ぶんかつブログ

日本最大の銅鐸が里帰り!-大岩山銅鐸、安土へー

東京国立博物館(トーハク)で日本考古を担当しております、菊池望です。今回はみなさんにこの秋わたしが一押ししたい考古学の展覧会をご紹介します。

現在、滋賀県立安土城考古博物館では、令和4年度秋季特別展「里帰り!日本最大の銅鐸 -太古の響きを安土の地で-」が開催中です。
本展覧会では、琵琶湖沿岸部に展開した弥生時代中期から古墳時代前期の社会における祭祀、とりわけ銅鐸祭祀の特徴や古墳における葬送儀礼への移行を、銅鐸や銅鏡などの青銅器を通じて明らかにし、併せて青銅器を祀った人々の暮らしに関わる土器や集落の様相も紹介しています。

▷「里帰り!日本最大の銅鐸―太古の響きを安土の地で―」の開催概要を見る


滋賀県立安土城考古博物館 外観

本展は、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が実施する「国立博物館収蔵品貸与促進事業」によって、日本最大の銅鐸、大岩山遺跡出土1号銅鐸をはじめ6件の考古作品がトーハクから里帰りするかたちとなりました。そこで、今回はトーハクよりお貸し出しした文化財を中心に本展覧会の見どころをご紹介します。


展示会場風景

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本展の主役ともいうべき銅鐸は、弥生時代の近畿地方において独自の発展を遂げた青銅器です。
銅鐸の起源は、中国大陸や朝鮮半島の小型の青銅製ベルにあると考えられています。これらが日本列島に伝来した後に、弥生時代中期ごろにマツリの道具として大型化し、装飾性を高めるように変化していきました。
滋賀県内では弥生時代中期段階の銅鐸もいくつか見つかっています。この段階の銅鐸はまだベルとしての機能を失っておらず、実際に内部に棒状の舌(ぜつ)を吊るして鳴らしていたようです。


左:扁平鈕式銅鐸 弥生時代(中期)・前2~前1世紀 滋賀県竜王町山面字高塚出土(1号鐸) 東京国立博物館蔵
右:扁平鈕式銅鐸 弥生時代(中期)・前2~前1世紀 滋賀県竜王町山面字高塚出土(2号鐸) 東京国立博物館蔵

弥生時代後期になると銅鐸は大型化の一途をたどり、鳴らして音を聞くためのものから見るものへと変貌を遂げます。その変化の終着点にあるのが日本最大の銅鐸、大岩山1号銅鐸です。その大きさは優に1mを超えます。滋賀県野洲市大岩山遺跡では明治14年(1881)に14個、昭和37年(1962)に10個の計24個の銅鐸が出土しました。このように、弥生時代後期の大型の銅鐸で占められる大量埋納は他に類を見ません。


左:突線鈕式銅鐸 弥生時代(後期)・1~3世紀 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土(Ⅰ-1号鐸) 東京国立博物館蔵
右:突線鈕式銅鐸 弥生時代(後期)・1~3世紀 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土(Ⅰ-2号鐸) 東京国立博物館蔵

昭和37年に出土した銅鐸は一括して安土城考古博物館に収蔵されていますが、明治14年に出土した銅鐸は、トーハクをはじめ大学博物館や寺院、個人と各所に所蔵されており、中には海外のミュージアムで所蔵されているものもあります。本展覧会では昭和37年出土銅鐸に加え、日本国内で所蔵されている明治14年出土銅鐸が一堂に会する大変貴重な機会です。会場では、大岩山遺跡出土銅鐸が壁一面に並ぶ姿はまさに壮観。ぜひ、ご自身の目でお確かめください!


左端が大岩山Ⅰ-1号銅鐸(全高1m34cm)、その隣は大岩山Ⅰ-2号銅鐸(全高74㎝)です。並べてみるとⅠ-1号銅鐸の大きさと存在感が大変際立ちます。

銅鐸を用いた祭祀は弥生時代とともに終わりを迎え、続いて古墳における葬送儀礼が発展していく時代、古墳時代へと移行していきます。4世紀の古墳にはさまざまな器物が副葬されますが、なかでも古代中国の神仙世界を背面に表わした銅鏡は、列島各地の首長の墓に副葬されました。大岩山古墳に副葬された三角縁神獣鏡や獣帯鏡もそれに含まれます。

直線や曲線を中心としていた銅鐸の文様・絵画と比べると、これらの銅鏡に配される神像や霊獣は浮彫状に表現され、立体的な印象を受けます。両者の表現の違いを比べてみるもの面白いかもしれません。


三角縁二神二獣鏡 古墳時代・4世紀 滋賀県野洲市 大岩山古墳出土 東京国立博物館蔵

獣帯鏡 古墳時代・4世紀 滋賀県野洲市 大岩山古墳出土 東京国立博物館蔵

なお、大岩山古墳出土銅鏡は、今回の貸し出しに備えて古い修復部の補彩を実施しています。このように、貸し出しに備えた文化財の修復や復元もまた〈ぶんかつ〉の重要な仕事の一つです。今回の補彩についての詳細は、以下の記事でご紹介しています。

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以上、本展覧会の見どころの一部を、トーハクからお貸し出しした文化財を中心に簡単にご紹介いたしましたが、これらは展覧会全体の魅力のごく一部です。本記事でお伝えしきれませんでしたが、滋賀県の弥生・古墳時代社会のさまざまな側面を、考古資料より知ることができます。

また、安土城考古博物館はその名のとおり、安土城の考古学的研究や滋賀県の先史・古代を紹介する常設展示も非常に充実しております。近くにある特別史跡 安土城跡も、安土城考古博物館とあわせて訪れていただきたい名所です。

特別展「里帰り!日本最大の銅鐸 -太古の響きを安土の地で-」は、11月20日(日)までです。この秋はぜひ安土に足を運んでみてはいかがでしょうか。

里帰り!日本最大の銅鐸―太古の響きを安土の地で―

会期 2022年10月8日(土) ~ 2022年11月20日(日)

会場 滋賀県立安土城考古博物館(〒521-1311 滋賀県近江八幡市安土町下豊浦6678)

会期中休館日 11月7日(月)・14日(月)

入館料 大人900(690)円、高大生640(470)円、小中生420(310)円、県内高齢者(65歳以上)460(350)円
※( )内は20名以上の団体料金です。

滋賀県立安土城考古博物館・公式サイト https://azuchi-museum.or.jp/

滋賀県立安土城考古博物館・公式facebook https://www.facebook.com/azuchihaku