ぶんかつブログ

ColBaseを活用しよう!ミュージアムグッズ・インタビュー編

文化財活用センター〈ぶんかつ〉が運営する「ColBase(コルベース/国立文化財機構所蔵品統合検索データベース)」[https://colbase.nich.go.jp/] に掲載されている文化財の画像をたくさんの方にご利用いただけるよう、デジタル資源担当が連載する「ColBaseを活用しよう!」シリーズ。 全6回の連載の第4回目です。

今回は、実際にColBaseの画像を使ってミュージアムグッズの商品開発をされた方へのインタビュー。
今年の春に、東京国立近代美術館で開催された「東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密」(東京国立近代美術館、毎日新聞社、日本経済新聞社主催)で、グッズ開発を担当された日本経済新聞社の伊藤彩子さん國武多加志さんに、ミュージアムグッズ製作の裏側をうかがいました。
▷東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密 [https://www.momat.go.jp/exhibitions/550]


東京国立近代美術館で開催された「重要文化財の秘密」展

―― 伊藤さん・國武さんがなさっている、ミュージアムグッズにかかわる業務について教えてください。

伊藤
私たちは、日本経済新聞社の文化事業部で、展覧会の主催という立場で関わっています。 「重要文化財の秘密」展では、國武と私の2名が、展覧会の特設ショップで販売する商品の開発とショップ運営を担当しました。

グッズの商品開発では、だいたい展覧会の半年前ころにいくつかのグッズの企画会社にご連絡します。 企画内容を伝えて、先方からいくつかご提案いただき、その中から商品化するものを決定する、という流れが通常です。

―― 今回は「重要文化財の秘密」展を中心に伺いたいと思います。
「重要文化財の秘密」展で人気のグッズは何でしたか?

伊藤
「重要文化財の秘密」展では、明治以降に制作された重要文化財51件を国内の主要美術館からお借りして展示しました。
主役級の作品ばかりが揃った展覧会なので、どの作品をグッズに選べばよいのか、逆に難しかったです。 この展覧会は展示替えが多く、ご来館のタイミングによって見られる作品・見られない作品があるので、商品構成には苦労しました。

その中で人気があったのが、展覧会ポスターにも使った高橋由一の「鮭」ですね。
インパクトがあって目を引く作品です。

▷高橋由一「鮭」(東京藝術大学大学美術館所蔵)の詳細はこちら [https://jmapps.ne.jp/geidai/det.html?data_id=4126]
(東京藝術大学大学美術館データベースへ接続します)


「重要文化財の秘密」展入り口にもメインビジュアルとして使われていました

伊藤
会期を通して展示したので、いつ来ても見られる作品でした。
「鮭」の作品を使ったグッズは、おおむねどれも人気がありましたね。

◆ColBaseを使ったグッズ製作
―― 「重要文化財の秘密」展では、ColBaseを使ったグッズを販売されていましたよね?

伊藤
はい、そうですね。
ポストカード、A4サイズのクリアファイル、チケット用クリアファイル、手ぬぐい、それから、お菓子やお茶のパッケージ、Tシャツにも使わせていただきました。

―― ColBaseをご利用いただきまして、ありがとうございます。
今回ColBaseの画像でグッズを製作してみて良かった点や、気づいたところはありますか?

伊藤
検索しやすく、とても使いやすいと思いました。
画像のサイズは、よほど大きな判型にして印刷したり、部分を大きく拡大したりというような特殊な場合でなければ、必要な解像度は満たしているという印象でした。

國武
ただし、作品を探しても画像が出てこない場合もあるので、今後ラインナップを増やしていただければありがたいなと思います。

―― はい、画像は随時追加しているので、ご期待に添えるように頑張ります。

伊藤
あとは、商品に出典を表記できるスペースが限られるので、どのように出典を書けばいいか判断が難しいことがありました。

―― 実は、そのような方に向けて出典表記についてのブログ記事を公開しておりますので、ぜひご覧ください。

▷関連ブログ「ColBaseを活用しよう!企業での画像利用編」の記事を読む
▷関連ブログ「ColBaseを活用しよう!ColBaseの画像利用について」の記事を読む

―― ColBaseを使わない場合、通常のグッズ製作ではどういう手続きが必要なのでしょう?

伊藤
通常は、まず、いろいろなミュージアムから画像をお借りするために、「こういうグッズを作るので、許可をいただきたい」と申請をお送りします。
つぎに、作品を使ったグッズのデザインを、作品の所蔵先のミュージアムに確認します。
これらは大事な作業ですが、相手のミュージアムにも館内での手続きなどで手間をおかけするので、なるべく前もって申請する必要があります。
画像の使用料金についてはさまざまですが、最近は何かしら発生する場合が多いです。

なので、ColBaseで画像が簡単に入手できて、出典を表記すれば無料で商品にも使用できるのはとても助かりました。

―― 今後も、ColBaseの画像を使ってグッズを製作したいと思われましたか?

伊藤
もちろんです。
ColBaseは検索しやすく、申請の手続きなしで高精細な画像を使うことが出来るので、グッズの試作品の段階から実際の商品に近い形でデザインができてよかったです。

通常は、ミュージアムから正式に画像をいただけるまでは、代替の、しかも解像度のあまり高くない画像で試作品を作らなければいけないので、実際に商品化したときの姿がイメージしづらい場合もあります。
そういう意味で、ColBaseなら簡単に質の高い画像をダウンロードして試行錯誤できる、というのは大きな利点だと思います。

◆ミュージアムグッズについて
―― つぎは一般的なミュージアムグッズに話を広げていきたいと思います。
ミュージアムグッズ全体の売れ行きはどうでしょうか?
SNSでミュージアムグッズのファンがたくさん発信して、盛り上がっているように思います。

國武
ミュージアムグッズは、大きく分けて二つあると思います。
一つは企画展に合わせて、展覧会の間だけ販売するもの。
もう一つは、それぞれのミュージアムが、館のオリジナルグッズとして販売するもの。

私どもの仕事は展覧会に合わせて販売するグッズの方ですが、最近は、ブランドや、キャラクターとコラボして製作することが増えてきました。
そういうものが結構売れていたり、なかなか入手できなかったりしますね。

―― 今回販売されたなかで印象に残ったグッズはありますか?

伊藤
グッズ企画会社から提案される商品のアイディアにいつも驚いています。
「重要文化財の秘密」展でいうと、「鮭のポーチ」ですね。
ぬいぐるみのような質感で、ファスナーを開けると中にイクラがプリントされているというシュールなものです。


鮭のポーチ


ポーチを開くとイクラが…!

伊藤
正直、最初にこのデザインを見たときに、「これは大丈夫なんだろうか…?」と思いました。(笑)
イクラが入っているのは、実際の作品とはまったく関係のない、連想ゲームのようなものなので。
「鮭」を所蔵している東京藝術大学に許可をいただけるのか心配だったんですけど、「大丈夫です」という感じで、意外にすぐに許可をいただけてほっとしたのが印象に残っています。

あとは靴下も印象的でしたね。
企画会社から「鮭」の靴下の提案を受けたときは、びっくりしたんです。
正直売れるとは思っていませんでした。(笑)


一目見ると忘れられないインパクトです。

でも、いざ販売してみるととても人気でした。
「鮭」という作品自体が目にとまりやすい作品であるということと、鮭が靴下になっているという意外性がお客様に受けたのかなと思います。


ショップでもひときわ目立っていました。

当初は靴下がどういう仕上がりになるのか、クオリティを心配していました。
でも、グッズ企画会社が、小ロットで製作期間が短い中でも対応してくださるメーカーを日頃からリサーチして取引されているので、無事に商品として完成できました。
私どもというより、企画会社の方の日頃の努力ですね。

――ちなみに、「麗子微笑」(岸田劉生)と「湖畔」(黒田清輝)の靴下は、ColBaseに掲載されている画像が使われているのですよね。


重要文化財 麗子微笑 岸田劉生筆 東京国立博物館
▷ColBaseで「麗子微笑」を見る


重要文化財 湖畔 黒田清輝筆 東京国立博物館
▷ColBaseで「湖畔」を見る

―― ミュージアムグッズを作る上で苦労されていることはありますか?

伊藤
展覧会を観たあとの特設ショップでは、ポストカードとか、きれいな缶のお菓子とか、定番商品として期待されているものがあると思います。
一方で「あ、こんなものもある!」っていう意外性もほしい。
売上や予算的な目標を達成できるようにということも考えつつ、お客様の期待に応えられるようなラインナップをどう成立させるか、バランスの難しいところです。

―― 昔に比べてグッズの種類の幅とか質もすごく上がっていますよね。

伊藤
そうですね。やはり皆さんがグッズに期待されるクオリティのハードルは高くなっています。
皆さんの選択眼が厳しくなっているというのは感じますね。

ColBaseは、たくさんの画像を事前に見ることができますし、高精細な画像をグッズ製作の検討の段階から使うことで、より試作品の精度を高めることができるので、ぜひ今後も画像を増やしていただきたいです

―― これで最後の質問です。 今後のミュージアムグッズについて、チャレンジしてみたいことや、将来の見通しがあれば教えてください。

伊藤
日頃の反省点としては、いつも時間が限られた中で進めているので、できたら1年ぐらい時間をかけて、 展覧会の企画趣旨と深く関連するものを増やしていけたらいいなと思います。

最近は原料代も上がって、製作のコストも上がっているので、グッズの価格帯も高くなりがちですけれど、 「この値段だけど、この質であれば買ってもいいかな」と思ってもらえる商品を作っていきたいですね。

―― これからのミュージアムグッズも、楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。

展覧会を観た後の楽しみであるミュージアムグッズの裏側をうかがって、さらに財布のひもがゆるんでしまいそうです。
ColBaseは商品開発に便利ということで、今後もColBaseを使った商品を手にとる機会が増えたら嬉しいかぎりです。

次回、「ColBaseを活用しよう!」シリーズ第5回目は、実際にColBaseを使ってグッズを製作してみます。どうぞお楽しみに!

カテゴリ: 文化財の情報