本館にオープンしました!「みる」「たのしむ」「かんじる」という3つの切り口で、日本美術の流れを直感的に楽しみ、文化財を身近に感じていただける体験展示スペースです。
〈日本美術のデジタル年表〉
トーハクにお越しいただくと、正門を入って正面に見える建物が本館(日本ギャラリー)です。
「日本美術のとびら」は、この本館のエントランスを入ってすぐ。大階段の右側にある展示室内でお楽しみいただけます。(余談ですが、本館大階段はドラマのロケでも使われたことがあるので、「観たことがある!」という方も多いのではないでしょうか。)
【コーナー1:みる〈日本文化紹介映像〉】
展示室内で最初に皆様をお迎えするのは、日本文化紹介映像「A GLIDE ON THE GREAT WAVE ~Experience Japanese Culture at TNM~」(約8分)です。
軽やかなリズムに乗って、浮世絵や工芸品、屏風や掛け軸、そして埴輪など、トーハクの名品が現代の街の様子と重なりつつ登場します。
梅、桜、夕立、花火、秋草、そして雪景色―。
四季折々の季節感あふれる情景、日本の風俗や伝統行事。
北斎や広重が描き出す江戸の情景に重なるように現れては消えてゆく現代の街並み。
一見するとバラバラで異なる世界が、時空を超えてシンクロし、テンポよく重なりながらつながって、現代に生きる私たちの美意識のDNAをくすぐります。
8分間は長いかなと思われるかもしれませんが、実際に観てみるとあっという間です。
日本文化紹介映像「A GLIDE ON THE GREAT WAVE ~Experience Japanese Culture at TNM~」
トーハクが所蔵する41件の文化財がスピード感あふれる映像で紹介されていく。
映像は、ぶんかつYouTubeチャンネルでもご覧いただけます。
▷日本文化紹介映像 A GLIDE ON THE GREAT WAVE
【コーナー2:たのしむ〈日本美術のデジタル年表〉】
最初の映像の余韻を感じつつ、展示室奥へと進んでみましょう。
真っ先に目を引くのは左壁面の幅14メートルの巨大スクリーン。
ここに、およそ1万2000年前の縄文時代から19世紀の江戸時代までの日本の美の流れを紹介するインタラクティブな「日本美術のデジタル年表」(コンテンツ制作:凸版印刷株式会社)が映し出されます。
30分に1回流れるオープニングムービー(約2分)では、1万2000年前からスタートした日本美術の歴史が、スピード感をもって時代を下っていきます。年号を表す数字と、時代を象徴するグラフィックによって、文化財とそれが作られた時代や場所、当時の人々の暮らしが脳内で結びついていきます。
〈日本美術のデジタル年表〉オープニングムービー
体験モード画面に切り替わったら、床の足跡マークにご注目!
この「わくわくポイント」に立ち、画面に出たポップアップの指示に従い手を動かしてみます。
会場内に16か所ある「わくわくポイント」。
QRコードを読み取れば、展示室からColbase(コルベース/国立博物館所蔵品統合検索システム)の作品詳細情報につながります。
「わくわくポイント」では、その前に立った人の手の動きで、文化財を回転させたり、拡大して細部を見たりなど、文化財の見どころを、インタラクティブに楽しむことができます。
インタラクティブコンテンツを体験中の筆者。
土偶を回転させたり、ルーペを動かしたりして文化財の細部を観ることができます。
「日本美術のデジタル年表」で体験できる文化財は全部で16件。
およそ12万件のトーハク蔵文化財から、各分野の研究員が監修した16件の「トーハクの顔」が何なのかも気になりますよね。ぜひ展示室でチェックしてみてください。
【コーナー3:かんじる〈高精細複製品〉】
デジタル年表の向い側に目を向ければ、圧倒的な存在感の「風神雷神図屏風・夏秋草図屏風」、そして「孔雀明王像」。「えっ?こんな立派な作品、ケース内に展示していなくてよいの?」と驚いてしまうかもしれません。実はこれは、最新のデジタル技術と伝統的な職人の技を用いて制作した高精細の複製品。文化財活用センター〈ぶんかつ〉とキヤノン株式会社との共同研究プロジェクトにより、制作・活用を行なっているものです。
左:「風神雷神図屏風」(複製)、右:「夏秋草図屏風」(複製) (制作:キヤノン株式会社)
「孔雀明王像」(複製)(制作・寄贈:綴プロジェクト [主催:京都文化協会/共催:キヤノン株式会社] )
原品は、作品保護のため展示日数が限られ、展示はもちろんガラスケース内。至近距離での鑑賞は叶いません。しかし、この高精細複製ならば、ガラス越しではなく、数センチというところまで顔を近づけて細部を鑑賞し、写真を撮影することも可能です。
高精細複製品には絵師たちの筆の運び、繊細な截金文様や箔の輝きまで、しっかりと再現されています。優しい光に照らされて、室内に屏風を置いて眺めているような、当時の空気感が伝わって来ます。
また、「風神雷神図屏風・夏秋草図屏風」の原品は、現在は作品保護のためにそれぞれ一双の屏風に改装されていますが、もともとは表裏一体の屏風でした。「風神雷神図」は俵屋宗達の「風神雷神図」を尾形光琳が模写したものとされ、およそ100年後、その屏風の裏面の絵として酒井抱一が「夏秋草図」を描きました。この元来の姿で鑑賞できるのは複製品だからこそです。「夏秋草図」を描き終えたときの抱一の視線や心持ちを感じながら、じっくりと屏風の両面を眺めてみるのも一興です。
日本の屏風は古来、部屋を区切ったり、目隠しとして使ったり、掛け軸は季節ごとに掛け替えて、床の間を飾るために用いた調度でした。この展示室では、ガラスケースの向こうの、手のとどかない遠い存在の美術品としてではなく、身近に置いて眺めて楽しむイメージで屏風や掛け軸との対話を楽しんでいただければと思います。
「みる」「たのしむ」「かんじる」を満喫できる体験型展示コーナー「日本美術のとびら」、いかがでしたでしょうか?
屏風は3か月ごとに展示替えも行ないます。季節ごとに「日本美術のとびら」を覗いてみてくださいね。
日本美術のとびら
会場:東京国立博物館 本館特別3室 (東京都台東区上野公園13-9)
開館時間:9:30~17:00 (入館は閉館の30分前まで)
※特別展の開館時間は、別途ご確認ください。
休館日:月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日に休館)
12月14日(火)、年末年始(2021年12月26日(日)~2022年1月1日(土・祝))、2022年1月4日(火)。その他臨時休館あり。
観覧料金:(総合文化展)一般1,000円、大学生500円、高校生以下無料
※総合文化展観覧料または開催中の特別展観覧料(観覧当日に限る)でご覧いただけます。
※入館にはオンラインによる事前予約(日時指定券)が必要です。
詳細はトーハクウェブサイトをご確認ください。
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- 2021年06月24日 (木)