貸与促進事業 2023年度開催の7つの展覧会をご紹介
国内各地のミュージアムに対し、東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館・九州国立博物館の4つの国立博物館が各地域にゆかりのある収蔵品を貸し出し、〈ぶんかつ〉が作品輸送費や梱包・開梱、展示・撤収作業費等を支出する、「国立博物館収蔵品貸与促進事業」(以下、貸与促進事業)。今年2023年で7年目を迎え、お問い合わせやご応募を全国各地のミュージアムからいただくようになりました。
そして今年度は、島根・長野・山口・広島・兵庫・福岡の6県7つのミュージアムが本事業に採択されました。
今年度の展覧会はどこで開催されるのでしょう。あなたの住む地域、あなたにゆかりのある地域かもしれませんよ。ではさっそく、7つの展覧会を開催順にご紹介してまいります。
1.島根県芸術文化センター(島根県立石見美術館)
「没後150年 山本琹谷と津和野藩の絵師たち」 貸与予定件数:7件
会期:2023年7月8日(土) ~ 2023年8月28日(月)
URL:[https://www.grandtoit.jp/museum/]
Twitter:[https://twitter.com/Grand_Toit]
Instagram:[https://www.instagram.com/iwamiartmuseum/]
Facebook:[https://www.facebook.com/grandtoit.jp/]
今年度最初の展覧会は7月8日(土)から開催される、島根県立石見美術館の「没後150年 山本琹谷と津和野藩の絵師たち」展です。
山本琹谷(やまもときんこく・1811~1873)は、石見国(現在の島根県西部)津和野藩の絵師です。津和野藩家老の多胡逸斎に絵を学び、後に渡辺崋山、高久靄厓、椿椿山に師事しました。嘉永6年(1853)に津和野藩の絵師となり、津和野地域や江戸近隣の画事に従事し、多くの作品を残しました。
令和5年(2023)が琹谷の没後150年にあたることを記念して開催する本展では、東京国立博物館(トーハク)から貸し出す7件をはじめ、津和野地域に現存する琹谷の作品を一堂に会し、その画業を幅広く紹介します。また、琹谷以外の津和野藩の画人たちの作品も展示し、彼らの多彩な魅力にも迫ります。
唐児 山本琴谷 明治時代・19世紀 絹本着色 東京国立博物館蔵
2.市立岡谷美術考古館
「東京国立博物館にある岡谷のお宝展示 ~岡谷の弥生を知る、115年ぶりの里帰り~」(仮) 貸与予定件数:13件
会期:2023年7月15日(土) ~ 2023年9月18日(月・祝)
URL:[https://okaya-museum.jp/]
続いて、7月15日(土)から開催されるのは、市立岡谷美術考古館の「東京国立博物館にある岡谷のお宝展示 ~岡谷の弥生を知る、115年ぶりの里帰り~」(仮)展です。
岡谷市は長野県の南信地方に位置し、諏訪湖の西岸に面する都市です。移転開館10周年を記念して開催する本展では、代表的な収蔵作品の一挙公開を試みます。考古展示の目玉は、明治40年(1907)に平野村(現・岡谷市)の天王垣外から出土した玉類です。諏訪地方において、弥生時代の玉類が多く出土した例はなく、トーハクから貸し出す、天王垣外出土の勾玉や管玉といった考古資料13件をあわせ、地元出土の玉類の数々が一堂に会します。
天王垣外出土品 弥生時代(中期)・前2~前1世紀 長野県岡谷市天竜町・中央町・本町天王垣外出土 東京国立博物館蔵
3.山口県立山口博物館
「やまぐち 大考古博」(仮) 貸与予定件数:13件
会期:2023年7月21日(金) ~ 2023年9月3日(日)
URL:[https://www.yamahaku.pref.yamaguchi.lg.jp/]
Instagram:[https://www.instagram.com/nattoyamahaku/]
Facebook:[https://www.facebook.com/yamaguchi.museum]
夏に各地の展覧会を巡る予定の方には朗報です。夏休み期間中に開催される展覧会はさらにもう1件。山口県立山口博物館の「やまぐち 大考古博」(仮)展です。
山口県は、東アジアと日本列島の海上交通網を結ぶ地政学上の要であり、弥生時代には大陸や半島からの渡来と交流、古墳時代には瀬戸内海ルートを重視したヤマト王権とのつながり、奈良・平安時代には「和同開珎」鋳造に代表される先進的な手工業生産など、人々の往来と文化の交流による歴史が積み重ねられてきました。
本展は、山口県の歴史や文化に親しむ展覧会として、旧石器時代から江戸時代まで、考古学による地域の魅力を県内外に広く紹介します。トーハクからは、山口市の赤妻古墳出土「四獣鏡」や「巴形銅器」など、山口県内出土の考古資料13件を貸し出します。
巴形銅器 古墳時代・5世紀 山口市 赤妻古墳出土 東京国立博物館蔵
4.広島県立歴史民俗資料館
「三次鵜飼と日本の鵜飼」 貸与予定件数:7件
会期:2023年10月6日(金) ~ 2023年11月26日(日)
URL:[https://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/rekimin/]
秋の展覧会シーズンに開催されるのは、広島県立歴史民俗資料館の「三次鵜飼と日本の鵜飼」展です。
古事記や万葉集にも登場する「鵜飼」は長い歴史をもつ伝統的な漁法です。広島県三次市の「三次鵜飼」は原初的な形態を保ったまま近世以前から続き、広島県無形民俗文化財に指定されています。本展は、古代以前に遡る鵜飼の歴史性や、絵画や造形で表現された鵜飼の持つ美術性や精神性など、日本文化の中での鵜飼の位置づけを明らかにしたうえで、三次鵜飼の持つ特徴を紹介する展覧会です。トーハクからは、鵜飼が描かれた高橋由一の油彩画「長良川鵜飼」を含む5件、京都国立博物館(京博)からは水辺に漂う鵜飼舟に飛び交う鵜が表された「帷子 淡浅葱麻地御所解(鵜飼)文様」などの2件を貸し出します。
帷子 淡浅葱麻地御所解(鵜飼)文様 江戸時代・18~19世紀 京都国立博物館蔵
5.兵庫県立美術館
「生誕180年記念 呉昌碩の世界-海上派と西泠名家-」(仮) 貸与予定件数:11件
会期:2024年1月13日(土) ~ 2024年4月7日(日)
URL:[https://www.artm.pref.hyogo.jp/]
Twitter:[https://twitter.com/hyogoartm]
Instagram:[https://www.instagram.com/hyogo_pref_museum_of_art/]
Facebook:[https://www.facebook.com/artm.pref.hyogo/]
年が明けて、2024年1月13日(土)から開催されるのが、兵庫県立美術館の「生誕180年記念 呉昌碩の世界-海上派と西泠名家-」(仮)展です。
清朝末期から中華民国時代に活躍した呉昌碩(ごしょうせき・1844~1927)は、清朝最後の文人といわれ、生涯にわたって古代文字である石鼓文の臨書に励み、その風韻を書・画・篆刻に結実させました。生誕180年にあたる2024年、呉昌碩の名品を中心に、その師弟や子息、また呉昌碩が初代社長を務めた西泠印社(せいれいいんしゃ)の創始者である呉隠・葉銘・丁仁・王禔とこれに続く諸名家の作品を展示します。さらにこれらの西泠名家と日本人との交流を回顧することで、呉昌碩が果たした功績とその影響を顕彰します。本展では、呉昌碩が25歳年長の書家、楊峴(ようけん)に教えを請うために送った「墨竹図軸」など8件の作品をトーハクから、京博からは3件を貸し出します。
墨竹図軸 呉昌碩筆 清時代・19世紀 紙本墨画 高島菊次郎氏寄贈 東京国立博物館蔵
6.糸島市立伊都国歴史博物館
「東西日本の弥生文化 〜東京国立博物館収蔵コレクションより~」 貸与予定件数:19件
会期:2024年1月27日(土) ~ 2024年3月17日(日)
URL:[https://www.city.itoshima.lg.jp/m043/010/index.html]
Instagram:[https://www.instagram.com/itokoku_museum/]
Facebook:[https://www.facebook.com/itokoku110/]
続いて1月27日(土)に開催となるのは、糸島市立伊都国歴史博物館の「東西日本の弥生文化 〜東京国立博物館収蔵コレクションより~」展です。
伊都国は、『魏志倭人伝』に記される、福岡県糸島市付近に比定される弥生時代の国で、邪馬台諸国のなかで政治、外交上重要な地位を占めていました。本展は、日本列島における弥生時代の稲作文化や土器の変遷、青銅器文化について、北部九州の資料をはじめ、山陰・瀬戸内・近畿・北陸・東海、そして東日本などの地域色のある弥生文化(続縄文文化)の資料を通して、それぞれの地域の歴史的特色を紹介する展覧会です。トーハクからは、伊勢湾岸地域の弥生時代後期を代表する優美なかたちをした「台付壺」(重要文化財)などの考古資料19件を貸し出します。
重要文化財 台付壺 弥生時代(後期)・1~3世紀 愛知県名古屋市 高蔵貝塚出土 土製 徳川頼貞氏寄贈 東京国立博物館蔵
7.下関市立美術館
開館40周年記念特別展「狩野芳崖 継がれる想い~悲母観音の<いま>」(仮) 貸与予定件数:2件
会期:2024年2月6日(火) ~ 2024年3月17日(日)
URL:[https://www.city.shimonoseki.lg.jp/site/art/]
Twitter:[https://twitter.com/artshimonoseki]
Instagram:[https://www.instagram.com/shimonosekicityartmuseum/]
Facebook:[https://www.facebook.com/shimonosekicityartmuseum]
2月6日(火)から開催されるのは、開館40周年を迎える、下関市立美術館の「狩野芳崖 継がれる想い~悲母観音の<いま>」(仮)展です。
本展は、下関ゆかりの日本画家・狩野芳崖(1828~1888)の代表作である「悲母観音」(1888年、東京芸術大学蔵、重要文化財)、「仁王捉鬼」(1887年、東京国立近代美術館蔵)を柱とし、両作品のその後の美術界での影響の広がりを見る展覧会です。東京美術学校での教育的模倣作をはじめとする明治後期~昭和初期頃に描かれた諸作品から現代美術まで、《悲母観音》の模倣作やそこからインスピレーションを受けた作品、オマージュ作品を展観し、あらためて芳崖の近現代美術への影響力について考えます。
本展には、トーハクから、川島織物の主任画師の東翠石が模写して下絵を製作し、二代川島甚兵衛が綴織に仕上げ、明治28年(1895)に京都で行なわれた第4回内国勧業博覧会へ出品された「悲母観音図綴織額」を含む2件を貸し出します。
悲母観音図綴織額(綴織部分) 二代川島甚兵衛作 明治28年(1895) 東京国立博物館蔵
以上、貸与促進事業によって開催される7つの展覧会をご紹介いたしました。
今年度も、各地域ゆかりの歴史と文化にふれられる、魅力あふれる展覧会ばかりです。
すでに、展覧会開催に向けた準備が始まっています。例えば、「悲母観音図綴織額」は大型で、額寸長さ295.0cm、額寸幅147.5cm、重量は80.0kgもあります。作品に負担をかけず安全に梱包・輸送するための下準備、じっくりとご覧いただけるような展示方法の検討など、事前の打ち合わせを入念に行なっているところです。また、展覧会開催を記念したトークイベントの準備も進められていますよ。
展覧会の情報や開催の様子などは、今後こちらでも案内していきます。
▷貸与促進事業 展覧会情報
どうぞお楽しみに!
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- 2023年04月06日 (木)