ぶんかつブログ

33年ぶりの里帰り 雪村の名品が一堂に

「雪村」という画家をご存じでしょうか?
「ゆきむら」ではなくて「せっそん」。「雪舟」なら知ってるけど…という方も多いかもしれませんが、実は知る人ぞ知る、「奇想の画家」の元祖なのです。そんな雪村の魅力がぎゅっと詰まった展覧会が、茨城県立歴史館で開催されています。


茨城県立歴史館外観

特別展「雪村-常陸に生まれし遊歴の画僧-」は、同館の開館50周年を記念して開催されるもの。現在の茨城県に生まれた雪村は、戦国時代に活躍した画僧(絵を描く禅僧)。会津や小田原、鎌倉などを往来しながら、水墨画作品を中心にたくさんの傑作を生み出しました。
茨城県内で雪村の展覧会が開催されるのはじつに33年ぶりのこと。生まれ故郷の地に雪村の名品が一堂に集う絶好の機会です。なお、この展覧会は「令和6年度国立博物館収蔵品貸与促進事業」に採択され、東京国立博物館と京都国立博物館から合わせて8件の作品が貸し出されています。


特別展「雪村-常陸に生まれし遊歴の画僧-」チラシ表面

今回の展覧会では、エキセントリックな雪村の画風とリンクするかのように、広報ビジュアルも大変ポップ。大きな袋のうえでダンシングする布袋さんがクローズアップされています。板橋区立美術館が所蔵するこちらの《布袋図》も3月11日(火)の後期展示からお目見え。ぜひ会場内で布袋さんと「せっしょん」しちゃってください。

蝦蟇鉄拐図 雪村周継筆 室町時代・16世紀 2幅 東京国立博物館 展示期間:~4月6日(日 )

 

個人的なイチオシは、東京国立博物館所蔵の《蝦蟇鉄拐図(がまてっかいず)》。画面には、何やら怪しげな二人の人物が描かれています。
向かって右側は鉄拐(てっかい)仙人。空に向かって勢いよく吹き出した息をよく見ると、その先には小さな人影が描かれています。これは自分の魂。鉄拐はこのように魂を遠くへ飛ばすことができたのでした。


蝦蟇鉄拐図(部分)

左に描かれるのは蝦蟇(がま)仙人。三本足のヒキガエルを従えて妖術を使ったといいますが、この絵ではまるでモグラのよう。 一本足で懸命に立ち上がる姿に声援を送る蝦蟇仙人の表情は、何とも嬉しそうです。手品のように首がストンと落ちた不思議な表現も、雪村ならではといえます。


蝦蟇鉄拐図(部分)

横幅2メートルを超える巨大な画面は迫力満点です。 署名や印章の形式から、雪村が福島県三春を拠点に活躍した、70~80歳代の作と推定できる点も貴重といえるでしょう。雪村画の真骨頂を示す逸品で、展覧会場でもひときわ存在感を放っています(※会場内は第7章の一部を除き 撮影禁止です)。


特別展「雪村-常陸に生まれし遊歴の画僧-」展示会場

人気漫画雑誌「コロコロコミック」とコラボした企画も注目です。展覧会にちなんだクイズラリーや写真スポットのほか、真っ赤な髪のちょっとパンクな雪村が大活躍する動画も必見です。


雪村クイズラリー(茨城県立歴史館×コロコロコミック)


コロコロコミックとのコラボ動画(https://youtu.be/zSOjjS20OvQ
「【雪舟に並ぶ⁉】謎の天才絵師・雪村に迫る⋯!【アニメ】」

本展ではほかにも、絵の細部まで高精細で見ることができる「雪村デジタルコレクション」の設置や、さまざまな関連イベント、割引キャンペーンなども目白押しです。250ページの充実した内容の展覧会図録も1,500円(税込)という破格な安さ。ぜひ会場で、雪村の奇天烈な魅力にどっぷりと浸っていただければ幸いです。

開館50周年記念 春の特別展 雪村―常陸に生まれし遊歴の画僧―

会期 2025年2月15日(土) ~ 2025年4月6日(日)

会場 茨城県立歴史館 (茨城県水戸市緑町2-1-15)

開館時間 9:30~17:00(入館は16:30まで)

休館日 月曜日(祝日の場合はその翌日)

観覧料金 一般690円(550円) 満70歳以上350円(280円)
・()内は団体料金
・小・中・高校生・未就学児は無料
・身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、指定難病特定医療費受給者証をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
・満70歳以上の方入館無料日:2月27日(木)

茨城県立歴史館・公式サイトhttps://rekishikan-ibk.jp/

茨城県立歴史館・Xhttps://x.com/Ibaraki_rekishi

茨城県立歴史館・Instagramhttps://www.instagram.com/ibareki.official/

 

カテゴリ: 文化財の貸与