ColBaseの舞台裏 デジタルの裏側はアナログ?
文化財活用センター〈ぶんかつ〉が運営する「ColBase (コルベース/国立文化財機構所蔵品統合検索システム)」[https://colbase.nich.go.jp/] では、国立文化財機構に所属する4国立博物館・1研究所が所蔵している文化財の詳細情報と画像を提供しています。
今回のブログではColBaseの舞台裏として、デジタル資源担当が行なっている東京国立博物館(トーハク)所蔵文化財の画像が掲載されるまでの流れをみなさまにご紹介したいと思います。
では、突然ですが問題です。
ColBaseには現在どのくらいの文化財情報と画像が登録されているでしょうか?
ColBaseトップ画面
答えは・・・
文化財情報は約14万件、そのうち約3万件に画像が登録されています。絵巻物や立体の文化財は、1件に対し複数枚の画像が登録されている場合もあり、画像枚数はなんと約9万枚!(2022年12月時点)
これらの画像のうち、トーハク所蔵の文化財は基本的にトーハク内で写真撮影が行なわれています。
撮影される理由は、展覧会の図録掲載・ColBase掲載・調査研究などさまざまで、これらの画像がColBaseに掲載されています。
では、みなさまにご利用いただくまでにどのような作業を経ていると思いますか?
データベース・デジタル資源だから、システムやAIを使ってポチッとボタン一つで作業完了!と、思われる方も多いかもしれません。
しかし、実は一つ一つ手作業で、人の目で確認しています。
〈撮影~画像詳細〉
まず、トーハク内で撮影されたのち研究員からの情報をもとに、撮影された写真を整理する部署によって、
・どの文化財か
・撮影理由
・撮影日時
・文化財の撮影部位
・文化財の著作権
など、画像にさまざまな情報が付与されます(これをメタデータといいます)。
この情報が付与されることによって、「この画像は一体どの文化財の画像?」といった問題が起きずに済んでいます。(膨大な量の画像があるので、万が一迷子になってしまったら探すのは至難の業です。)
〈画像ピックアップ〉
その後、付与された情報を参考にしながら私たちデジタル資源担当が、画像をピックアップしていきます。このピックアップも手作業。ボタン一つで、とはいきません。
例えば…
・トーハクのカメラマンが撮影した画像か
ColBaseには寄贈画像や撮影者の許諾が必要な画像(トーハク外の人によって撮影されたもの)は掲載していません。
・文化財の著作権が切れているか
作者の死後70年(2018年以前は死後50年)は、著作権保護期間のため該当する文化財は掲載していません。(主に近現代の文化財は注意が必要です。)
・ColBaseへの掲載状況
すでに掲載されている画像以外に、新しく撮影された画像や別場面の画像がないか
これらを確認した上で、みなさまに安全かつ簡便にご利用いただけるように、利用可能な画像だけをピックアップしています。そして、ピックアップした画像を掲載して…いえ、まだまだ工程があります。
文化財の画像はトリミングされている画像であることにお気づきですか。
〈画像トリミング〉
このトリミング作業もボタン一つとはいかず、
・不要な情報を除去(スケールやメジャー、番号札)
・撮影時に生じたわずかな傾きを正しい角度に調整
・余白の広い画像は、作品の雰囲気を損なわない程度に余白を削る
・撮影した箇所がよく見えるように
これらに気をくばりながら一枚一枚画像を見ながらトリミング作業をしていきます。
画像によって、スケールの置いてある場所や余白の広さはさまざまなため、人の目が一番必要な部分はこの作業かもしれません。
トリミング前画像
トリミング後画像
〈掲載作業〉
その後、TIFF形式(ファイルサイズは大きいが、画質が劣化しない高品質な画像形式)をJPEG形式(ファイルサイズが小さく、ほとんどのブラウザ等で利用できる画像形式)に変換し、サーバへ掲載していきます。
これも、画像の掲載順などを確認する必要があるため一枚一枚登録していきます。
ここまで作業をして、やっとみなさまにご利用いただける状況になります。
ColBaseの公開画面
さて、今回のブログではColBaseに画像が掲載されるまでをご紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか。 こんなにアナログなの!?と驚かれたかもしれません。
しかし、このアナログな作業によって、みなさまに使いやすいデータベース・使いやすい画像を提供することができています。
トーハクは約12万件の文化財を所蔵していますが、現時点ではColBase上に画像を掲載できていない文化財が数多くあります。
しかし、古い画像を画質の良い新しい画像に変更したり、新たに画像を登録したりしておりますので、実は少しずつ画像の登録数は増えています。(先週は「No Image」となっていても、今週には画像が登録されていることも…)
ColBaseに掲載されている画像は、出典を明記することで商用利用やテレビ番組での利用、論文への掲載、SNSへの投稿など、さまざまな場面でご利用いただけます。
ぜひ、お気軽にご利用いただけると携わっている私たちも嬉しいです。
2022年12月に無事閉幕した特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」開催中には、〈ぶんかつ〉Twitter・Instagramで「#ColBaseで国宝展を楽しもう」というプチ企画を行なっておりました。展覧会はすでに閉幕しておりますが、SNSの投稿も覗いてみてください。
【#ColBaseで国宝展を楽しもう】尾羽に見えることから作品名の由来となった「鵲(かささぎ)」。鵲は春をよぶおめでたい鳥で、吉兆を報じる霊能があるともいわれています。鵲は国宝以外にも登場します。この作品の全貌と、ほかの鵲探しは #ColBase で。#東京国立博物館 #国宝展https://t.co/jcZzxQbcYT pic.twitter.com/ALD72vUba7
— ぶんかつ【文化財活用センター】 (@cpcp_nich) December 12, 2022
▷Instagram「#ColBaseで国宝展を楽しもう」の投稿を見る https://www.instagram.com/explore/tags/colbase%E3%81%A7%E5%9B%BD%E5%AE%9D%E5%B1%95%E3%82%92%E6%A5%BD%E3%81%97%E3%82%82%E3%81%86/
また、ColBaseへのご意見・ご感想等は、〈ぶんかつ〉お問い合わせフォームよりお寄せください。
▷ぶんかつお問い合わせフォーム
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- 2023年01月26日 (木)