ぶんかつブログ

空前絶後の大回顧展「PARALLEL MODE:山本芳翠」

日脚もめっきり短くなり、ついに暦の上では冬となりました。

現在、岐阜県美術館では、岐阜出身の近代洋画家・山本芳翠を紹介する「PARALLEL MODE:山本芳翠 -多彩なるヴィジュアル・イメージ-」(~12月8日(日)まで)を開催中です。


岐阜県美術館外観

本展は、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が作品輸送費等を支出し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館が所蔵する各地域ゆかりの文化財を貸し出す「国立博物館収蔵品貸与促進事業」による、令和6年度の展覧会の一つです。
東京国立博物館から、山本芳翠筆「花化粧」をはじめとする6件の絵画作品をお貸し出ししています。

▷PARALLEL MODE:山本芳翠 -多彩なるヴィジュアル・イメージ-の概要を見る

山本芳翠(やまもと・ほうすい 1850~1906)は、フランスに約10年間滞在して本格的な油彩画技法を身に着けたのち、日本で画学校を開設するなど、「日本洋画の素地を築いた」とされる人物です。
のちに日本近代洋画の父ともいわれた黒田清輝(1866~1924)に画家になるよう勧めたというエピソードも知られています。

その画業は、中国の故事を描いた南画から、パリ滞在中の油彩画、水彩による戦争の記録画まで、まさに展覧会タイトルの「多彩なるヴィジュアル・イメージ」の言葉通り、非常に多岐にわたる幅広いものです。

今回、令和6年度国民文化祭(「清流の国ぎふ」文化祭2024)の記念事業として開催されている本展は、日本最多の芳翠作品を収蔵する皇居三の丸尚蔵館の地方展開の一つでもあり、多彩な芳翠の作品が国内外から一堂に会する、約30年ぶりとなる大回顧展です。

確かな調査研究に裏打ちされた、初期から晩年までを網羅したその圧巻のラインナップは、長年芳翠の作品を中心に蒐集と研究を続けてこられた同館だからこそできるもの。
長い間行方不明となっていた作品や、これまで門外不出だった作品、またそれらが一堂に会することでわかった事実など見どころ満載の本展は、今、岐阜県美術館でしか観られない、まさに空前絶後の展覧会です!


会場風景

ここで少しだけ、見どころをご紹介します。まずは作品同士の奇跡の再会です。


花鳥 山本芳翠筆 明治時代・19世紀 カンバス・油彩 東京国立博物館蔵

こちらは、東京国立博物館よりお貸し出ししている「花鳥」。
なんと、この「花鳥」と、現在ウッドワン美術館所蔵の「婦人像」は、もともと1枚の絵であったそうです。
その事実がわかったのは、明治38年(1905)、三越呉服店発行の雑誌に附録としてつけられた、芳翠の油彩画作品を原画とした絵葉書から。


「花鳥」(中央上)と「婦人像」(右)。左下のケース内には実際の絵葉書も展示されています。

会場では、当初の配置を再現した「花鳥」、「婦人像」とともに、手がかりとなった絵葉書が展示されています。これは岐阜県美術館が長年取り組まれてきた地道な調査の成果であり、大回顧展ならではの醍醐味といえます。ぜひ、会場で2作品と絵葉書とを見比べてみてください。


月夜虎 山本芳翠筆 明治時代・19世紀 カンバス・油彩 東京国立博物館蔵

こちらは、同じく東京国立博物館よりお貸し出ししている「月夜虎」。
月明かりを受けて水辺にその姿を現した虎。細かい筆致により描かれた虎の滑らかな毛並みと、キラリと光る目が印象に残る作品です。
会場ではこの作品の隣にも、虎を描いた「猛虎逍遥図」(神戸市立博物館蔵)が展示されています。
しかし、そちらは、大きな目を見開いて日中の山野を歩き回る、どこか愛嬌のある表情の虎が描かれ、「月夜虎」とは雰囲気が全く異なります。
同じ画家、同じモチーフの作品を実際に見比べながら、その違いを味わうことができるのも、大回顧展ならではですね。

ここでご紹介した作品以外にも、重要文化財に指定されてから10周年を迎えた「裸婦」(岐阜県美術館蔵)や現存する《十二支》連作(三菱重工業株式会社長崎造船所蔵)の全展示など、見どころは数え切れません。
芳翠の多彩な画業を存分に堪能できる本展について、担当学芸員の廣江さんは、「とにかく観に来てほしい。今後二度とない機会」と強く語ります。同じく担当学芸員の松岡さんも「本当に、今後実現できない展覧会です」と念を押します。

隣り合う会場では、「PARALLEL MODE:オディロン・ルドン -光の夢、影の輝き-」展も同時開催。こちらも約300点の作品が集う大規模展覧会で、お得な共通券も発売されています。

皆さま、この機会にぜひ岐阜県美術館へ。驚くべき規模の展覧会をお見逃しなく!

PARALLEL MODE:山本芳翠-多彩なるヴィジュアル・イメージ-

会期 2024年9月27日(金)~ 2024年12月8日(日)
前期展示:11月4(月)まで 後期展示:11月6日(水)から

会場 岐阜県美術館(岐阜市宇佐4‐1‐22)

開館時間 10:00~18:00
※10月18日(金)、11月15日(金)は20:00まで開館
※展示室の入場は閉館30分前まで

休館日 毎週月曜日(祝・休日の場合は翌平日)

観覧料 一般:1,200円(1,100円)、大学生:1,000円(900円)
高校生以下無料、( )内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、特定医療費(指定難病)
受給者証の交付を受けている方とその付き添いの方(1名まで)は無料
【山本芳翠展/オディロン・ルドン展共通券】一般:2,000円、大学生:1,600円
※共通券は団体割引なし

岐阜県美術館・公式サイト https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/

岐阜県美術館・Instagram https://www.instagram.com/gifukenbi/

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カテゴリ: 文化財の貸与