ぶんかつブログ

2024年度貸与促進事業による6つの展覧会をご紹介

みなさん、こんにちは。貸与促進担当です。
もうすぐGW!帰省や旅行などの準備をしたり、どこへ行こうか計画をたてたり、わくわくする時期ですね。

さて、リフレッシュに効果的とされるものの一つに森林浴がありますが、「博物館浴」をご存知でしょうか。これは博物館の持つ癒しやリフレッシュ効果を血圧や心理測定で数値化し、健康増進や疾病予防に活用する取り組みで、九州産業大学地域共創学部の尾形泉教授によって2020年度から研究が進められています。その実証実験では、怒り・混乱・うつといった精神状態を示す数値が多くの参加者で低下し、血圧が正常値に近づくという傾向がみられています。

そこでみなさんに、今年2024年度「国立博物館収蔵品貸与促進事業」によって開催される、企画力に優れた魅力あふれる展覧会をご紹介したいと思います。貸与促進事業は、国内各地のミュージアムに対し、東京・京都・奈良・九州の4つの国立博物館が各地域にゆかりのある所蔵品を貸し出し、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が作品輸送費や梱包・開梱、展示・撤収作業費等を支出するものです。

▷貸与促進事業とは

2024年度は、鹿児島・岐阜・福井・愛知・栃木・茨城の6つのミュージアムの展覧会が本事業に採択され、国立博物館が所蔵する各地域にゆかりのある文化財86件のお貸し出しが予定されています。

それではさっそく、開催順に6つの展覧会をご紹介いたします。

1.鹿児島市立美術館
鹿児島市立美術館開館 70 周年記念「没後 100 年 黒田清輝とその時代」 貸与予定件数:43件

会期:2024年7月24日(水)~2024年9月1日(日)

URL: https://www.city.kagoshima.lg.jp/artmuseum/
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貸与促進事業による今年度最初の展覧会は、鹿児島市立美術館の「没後100年 黒田清輝とその時代」展です。

2024年に開館70周年を迎える鹿児島市立美術館では、郷土を代表する作家であると同時に日本近代を代表する作家でもある黒田清輝(1866~1924)の没後100年を記念して、その足跡を多角的に紹介する展覧会を開催します。鹿児島で生まれた黒田は、法律の修学を志して留学したフランスで絵画の道へ転向しました。帰国後、清新な画風で日本の洋画を開拓し、生涯にわたって日本の美術振興に力を注いだその存在は、鹿児島において藤島武二(1867~1943)や和田英作(1874~1959)をはじめとした作家たちの輩出にも影響を及ぼしました。

本展へは、教科書などで目にした方も多いと思いますが、黒田清輝筆「湖畔」(重要文化財)や「読書」をはじめとした東京国立博物館が所蔵する黒田、そして同時代に活躍した画家の作品をあわせ43件をお貸し出し予定です。


重要文化財 湖畔 黒田清輝筆 明治30年(1897) カンバス・油彩 東京国立博物館蔵

2.岐阜県美術館
「清流の国ぎふ」文化祭 2024 PARALLEL MODE:山本芳翠展 貸与予定件数:6件

会期:2024年9月27日(金)~2024年12月8日(日)

URL: https://kenbi.pref.gifu.lg.jp/
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9月27日(金)から開催となるのは、岐阜県美術館の「清流の国ぎふ」文化祭 2024 PARALLEL MODE:山本芳翠展です。

日本近代洋画の素地を築き、黒田清輝を画家の道へと導いた山本芳翠(1850~1906)は、美濃国恵那郡野志村(岐阜県恵那郡明智町)生まれの洋画家です。五姓田芳柳(1827~1892)に学び、のちフランスで本格的な油彩画技法を身に着けました。帰国後の活動は、明治美術会や白馬会などの美術団体結成、日清・日露戦争への従軍画家としての参加、演劇等他の芸術分野との交流など多彩なものでした。 本展では、山本芳翠や黒田清輝らの作品を通して彼らがフランスから日本へもたらした明治洋画が、今日までどのように受け止められてきたのか考察します。

東京国立博物館から、山本芳翠筆「花化粧」や「月夜虎」ほか、黒田清輝作品とあわせて6件の作品をお貸し出し予定です。


花化粧 山本芳翠筆 明治時代・19世紀 カンバス・油彩 東京国立博物館蔵

3. 福井市立郷土歴史博物館
「鉄の名工 越前明珍」 貸与予定件数:6件

会期:2024年10月19日(土)~2024年12月1日(日)

URL: http://www.history.museum.city.fukui.fukui.jp/
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秋の展覧会シーズンに開幕となるのは、福井市立郷土歴史博物館の「鉄の名工 越前明珍」展です。

福井藩主越前松平家のお抱え甲冑師「越前明珍」は代々小左衛門吉久を名乗り、甲冑・自在置物・鉄鐔など、鍛鉄(たんてつ)とその加工技術を巧みに用いた名作を遺しています。 本展では、明珍を中心とする越前の鍛冶の作品の数々、全国の明珍派はじめ鍛冶の名工が手がけた「自在置物」などを一堂に集め、江戸時代の金属加工技術の粋と、その中で確かな位置を占める越前明珍の軌跡を追います。

自在置物とは金属を用いて動物や昆虫を写実的に表現し、体の各部が動くようにしたものです。東京国立博物館から鷹、龍、蟷螂の自在置物のほか甲冑金物など6件をお貸し出し予定です。


自在鷹置物 明珍清春作 江戸時代・18~19世紀 鉄製 鍛造 東京国立博物館蔵

4. 豊橋市美術博物館
「銅鐸の国-伊奈銅鐸出土100年-」 貸与予定件数:14件

会期:2024年11月30日(土)~2025年2月2日(日)

URL: https://toyohashi-bihaku.jp/
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Instagram: https://www.instagram.com/toyohashi_bihaku/
Facebook: https://www.facebook.com/toyohashibi/

次にご紹介するのは、今年2024年3月にリニューアルオープンしたばかりの豊橋市美術博物館で開催される「銅鐸の国-伊奈銅鐸出土100年-」展です。

大正13年(1924)12月27日に、宝飯郡小坂井村伊奈字松間の麦畑(現・豊橋市立前芝中学校校庭)から3口の三遠式銅鐸が出土し、その後、東京帝室博物館に収蔵されました。本展は、三遠式銅鐸の出土から100年を記念し、国内有数の銅鐸集中地帯として知られる三河・遠江地方から出土した銅鐸を一堂に会し、銅鐸の果たした意義と弥生時代の社会を考える展覧会です。
東京国立博物館から13件、奈良国立博物館から1件の銅鐸をお貸し出しする予定です。


突線鈕3式銅鐸 弥生時代(後期)・1~3世紀 愛知県豊川市小坂井町伊奈松間出土 東京国立博物館蔵

5. 佐野市立吉澤記念美術館
佐野市合併20周年記念特別企画展「丸山瓦全と佐野の文化財保護~天明鋳物を護り、エラスムス像を見つけた~」(仮称) 貸与予定件数:9件

会期:2025年1月25日(土)~2025年3月9日(日)

URL: https://www.city.sano.lg.jp/sp/yoshizawakinembijutsukan/index.html
Instagram: https://www.instagram.com/yoshizawa_muse_sano/

年が明けて、2025年1月25日(土)から開催されるのが、佐野市立吉澤記念美術館の「丸山瓦全と佐野の文化財保護~天明鋳物を護り、エラスムス像を見つけた~」(仮称)展です。

佐野市合併20周年を記念し、足利の考古学者・丸山瓦全(1874~1951)を取り上げます。丸山瓦全は、少年期を母の実家である葛生(佐野市)の吉澤家で過ごしました。同家は江戸時代後期以来、書画に親しんだことから、瓦全も幅広い文物に深い関心を持ちました。龍江院(佐野市)にあった、日本とオランダの国際貿易のきっかけをつくったオランダ商船・リーフデ号船尾に取り付けられていたエラスムス像の発見・調査と旧国宝指定、天明鋳物研究と戦時下における梵鐘保護活動など、栃木県の文化財保護に大きな功績を残しました。

本展では「銅梅竹透釣燈籠」(重要文化財)をはじめ、東京国立博物館から9件をお貸し出しする予定です。


重要文化財 銅梅竹透釣燈籠 室町時代・天文19年(1550) 千葉市中央区千葉寺町千葉寺址出土 銅製 鋳造 畑野勇治郎氏寄贈 東京国立博物館蔵

6. 茨城県立歴史館
開館50周年記念 春の特別展「雪村―常陸に生まれし遊歴の画僧―」 貸与予定件数:8件

会期:2025年2月15日(土)~2025年4月6日(日)

URL: https://rekishikan-ibk.jp/
X(旧Twitter): https://twitter.com/Ibaraki_rekishi
Instagram: https://www.instagram.com/ibareki.official/

続いて2月15日(土)に開催となるのは、開館50周年を迎える、茨城県立歴史館の「雪村―常陸に生まれし遊歴の画僧―」展です。

本展は、常陸の国の部垂(現在の茨城県常陸大宮市)を出生地とする戦国時代の画僧・雪村周継(せっそんしゅうけい)の名品を紹介する展覧会です。雪村は常陸北部を領した佐竹一族として生まれ、幼くして出家すると正宗寺(現在の常陸太田市所在)などで画業の修練を重ねます。のちには会津や小田原、鎌倉などを訪れて画才を磨き、晩年は会津や三春(現在の福島県田村郡三春町)を往来しながら多くの傑作を生み出しました。雪村の作品とともに雪村を育んだ時代や地域に関連する資料を紹介し、茨城県および周辺地域の歴史と文化の奥深さや交流の様子などにも触れていきます。

東京国立博物館からは「鷹山水図屏風」(重要美術品)を含む4件、京都国立博物館からは「雪景山水図」など4件、あわせて8件をお貸し出し予定です。


雪景山水図 雪村周継筆 室町時代・16世紀 紙本墨画 谷口豊三郎氏寄贈 京都国立博物館蔵

以上、今年度に開催される6つの展覧会をご紹介いたしました。
みなさん、気になる展覧会で「博物館浴」をされてみてはいかがでしょうか。

展覧会の情報や開催の様子などは、今後こちらでも案内していきます。
▷貸与促進事業 展覧会情報

最後に、2025年度からの貸与促進事業についてお知らせです。
事業名称が「国立文化財機構所蔵品貸与促進事業」となり、従来の4つの国立博物館に加えて東京・奈良の2つの文化財研究所の所蔵品もお貸し出しの対象となります。

現在、2025年度の申請受付を開始しています。(~6月28日(金)[17時必着])
※2025年 4 月下旬~2026年 3 月末までに開催される展覧会が対象です。
申請要項など詳細はこちらからご確認ください。
▷令和7年度 国立文化財機構所蔵品貸与促進事業 申請要項

貸与促進担当は今後も各地域のミュージアムの活動の一助となり、みなさんのお近くのミュージアムで国立文化財機構が所蔵する文化財をより多くご覧いただき親しんでいただけるよう、取り組みを続けてまいります。

カテゴリ: 文化財の貸与