ぶんかつブログ

「ミュージアムをめぐるファンドレイジング」シンポジウム開催報告

首都圏でも大雪の予報が心配された2022年2月10日。
文化財活用センター〈ぶんかつ〉は設立3周年を記念して公開シンポジウム「ミュージアムをめぐるファンドレイジング」をオンラインにて開催しました。


当日オンライン配信会場の様子

▷2021年度公開シンポジウム「ミュージアムをめぐるファンドレイジング」

個人・企業などから活動資金をご支援いただく「ファンドレイジング」。
この4月で活動開始から3年となる〈ぶんかつ〉ファンドレイジング活動は、東京国立博物館と共同で実施した「〈冬木小袖〉修理プロジェクト」などを通し、多くの方に参画していただきながら、文化財を未来へと繋ぐため、さまざまな取り組みを行なって参りました。

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この3年の間にもミュージアムを取り巻く状況は大きく変化しています。
新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、多くのミュージアムで活動が大きく制限される中、運営維持や施設改修等をクラウドファンディングにより実現させようとする動きが活発化しています。
一方でその必要性の急激な高まりから、ファンドレイジング事業の意義について考えを深める余裕もなく、まずは取り組まねばならないという声も多く聞こえてきます。

〈ぶんかつ〉3周年に際して、多くのミュージアムが関心を持ち、そして課題を抱えるテーマ。
その議論に少しでも資することが出来ればとの想いから、我々はこのシンポジウムを企画しました。


多様なファンドレイジング活動に取り組むミュージアムの事例をもとに、目指すべき姿を探る良い機会となることを願う〈ぶんかつ〉旭センター長の開会挨拶

感染拡大状況に鑑みてオンライン開催とした本シンポジウムは、 共催の日本博物館協会様のご協力もあり、ミュージアム関係者だけでなく多くの方からお申し込みを頂くことが出来ました。
〈ぶんかつ〉旭センター長からの開会挨拶の後、基調講演をしてくださったのは日本博物館協会の半田昌之専務理事。
全国のミュージアムの経営状況や寄附額の推移、諸外国との比較など具体的なデータを示されながら、博物館がファンドレイジングに取り組むことの意義について、大変示唆に富んだご講演を頂きました。


基調講演「博物館とファンドレイジングのあり方」半田 昌之 様

続いて行なわれた全国のミュージアムの現場からの事例報告。
まず〈ぶんかつ〉を代表して登壇した古山珠美専門職員から、「〈冬木小袖〉修理プロジェクト」を進めた経験を振り返り「ファンドレイジング事業は目標金額を集めるだけではなく、寄附者と文化財をつなぐ架け橋となりえる」という気付きをご報告しました。

▷〈冬木小袖〉修理プロジェクトのページを見る


事例報告「ファンドレイジングを通じた文化財への親しみの創出」古山 珠美

次にご登壇下さった国立科学博物館の中島徹マーケティング・コンテンツグループ長からは、科学博物館の支援者との多様な関わり方の創出は「共感を拡げ、仲間を増やし、人々の関わりの濃度を高めていく大きな可能性を秘めたものである」とのお話を頂きました。


事例報告「ファンドレイジングにおける多様なツールの活用とコミュニケーション」中島 徹 様

続けて、滋賀県立美術館の保坂健二朗ディレクター(館長)には、「美術館に行く」ということへのハードルを下げるために、同館が企業と連携して実現した「フリーサンデー」制度を中心に、美術館と寄附者が寄附金だけの関係に終わらない今後の持続的な関係性の構築にむけたビジョンを語って頂きました。


事例報告「『リビングルームのような美術館』を実現するための『無料観覧デー』の設計」保坂 健二朗 様

事例報告の最後は、大原美術館の柳沢秀行学芸統括より、コロナ禍において同館収入 の約8割を占める入館料が枯渇する大きな危機の中、館の運営を支えたクラウドファンディング等のファンドレイジング事業から「美術館を結節点として多くの人・組織が繋がっている」ことを再認識したというご報告をいただきました。


事例報告「公開なくして大原美術館はない―クラウドファンディングの成果とその後」柳沢 秀行 様

結びに、ご講演・ご報告をもとに登壇者の皆様のディスカッション(モデレーター:〈ぶんかつ〉小林副センター長)を行ない、参加者からの質問にもお答えしながら、ミュージアムが展開するファンドレイジング事業について、活発な議論が交わされました。

この模様は基調講演、各事例報告とともに、文化財活用センターYouTubeチャンネルから現在アーカイブ配信にて公開中です。是非ご覧くださいませ。
▷2021年度公開シンポジウム「ミュージアムをめぐるファンドレイジング」

立場や取り組みの方法は違えど、各登壇者から頂いたお話に共通するのは「資金獲得に終わらないファンドレイジングの在り方」について。
これは基調講演で半田専務理事がお話の「ファンドレイジングを通じて、博物館の社会的役割の必要性や共有財産としての認識を社会に深めていくことへの期待」にも通じるものでした。 主催した我々にとっても多くの学びを頂く機会となりましたことに、ご登壇者の皆様にはあらためて御礼申し上げます。

また当日は270名を超える方にリアルタイムでご参加いただき、終了後に実施したアンケートにも多数のご回答を頂戴しました。
平日にも関わらずご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。

「文化財を1000年先、2000年先の未来に伝えるために」
〈ぶんかつ〉のミッションはこちらでご覧いただけます 。
▷ミッション・ビジョン

今回のシンポジウムを通していただいた意見も活かしながら、皆様とともに事業を進めてまいりたいと思います。

今後とも、文化財活用センター〈ぶんかつ〉をどうぞよろしくお願いいたします。

【おまけ】


本番に備え、入念なリハーサル…中? 背景は菱川師宣筆の重要文化財「歌舞伎図屏風 左隻」の高精細複製品(お貸出しも行なっております。)

文化財のお貸出しについて詳細は以下でご確認ください。
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