三河の国は、銅鐸の国!
三河こそ銅鐸の国、その堂々たる名の通り、豪華な展覧会が愛知県の豊橋市美術博物館で開催中です。
豊橋市はしばしばカンガルーの形に例えられる愛知県の南東部、ちょうど脚のかかとのあたりに位置し、北は信州長野につながる山々に、南は暖かな海で囲まれた自然豊かな地域です。また、古くは吉田宿・二川(ふたがわ)宿などの東海道の宿場町がにぎわう交通の要衝でした。
今からちょうど100年前、豊橋市と接する現在の豊川市伊奈町で、当時の学者たちを驚かせる大発見がありました。本展覧会のポスターにもなっている伊奈銅鐸3点の出土です。発見の報告を受け、数多くの考古学者がこの地を訪れたことが記録されています。
伊奈出土の銅鐸 (J-9984,9985,9986 弥生時代(後期) 愛知県豊川市伊奈町出土)
銅鐸は弥生時代に用いられたお祭りの道具。日本列島の外部から輸入した貴重な原材料で、当時の先端技術であった鋳物を作る技術(鋳造技術)を駆使して作られました。
伊奈でみつかった3つの銅鐸は、吊り手部分である鈕に耳状の飾りが無く、格子状に配される斜格子文(しゃこうしもん)の中央が太い線で飾られることを特徴とする三遠式(さんえんしき)銅鐸です。その名は、これらの特徴をもつ銅鐸が三河国(かつての愛知県東部)と遠江国(かつての静岡県西部)から一字ずつをとった三遠地域に分布することに由来します。
今回、伊奈銅鐸発見100周年を記念し、豊橋市美術博物館で開催中の展覧会に、文化財活用センター〈ぶんかつ〉の令和6年度国立博物館収蔵品貸与促進事業の一環として、東京国立博物館・奈良国立博物館より伊奈銅鐸をはじめとした三遠地域出土の銅鐸をお貸し出ししています。
▷〈ぶんかつ〉の貸与促進事業の詳細はこちら
日本有数の銅鐸密集地域であった弥生時代の三遠地域、その実態に迫る本展覧会の見どころを3つに絞ってご紹介いたします。
本展覧会で第1の見どころは何といってもその銅鐸の数々、破片も含めると40点近い銅鐸が展示されています。
三遠式銅鐸は三角形や渦巻、格子など細線(さいせん)によるさまざまな文様で飾られ、なかには鹿や水鳥の姿が描かれるものもあります。
銅鐸 (J-36666 弥生時代(後期) 静岡県浜松市南区芳川町出土)
銅鐸 (J-6731 弥生時代(後期) 静岡県浜松市北区細江町中川(悪ヶ谷)出土)
三遠式銅鐸とほぼ同時期に近畿地方で生産され、こちらは鈕に大きな耳状の飾りがつくことを特徴とする近畿式銅鐸にも注目です。三遠地域では近畿式銅鐸も数多く発見されており、弥生時代社会が広い範囲に及ぶ交流関係を有していたことが想起されます。
銅鐸(J-36664 弥生時代(後期) 静岡県浜松市北区三ヶ日町釣(分寸)出土)
第2の見どころは、銅鐸だけではないさまざまな弥生時代の考古資料の展示です。三遠地域各地の遺跡で出土した土器が展示されるほか、石や骨などで作られた狩りや農耕、祈りの道具の数々が展示され、当時の暮らしを知ることが出来ます。
さまざまな器の形がある弥生土器、盛り付けたり、蓄えたり、調理したりと使い方を想像しながら観察すると面白いですね!
最後の見どころはマニア向け、銅鐸に関わる史料の展示です。本展覧会では考古資料だけでなく、銅鐸の発見に関する絵図や文献も、その貴重な原本を展示しています。現代の私たち同様に、江戸時代の人々にとっても銅鐸はミステリアスで、興味がそそられるものであったのかもしれません。
豊橋市中央図書館所蔵の『山家樵談(さんかしょうだん)』の一ページ、銅鐸の形と文様をよく捉えています。
以上、簡単ではありましたが、本展覧会の見どころをご紹介いたしました。豊橋市美術博物館は常設展示も充実、銅鐸の国の前史にあたる縄文時代の様子や、穂の国(ほのくに)と呼ばれるようになる古墳時代、三河国の交通の要衝として栄える飛鳥・奈良時代以降の歴史もご覧いただけます。
縄文時代のくらしの道具を展示しています。よく見ると小さな人々の模型が・・・
豊橋では、縄文時代の人々が海岸で干し貝を作っていた跡と考えられる貝塚が見つかっています。展示の要所にちりばめられた、当時の様子をイメージできるジオラマにもご注目!
また、常設展示を見た後は、豊橋市内の史跡巡りもお勧めです。
約1万年前の縄文人が暮らしていた痕跡が確認されている国史跡嵩山蛇穴(すせじゃあな)、足腰に自信のある方は、洞窟内を見学してみてください。
国史跡瓜郷(うりごう)遺跡は戦後直後の1947年に発掘調査され、弥生時代の集落が見つかった考古学史上著名な遺跡です。
馬越長火塚(まごしながひづか)古墳は、かつて「穂の国」と呼ばれていたこの地を治めた穂国造(ほのこくぞう)の墓と考えられています。副葬された黄金の馬具は国の重要文化財に指定され、現地では巨石を用いた石室に入ることが出来ます。
特別展「銅鐸の国 -伊奈銅鐸出土100年-」は2025年2月2日(日)まで。本記事で紹介できなかった見どころも盛りだくさんです。
ぜひ、豊橋の史跡・名所巡りともに、銅鐸研究における歴史的発見を記念する展覧会に足を運んでみてください!
銅鐸の国-伊奈銅鐸出土100年-
会期 2024年11月30日(土) ~ 2025年2月2日(日)
会場 豊橋市美術博物館(愛知県豊橋市今橋町3-1(豊橋公園内))
開館時間 9時〜17時(入館は16時30分まで)
休館日 月曜日、12月29日(日)~1月3日(金)、1月14日(火)
※1月13日(月・祝)は開館し翌日休館
観覧料 一般・大学生800円(600円)、小・中・高生400円(200円)
※()内は前売または20名以上の団体料金
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳のいずれかをお持ちの方と引率者は無料
※東三河の小中学生は「ほの国こどもパスポート」の提示により無料
※豊橋市在住の70歳以上の方は割引料金(400円)
豊橋市美術博物館・公式サイトhttps://toyohashi-bihaku.jp/
豊橋市美術博物館・Instagramhttps://www.instagram.com/toyohashi_bihaku/
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- 2024年12月26日 (木)