ぶんかつ総務担当から3周年によせて
文化財活用センター〈ぶんかつ〉は2021年7月1日に3周年を迎えました。
〈ぶんかつ〉では企画、貸与促進、保存、デジタル資源、総務の担当セクションがそれぞれの歩みを進めています。
〈ぶんかつ〉3周年リレーブログ、第3弾は総務担当課長の坂本から総務担当の取り組みについて、これまでとこれからの展望をご紹介します。
総務担当は、〈ぶんかつ〉全体が円滑に運営されるよう、国立文化財機構内外と事務的な調整を担い、職員皆が気持ちよく仕事をしていける環境づくりに心がけて、毎日の業務を進めています。
新設された2018年は何もないところからのスタート。現在の執務室も東京国立博物館(トーハク)の中の、もともとは別の用途で使われていたスペースでした。まずはオフィスとして使えるように机やパソコン等をそろえるところから始まった総務担当の仕事でしたが、最近では、情報セキュリティ部門などと連携しながらリモート会議の機器を整えたり、飛沫防止や積極的な換気を行なったり、「新しい生活様式」に対応した働き方がしやすい環境整備に取り組んでいます。
〈ぶんかつ〉オフィスの様子は以前のブログから。飛沫対策用のパネル等、その後も少しずつ改良しています。
▷関連ブログ「〈ぶんかつ〉オフィスへようこそ!」の記事を読む
また、総務担当が担っているもう一つの重要なミッションが、多くの方に参画していただきながら、文化財を1000年先、2000年先への未来へ守り伝えていくためのファンドレイジングです。
なるべく多くの方に活動を知っていただけるよう考えました。
皆さんの大切な財産である文化財を未来につないでいくためには、展示を通してなるべく多くの方に接していただきながら、適切な保存・修理を行なっていかなければなりません。当機構の各施設では、常に保存と活用のバランスを考えながら文化財と向き合っています。しかし、日本・アジアの文化財は光や熱、温湿度の変化などの影響を受けやすいものが多く 、文化財の状態を把握し、保存環境を整えていても劣化が避けられません。各施設でも予算の一部を充てて継続的な修理を行なっていますが、いまだ数多くの文化財が修理の順番を待っています。
こうした課題をまず皆さんに知っていただきながら、さまざまな形での支援へとつなげていきたい 、そんな想いの下でファンドレイジングに取り組んでいます。
東京国立博物館所蔵、重要文化財「小袖 白綾地秋草模様(こそで しろあやじあきくさもよう)」(通称〈冬木小袖〉(ふゆきこそで))の修理を行なう「〈冬木小袖〉修理プロジェクト」は、その最初の一歩。
皆様からのご支援で、先日目標金額の1500万円 を達成したばかりですが、今一度プロジェクトの歩みを振り返ってみたいと思います。
〈冬木小袖〉についてファンドレイジングで修理費を募集することが決定したのは、2019年の11月。尾形光琳が白い絹地に直接秋草の模様を描いていることで知られるこの貴重なきものは、トーハクを代表する名品ですが、修理を待つ文化財の一つでもありました。実際に作品を間近にすると、写真で見るよりもその傷みは歴然。
重要文化財 小袖 白綾地秋草模様 尾形光琳筆 江戸時代・18世紀前半
経年による劣化が進み、汚れや糸の断裂が見られる
「修理を、今、始めなくてはならない」というトーハク染織担当研究員の熱い 思いを受けつつ、このプロジェクトでも、単に「必要な資金をいただく」のではなく、〈冬木小袖〉が修理され引き継がれていく活動にお一人お一人が参画している実感を得ていただくことや、文化財修理についてお伝えしていくことを念頭に組み立てていきました。
2019年に行ったブレインストーミングの様子
「なぜ今修理が必要か」を担当研究員が語る動画の制作、修理前の最後の公開となる特別展「きもの KIMONO」との連動、複製品を展示した特設コーナーの設置、「初音ミク」とのコラボレーションによる〈冬木小袖〉ミクグッズの展開、光琳ゆかりの地・深川の伝統工芸職人さんの手による魅力的な返礼品の開発・・・などなど、〈ぶんかつ〉だけでなく、たくさんの方々の力をお借りして実現した取り組みも多くあります。
〈冬木小袖〉の複製品も展示するトーハク内の特設コーナー
返礼品の一つである包み袱紗
光琳が逗留した「冬木家」のあった深川の職人さんに〈冬木小袖〉をモチーフに作っていただきました
「〈冬木小袖〉ミク」の等身大パネルを制作し、ご来館者に楽しんでいただきました
プロジェクト開始当初は、本当に1500万円 という大金が集まるのだろうか、という不安がありましたが、なんと想定よりも1年も早く、目標金額に到達することができました。
新型コロナウィルス感染症の影響もあり、博物館自体が休館となる期間があったにもかかわらず、多くの皆様にご支援をいただき、心から御礼申し上げます。
すべてをここで紹介できませんが、「未来に繋がる!お手伝いが出来て幸せです」「美しいものは美しい、すごいものはすごい。自分の感動を子供の感動につなげたい」「今できる最新の方法で日本の美術工芸を長く継承してほしい」などなど、ご寄附とあわせてたくさんの応援メッセージもお寄せいただきました。なかには、「ご自身の健康状態から今は東博に足を運ぶことができないけれど役にたてればと思い、知り合いに頼んで郵便局から寄附しました」という声もいただきました。
多くの方々のあたたかいご支援に感謝感激です。
〈冬木小袖〉は多くの方々のご支援を得て、これから約2年をかけて修理を行ない、2023年には修理後の美しい姿をトーハクでご披露する計画です。
〈ぶんかつ〉初めてのファンドレイジング活動は、文化財の継承への思いに賛同し、ともに歩んでくださる方々が日本全国に(おそらくは、世界各地にも)大勢いらっしゃること、個々人の集まりが大きな成果につながることを実感できた ように思います。
ご期待にしっかりと応え、今後も活動を継続していきたいと思います。
皆様の引き続きの応援もよろしくお願いいたします。
次回のブログはデジタル資源担当よりお送りします。どうぞお楽しみに。
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- 2021年07月08日 (木)