待ちに待った里帰り!「伊予の経塚名品展」
こんにちは。奈良国立博物館の中川です。この度、文化財活用センター〈ぶんかつ〉の「国立文化財機構所蔵品貸与促進事業」の一環として、愛媛県歴史文化博物館(愛媛県西予市)の令和7年度特別展「伊予の経塚名品展─堂ヶ谷経塚と松渓経塚─」に当館の文化財をお貸し出ししました。
本展は、文化財活用センターが作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館・東京文化財研究所・奈良文化財研究所が所蔵する各地域ゆかりの文化財を貸し出す「国立文化財機構所蔵品貸与促進事業」による、令和7年度の展覧会です。
▷貸与促進事業とは
一体どのように展示して頂いているのだろうと、開幕間もない頃に展示を見に駆けつけましたので、レポートさせて頂きます!

愛媛県歴史文化博物館の外観
山の上にある博物館に到着すると、“はに坊”というマスコットキャラクターがほのぼのとお出迎え。今回は一人での訪問でしたので、顔をはめて記念撮影することができず残念でした。

はに坊は寂しがり屋だそうです
さて、特別展「伊予の経塚名品展」は、愛媛県内各地の経塚出土の名品や埋納された仏教遺物を紹介する内容の展覧会。展示品約100点の内15点が、今回、奈良国立博物館からの里帰り作品です。そのうちの一部はこれまでにも愛媛へ里帰りしたことがあったのですが、これ程まとまった点数の里帰りとなると初!「わが子たち」の活躍を楽しみに、会場へ入りました。
ちなみに、会場入口の展覧会タイトルが迫力のあるもので、大変見事です。これは地元の伊予高校書道部の生徒さんが書いたとのことで、地域連携が素晴らしいですね。展覧会の雰囲気にもぴったりです。

経塚に込められた祈りを体現するような力強い筆運び
展覧会は4章構成となっています。
第1章は「経を埋める─経塚とは─」。一般の方にはちょっとマニアックかもしれない経塚の世界を、丁寧に紹介する導入となっています。最初に目に入るのは、愛媛県内最古の紀年銘(久安6年[1150])を持つ堂ヶ谷経塚出土経筒(どうがたにきょうづかしゅつどきょうづつ)。令和3年に愛媛県歴史文化博物館の所蔵品となり、保存処理も終えての初公開だそうです。とてもスピーディー!。

鍍金もよく見えました
この展覧会、各所に工夫が凝らされているのですが、学芸員がつい無意識に使ってしまいがちな専門用語を、かの“はに坊”が一言でかみ砕いた解説をしてくれています。このようなサポートがあれば、楽しく見進めることができますね。

はに坊は非常に物知り!
第2章「平安時代の伊予の経塚」では、7遺跡分の経塚資料がズラリ!全国を見渡してもこれほど経塚出土資料ばかりが並ぶ展覧会はなかなかないので、圧巻です。
なお、会場にちりばめられたパネル類も、それぞれのかゆいところに手が届く一枚となっており、必見です。青白磁合子(せいはくじごうす)の身の内部に表された蓮の意匠と実際の蓮の比較パネルには、思わず大きく頷いてしまいました!

蓮形合子の展示パネル
第3章「塔を埋める─仏舎利信仰─」では、近年の発掘調査で出土した極小サイズの金銅製舎利容器(西条市宮之内遺跡)や、愛媛県内では珍しく100点以上もまとまって出土した泥塔(正法寺)といった、多彩な塔の信仰に触れることができます。塔って地上にそびえるものだけでなく、地中に埋めて祈りを捧げるものでもあったことがよくわかります。

超ミニサイズの塔形舎利容器(左は複製)
第4章「鎌倉時代の伊予の経塚」は、私がとりわけ楽しみにしていた章です。
本展の副題にも掲げられた松渓(まつたに)経塚出土品がここに一堂に会しているからです。松渓経塚出土品(経筒、経巻、銭貨)は昭和32年(1957)の発見以降、文化財保護委員会(文化庁の前身)を経て奈良国立博物館の所蔵となりました。近年、地元の方々から「いつか里帰り展示を」との声をお寄せいただいていたのですが、そうした思いが予想以上に早い形で結実したことをとてもうれしく思いました。さらに、後の調査で出土し、地元で保管されている土器なども一緒に並べられており、69年ぶりの「再会」が叶ったことにも感無量でした。

再会を果たした出土品たち
本展覧会を拝見して、最も感銘を受けたのは、経塚出土品を並べるだけでなく、出土地の現在の様子や発掘調査時の写真が合わせてパネルで紹介されていたことです。
どのように地中に埋納されていたのか、どのように発見されたのかがよく伝わり、臨場感たっぷりに出土品を眺めることができます。まさに地元開催ならでは。会場で観覧中のご夫婦が、写真を見ながら「これはあそこの近くやな」と知っている場所と結びつけながら熱心にご覧になっているのが印象的でした。会場のボランティアさん曰く、「パネルの情報も含まれた図録もよく売れていますよ」とのこと。

松渓経塚発掘調査風景のパネル
展覧会を見に行った日、ちょうど館内でシンポジウム「伊予と四国の経塚を考える」が開催されていました。帰りの飛行機の時間を睨みながら少し拝聴しましたが、展覧会会場で見かけた方もチラホラいらして、経塚に対する関心の高まりを実感しました。

シンポジウム会場
特別展「伊予の経塚名品展」の会期は2026年2月14日(土)から4月5日(日)まで。
ぜひこの機会に愛媛県歴史文化博物館に足をお運び頂き、特別展「伊予の経塚名品展」に加えて、充実した常設展も是非ご覧ください!一日楽しめますよ!

チラシ画像
特別展「伊予の経塚名品展─堂ヶ谷経塚と松渓経塚─」
会期 2026年2月14日(土)~2026年4月5日(日)
会場 愛媛県歴史文化博物館(愛媛県西予市宇和町卯之町4-11-2)
開館時間 9時から17時30分まで(最終入館17時)
休館日 毎週月曜日(祝日及び振替休日に当たる場合は、その翌日) ※ただし毎月第一月曜日は開館、翌火曜日が休館
観覧料 大人(高校生以上) 550円(450円)、65歳以上350円(300円)、小・中学生350円(300円)
※( )内は20名以上の団体料金
※ほかにお得な常設・特別展共通観覧券もあります。
愛媛県歴史文化博物館・公式サイト https://www.i-rekihaku.jp/
愛媛県歴史文化博物館・X https://x.com/ehime_rekihaku
愛媛県歴史文化博物館・Instagram https://www.instagram.com/ehime_rekihaku/?hl=ja
はに坊・Instagram https://www.instagram.com/hanibou_rekihaku/?hl=ja
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- 2026年03月12日 (木)