ぶんかつブログ

文化財をデリバリー ぶんかつアウトリーチプログラム

みなさんの住んでいる地域には、どんなミュージアムや文化財がありますか?
そもそも、文化財ってどんなものでしょう?
今までにほんものの文化財をみたことはありますか?

文化財活用センター〈ぶんかつ〉企画担当では、“あらゆる地域で、子どもから大人まですべての人びとが、日本の文化財に親しみ、身近に感じることができる”ように、「文化財をデリバリー ぶんかつアウトリーチプログラム」を開発しています*

〈ぶんかつ〉は、ほんものと見分けるのが難しいくらいの高精細の文化財複製と、文化財への興味や理解を深めるための教育プログラムをセットにして貸し出しを行なっています。
紙や木でできているほんものの文化財は痛みやすいので、展示するときには作品を保護するためのケースに入れて、少し離れた場所からでないとみることができません。しかし、複製であれば、鑑賞する人の目線と同じ高さで、作品と向き合うことができます。そして、「文化財をデリバリー」という言葉の通り、学校の教室や公共施設の会議室、ホール、講堂などに持っていき、身近な場所で楽しむことができるのです。

プログラムのお貸し出しは、小学校・中学校・高等学校などの教育機関はもちろんのこと、社会教育関係施設、青少年教育施設、ミュージアムなどを対象としており、様々な学習の場面で活用できます。文化財複製を輸送できる場所であれば、全国のどんな地域でもご利用いただけます。

初年度となる2019年は3つのプログラムを用意しました。
いずれも屏風をもちいたプログラムです。作品をみること、描かれた世界を想像することを楽しんでもらうために、鑑賞の時間だけではなく、ワークショップも盛り込みました。プログラム内容を簡単にご紹介します。

1.自分だけの松林図屏風をつくってみよう

まずは国宝「松林図屏風」(原本:東京国立博物館蔵)の高精細複製をじっくり鑑賞し、水墨の表現や描かれた情景を味わいます。鑑賞の後はオリジナルのワークシートに松のスタンプを押して、自分だけのミニ松林図屏風を作ります。全体の半分を鑑賞、残りの半分を制作の時間としています。スタンプを押すだけでなく、墨で松を描いてみたり、クレヨンで色をつけてみたりなど、ご希望に合わせた画材で制作することができます。

 


  いろいろな「自分だけの松林図屏風」ができました!

2.屏風体験!松林図屏風をプロデュース

国宝「松林図屏風」の高精細複製の鑑賞を通じて作品のすてきなところや特長を見つけ、それをほかの人に楽しんでもらうための置き方を考えるというプログラムです。全体の半分を鑑賞、半分をグループワークもしくは個人ワークの時間としています。
6月にこのプログラムを実施した小学校では、私たちの想像をはるかに超えたすてきな置き方をたくさん提案してくれました。

 


  ミニチュア屏風を使って、すてきにみえる置き方を考えます。

3.絵で読む平家物語

「平家物語 一の谷・屋島合戦図屏風」(原本:大英博物館蔵)の高精細複製を使用します。このプログラムは中学生以上を対象として考案しました。文化財について、日本美術について、古典「平家物語」についてなど、さまざまな切り口で楽しむことができる作品ですので、美術の授業に、古典の授業に、日本史の授業に、といったように、教科に合わせたいくつかの鑑賞パターンを準備しました。また、グループワークなどにも対応できるようにしています。

 

これらはすべて、複製屏風・ワークショップに使用するキット一式・講師用の原稿をセットにしてお貸し出ししていますので、学校の先生方や学芸員のみなさんが講師となってプログラムを実施することができます。〈ぶんかつ〉からの講師派遣も可能です。また、ご要望に合わせて内容のアレンジも行ないます。


  キット一式に含まれる照明を使用すると、ロウソクのような光の中で屏風を鑑賞することができます。

普段の授業ではなかなかミュージアムに出かける余裕がないという教育機関のみなさんや、教育プログラムやワークショップを実施したいとお考えのミュージアムのみなさんに、ぜひご利用いただきたいプログラムです。「ぶんかつアウトリーチプログラム」が、みなさんの地域にある文化財について知りたい、あるいはミュージアムに足を運んでみたいと思うきっかけとなれば、これほどうれしいことはありません。

※おかげさまで2019年度実施分はすでに多数のお申し込みをいただいています。
来年度実施のプログラムやお申し込み方法については、2020年1月以降にウェブサイト等で公開予定です。

申し込み方法の詳細はこちら

これまでの実施実績はこちら

 

*アウトリーチってなに?
「アウトリーチ(outreach)」とは「手を差し伸べる(reach out)」が名詞化した言葉で、1950~60年代のアメリカで誕生しました。社会福祉の分野ではじめに使用された言葉です。この分野では、援助を必要とする利用者からの自発的な援助要請がない場合や、その必要性が自覚されていない場合に、援助機関から積極的な介入を行い、訪問や出張によって専門的援助を持続させる言葉として使われています。また、相談や情報収集などによる「ケースの発見」の重要な要素にもなっています。近年は科学技術分野、社会学、心理学、教育学、文化人類学など、さまざまな領域でアウトリーチの手法が取り入れられています。

カテゴリ: 複製の活用