ぶんかつブログ

「保存環境調査・管理に関する講習会」について

保存担当の吉田です。文化財活用センター〈ぶんかつ〉が居を構える東京国立博物館(トーハク)、また、トーハクや上野動物園などが居を構える上野公園、さらに、上野公園に隣接するアメ横や谷中などにも、ようやく本来の賑わいが戻ってきた感があります。そもそも遊興の地である上野公園ですから、この賑わいがこれからも続くことを願うばかりです。

さて本題ですが、〈ぶんかつ〉保存担当は、全国の学芸員や文化財行政担当者に、展示室や収蔵庫における保存環境管理に関する研修会などを開催することを重要な事業としています。このブログで何度か紹介している「博物館・美術館等保存担当学芸員研修(基礎コース)」は、これまでに3回開催し、計62名の方が修了しました。今年度も、夏と冬に開催し、合わせて47名の方のご参加を予定しています。今回は、この研修会と並んで、〈ぶんかつ〉保存担当の新事業であるもうひとつの講習会、「保存環境調査・管理に関する講習会」を紹介します。

温湿度や空気環境といった、保存環境に関わる分析調査や評価を比較的簡便に行なうことが出来る機材や、環境改善のための資材などが多く市販されるようになり、ミュージアムにとっては環境管理が一昔前に比べると容易になってきたと言えます。実際、以前は専門業者に委託することが多かった調査を、現在は自力で行なっているミュージアムが増えています。

一方、簡便であるからこそ、と言えるのかも知れませんが、適切ではない使い方によって、環境評価での誤認や、十分な環境改善効果が得られていないという事態が少なからず起こっているのもまた事実です。私たち〈ぶんかつ〉保存担当は、このような機材や資材を効果的に利用、活用するには、それぞれのそもそもの目的や科学的原理のレベルから理解する必要があると考え、そのために「保存環境調査・管理に関する講習会」を2019(令和元)年度より開始しました。

コロナ禍により、1年半ほど中断を余儀なくされましたが、リモート配信も併用しながら、この講習会はこれまでに5回開催しました。この5回は、いずれも空気環境に関わるテーマで、空気中の揮発性化学物質の分析手法や、吸着剤、中性紙保存容器といった資材を取り上げ、企業の開発担当者の方などを講師としてお招きし、講義を行なっていただきました。現在、〈ぶんかつ〉保存担当にお寄せいただいている保存環境に関するご相談の多くが、空気環境に関わることであるのも、テーマ選定の大きな理由です。この講習会は、非常に高度な内容であるため、対象者を長年各地のミュージアムで保存管理に専従し、経験豊富で、また地域のアドバイザーとしての役目にも担っている学芸員や、文化財保存の研究者に限定し、こちらでリストアップして案内し、毎回15~20名の方にご参加いただいています。


コロナ禍の間は、会場参加者を減らし、オンラインでのリアルタイム配信を併用して開催しました。


コロナ禍前、中性紙保存容器をテーマとした回では、参加者の皆様に組み立ても行なっていただきました。

例えば、吸着剤をテーマとした回では、そもそも吸着とはどういう現象か?というところから始まり、種々の吸着材の材質と科学的特徴、ミュージアムでの効果的な使用のための種類選定やメンテナンスまで、多岐に渡ってご講義いただきました。主催する私たちにとっても、知っていたつもり、知らなかったことが多く、大変勉強になります。この講習会は、これからもその時々に必要なテーマを設定しながら、年2回のペースで継続していく予定です。まず、参加者である各地の保存専従学芸員や私たちの間で共通理解を深め、将来的に全国のミュージアムにも何かの形で広めていければ。そのために、初学者向けとして行なっている「博物館・美術館等保存担当学芸員研修(基礎コース)」、そしてこの講習会、これらの間をつなぐ何かを求めていきたいと考えています。

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カテゴリ: 文化財の保存