日本の建築史を辿る展覧会、東北歴史博物館で開催中!
秋の旅行シーズン到来。お寺や神社へのお出かけを計画されている方も多いのではないでしょうか。
このブログでは、寺社仏閣を中心に日本の建築史を辿る展覧会「伝わるかたち/伝えるわざ-伝達と変容の日本建築」 (東北歴史博物館、~11/23まで)をご紹介いたします。
▷「伝わるかたち/伝えるわざ-伝達と変容の日本建築」の開催概要をみる
本展は令和2年度東京国立博物館貸与促進事業のひとつで、トーハクから建築模型や絵図など16件の文化財をお貸し出ししています。貸与促進事業では、文化財活用センターが作品の輸送料、保険料を負担しています。
国府多賀城駅のホームから東北歴史博物館が見えます。
東北歴史博物館はとてもアクセスが良く、仙台駅から電車で約15分の国府多賀城駅に隣接。東京からの日帰りも十分可能で、仙台観光との組み合わせもおススメです。
この度は特別に、展覧会担当者の東北歴史博物館 技師・西松秀記さんより本展の見どころをご案内いただきました。
展覧会担当者の西松秀記さん。「法隆寺五重塔模型」(東京国立博物館蔵)前にて。
「建築、というと身構えてしまう方も多いかもしれませんが、この展覧会では建築がもつ多様なかたちを、模型や絵図などを通してさまざまなスケールでご紹介しています。
展覧会を通じて、皆さまの身近にある建物、例えば近所の神社の建物にも、昔から伝えられてきたかたちや技術が引き継がれていることを実感していただきたいです」と展覧会の趣旨を語ってくださった西松さん。本展の構想に3年の歳月を要したとのこと。
展示会場には飛鳥時代・7世紀の「山田寺跡出土建築部材」(重要文化財、奈良文化財研究所蔵)や、伊達政宗(1567~1636)が再興した宮城・瑞巌寺の障壁画、さらには江戸時代の絵図や近代に制作された建築模型などがならび、各時代の建築を構成するさまざまな情報がどのように伝わっていったのかを展望することができます。
例えばこちら。大きく反った軒が特徴的な東大寺鐘楼の1/10縮尺模型。
「東大寺鐘楼模型」昭和41年(1966)東京国立博物館蔵
東大寺鐘楼は、鎌倉時代に中国の影響を受け、日本で独自に発展した「大仏様(天竺様)」と「禅宗様(唐様)」の様式が折衷していることで知られています。このかたちがいかに特異であったのか。このコーナーに展示されている「東大寺南大門模型」(奈良・東大寺蔵)や「當麻寺金堂模型」(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館蔵)などを併せてご覧いただくことで、屋根を支える組物の変遷や大仏様の取捨選択の過程が一望できます。
ちなみに、「東大寺鐘楼模型」には、実際に鋳造された鐘が取り付けられており、打てば美しい音色が響きます。もちろん展示室で鳴らすことはできませんが、ご観覧の際はぜひ、鐘にもご注目ください。
「伝わるかたち/伝えるわざ」展示会場風景
展示会場でひときわ目を引くのはこちら。「法隆寺五重塔模型」です。
「法隆寺五重塔模型」昭和7年(1932)東京国立博物館蔵
法隆寺の昭和大修理を指揮した棟梁 西岡常一(1908~1995)によって制作された、法隆寺五重塔の1/10縮尺模型。高さは3メートルを超え、その存在感に圧倒されます。
「法隆寺五重塔模型」は高さのみならず、その初層(1階)にも見どころが詰まっています。
「法隆寺五重塔模型」初層の扉からのぞく塔本塑像の模造
目を凝らすと……、釈迦に関する説話をかたどった法隆寺塔本塑像の緻密な模造が見えてきます。細部まで丁寧につくり込まれた「法隆寺五重塔模型」を会場でご堪能ください。
「法隆寺五重塔模型」は、「層塔―層塔建築の系譜」のコーナーの冒頭に展示されています。「薬師寺三層裳階付大塔雛形」(明治33年、東京藝術大学蔵)や「江戸城本丸天守地割」(江戸時代、東北大学附属図書館蔵)と時代を追ってご覧いただくことで、上下の層を一体化して設計する層塔型(そうとうがた)の構法が、高層建築である天守にも応用されていたことがわかります。
なお、展示室内では「法隆寺五重塔模型」のみ写真撮影が可能です。作品をじっくりご覧になったあとは、ぜひお気に入りの角度から撮影してみてください。
「展覧会に興味はあるけど、会場まで行けない…」、とお悩みの方に朗報です!
「伝わるかたち/伝えるわざ」展の図録は、通販販売でもご注文できます(税込1,430円、送料別途)。
展覧会図録「伝わるかたち/伝えるわざ」表紙
図版とともに各作品の詳細な解説を掲載。巻末で建築部材の名称がわかりやすく図解されています。貸与促進・曽田はこの秋、本書片手に寺社巡りを計画中です。
展覧会図録「伝わるかたち/伝えるわざ」の一部をご紹介
図録の通信販売お申込みは、東北歴史博物館ミュージアムショップ [https://www.thm.pref.miyagi.jp/issue/store/#blockHwtoOreder] から。
みなさまぜひ、この秋は東北歴史博物館の「伝わるかたち/伝えるわざ―伝達と変容の日本建築」展で、日本の建築史を辿る旅にお出かけください。
「伝わるかたち/伝えるわざ―伝達と変容の日本建築」
2020年9月26日(土)~2020年11月23日(月)
東北歴史博物館(〒985-0862 宮城県多賀城市高崎1-22-1)
公式サイト https://www.thm.pref.miyagi.jp/exhibition/3951/
公式Twitter https://twitter.com/tohoku_h_museum
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- 2020年10月27日 (火)