8Kなら会える!微笑みの聖徳太子に。
東京国立博物館(トーハク)の法隆寺宝物館では現在、国宝「聖徳太子絵伝」の鑑賞のみならず、8Kという先端技術をつかったアプリケーションもあわせて体験できる展示を開催しています。
トーハクの正門から左奥に進むとあらわれる法隆寺宝物館。日中はもちろん、夜の姿も美しい建物です。
国宝「聖徳太子絵伝」。縦約2m、横約1.5mという大きな画面は全部で10面あり、その大パノラマに、聖徳太子の生涯を彩るさまざまなエピソードが極めて細かく描かれています。この絵が、数ある聖徳太子絵伝のなかでも現存最古にして最高傑作とされることを、よくご存知の方もいらっしゃることでしょう。しかしこの作品の前に立ったとき、この絵をあまり知らない方も、知っている方でしたらなおさら「もっとよく見えたらいいのになぁ」「どこに何が描いてあるのかわからない」と思われるのではないでしょうか。
国宝 聖徳太子絵伝/秦致貞 筆/平安時代・延久元年(1069)/綾本着色/ 10 面/東京国立博物館
そんなお悩みを解決する魔法の道具ならぬ、鑑賞ツールがなんと昨年開発されました。昨年末に、8Kの実用放送が始まったというニュースが話題になりましたが、そもそも8Kって何?!と思われる方も多いと思います。現在ご家庭のテレビで主流のフルハイビジョンといわれる規格が2K、解像度であらわすとその16倍の超高解像度にあたるのが8Kです。その超高解像度のテレビ規格である8Kモニターに、国宝「聖徳太子絵伝」の高精細画像を自在に映し出すことのできる鑑賞ツールが〈8Kアートビューアー〉です。
国宝「聖徳太子絵伝」を、70インチの大型モニターに高精細で映し出す〈8Kアートビューアー〉
なんだか通販番組みたいな話の流れのままに、ここからは個人的におススメの鑑賞ルートをご紹介します。まずは法隆寺宝物館の2階で、国宝「聖徳太子絵伝」とじっくり向き合って鑑賞してみてください。
法隆寺宝物館 2階 第6室にて展示中の国宝「聖徳太子絵伝」(~11月24日まで)
この絵はおよそ千年前の平安時代、摂津国の絵師、秦致貞(はたのちてい)によって描かれました。綾(あや)という模様のある絹織物に絵が描かれているのですが、だいぶ損傷や剥落が進んでいます。当然保存の観点から展示の機会や条件は限られ、今回、法隆寺宝物館では約3年半ぶりのお目見えです。こうしておよそ千年もの時を、大切に守り伝えられてきたからこそ、いま目の前にあるという事実に胸が震えます。しかし目を凝らして見ているうち、だんだん、絵にもっと寄って見てみたい、だれか解説してくれないかしら、そのように感じるかもしれません。そこで展示室を出て、階下の資料室へ足を運んでみましょう。
〈8Kアートビューアー〉が体験できる特設コーナー
法隆寺宝物館の資料室には、大型8Kモニターをつかった鑑賞ツール〈8Kアートビューアー〉が体験できる特設コーナーを設けています。〈8Kアートビューアー〉では、タブレットを使った自身の操作で、国宝「聖徳太子絵伝」の見たい部分を、全図からたどって原寸よりもさらに拡大してなお美しく表示することができます。また、聖徳太子の生涯の物語で特に有名な場面を表したイラストから、該当する場面にたどりつくこともできます。この絵に描かれている聖徳太子にまつわる57ものエピソードについて、それがどこにあるか位置関係がわかるだけでなく、「解説をみる」機能で絵をみながら解説を読むこともできるのです。さらに同じコーナーでは、国宝「聖徳太子絵伝」をはじめてご鑑賞いただく方でもその魅力がわかりやすく伝わるよう、見どころをぎゅっと凝縮したダイジェスト8K映像もお楽しみいただけます。
今年は英語版も公開。聖徳太子の生涯の事績について、エピソードの内容と鑑賞ガイドでくわしく解説。
まるで絵に近づいて、虫眼鏡でのぞいているかのような驚きの鑑賞体験を。
画中では約3cmの大きさで描かれている聖徳太子。〈8Kアートビューアー〉では、約30㎝まで拡大することが可能です。
そして、ここで得た知識や驚きの感情とともに、ぜひもう一度、国宝「聖徳太子絵伝」の前に立ってみてください。はじめに見た時とは一味も二味も違う鑑賞体験ができるのではないでしょうか。百聞は一見にしかず、ですよ!
さいごに、美術館博物館関係の方へ。
国宝「聖徳太子絵伝」〈8Kアートビューアー〉のような、文化財活用センターが開発したデジタルコンテンツをお貸し出ししています。関連の展示への活用など、ぜひご検討ください。
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- 2019年11月14日 (木)