ぶんかつブログ

文化財資料の新たな活用 ほんものと複製の相乗効果

文化財活用センター〈ぶんかつ〉では、文化財の複製をつかって、文化財に親しむきっかけや、より多くの魅力を知ってもらえる機会となるような事業に取り組んでいます。複製は、ほんものの文化財ではできない展示も可能になるからです。
新潟県の十日町市博物館で開催中の、夏季特別展「「形をうつす」―文化財資料の新たな活用―」(~7/4まで)では、東京国立博物館〈トーハク〉から貸し出しする文化財も含むほんものと、複製が一緒に展示されているのですが、ほんものと複製を一緒に展示することで、どんな効果があるのでしょうか。

〈ぶんかつ〉の取り組みともリンクする「文化財資料の新たな活用」をテーマにしたこの展覧会について、展示を企画された十日町市博物館副館長の菅沼亘さんにお話しを伺いながらご紹介いたします。
※本展は令和3年度《地域ゆかりの文化資産地方展開促進事業(先端技術を活用した文化資産コンテンツ制作プロジェクト)》において、〈ぶんかつ〉が協力しています。


昨年リニューアルした博物館の建物は「雪と信濃川、織物、火焔型土器」がモチーフになっています。

まずは本展に展示されている、ほんものの文化財からご紹介しましょう。
十日町市博物館では、国宝「火焔型土器(No.1)」(新潟県笹山遺跡出土)が常設展示されていますが、今回はトーハクより重要文化財「遮光器土偶」(青森県つがる市木造亀ヶ岡出土)が出品されます。


国宝「火焔型土器(No.1)」新潟県十日町市笹山遺跡出土 十日町市蔵(十日町市博物館保管) (小川忠博氏撮影)


重要文化財「遮光器土偶」 青森県つがる市木造亀ヶ岡出土 東京国立博物館所蔵

縄文時代ときいて多くの人が思い浮かべるだろうこの2つの文化財。実は国内で一緒に展示されるのは今回が初めてだそう。これだけでも考古ファンはわくわくしてしまいますが、今回はこの他にも数々のスター級の考古資料の複製が一堂に会します。


国宝土偶5点の複製も集結!

さらに、トーハクからは、重要文化財「遮光器土偶」(青森県つがる市木造亀ヶ岡出土)、重要文化財「みみずく土偶」(埼玉県さいたま市 真福寺貝塚出土)、「土偶(通称:ポーズ土偶)」(山梨県笛吹市御坂町上黒駒出土)(いずれも原品は東京国立博物館所蔵)の樹脂製の複製も貸し出ししています。これは縄文時代にトリップできそう!


トーハクから貸し出し中の複製もずらり

触れることができます


左:重要文化財「遮光器土偶」(複製)青森県つがる市木造亀ヶ岡出土、中:重要文化財「みみずく土偶」(複製)埼玉県さいたま市 真福寺貝塚出土、右:「土偶(通称:ポーズ土偶)」(複製)山梨県笛吹市御坂町上黒駒出土

▷Colbaseで「重要文化財 遮光器土偶」の情報を見る

▷Colbaseで「重要文化財 みみずく土偶」の情報を見る

▷Colbaseで「土偶(通称:ポーズ土偶)」の情報を見る

菅沼さん、今回の展覧会はほんものと複製を活用した展示ですが、展覧会の狙いはどういったところにありますか?

十日町市博物館副館長 菅沼さんより
「普段は、展示ケース越しにしか見ることのできない国宝や重要文化財について、その高精細複製品を間近で見て、触れてもらうことで、多くの方に文化財をより身近に感じてもらいたいと思います。 今回の展覧会を思い付いたきっかけは、2016年(平成28)にトーハクと十日町市博物館との共同研究で行なわれた、国宝・火焔型土器(当館所蔵)の非接触方式による三次元計測です。2018年(平成29)には、この計測データを利用して高精細複製品(陶製)を製作し、以後、「触れることのできる国宝」として活用しています。
今回、トーハクからお借りしている土偶の複製品も同様の方法で製作され、実物と同じ大きさ、重さです。これらの複製品に触れることで、展示ケース越しに実物を見た時には気づかなかったことを発見することができます。例えば、火焔型土器で最も特徴的な装飾の鶏頭冠突起を触った小学生が、ギザギザ頭の突起を握って自分の手とピッタリだと言いました。こんなことは、複製品に触れてみないとわかりません。」

「展示されている高精細複製品は、触れることもできます。ただし、新型コロナウイルス感染症対策のため、ビニール手袋の着用をお願いしています。また、国宝・火焔型土器の複製品は陶製(焼き物)です。硬いものが当たると割れてしまいますので、やさしく取りあつかってください。」

菅沼さん、ありがとうございました。
360度どこからみても造形が魅了的な縄文時代の資料は触れることで普段の展示でみるよりも発見が多そうですよね。

ほんものも展示されている「遮光器土偶」については、前後に分割をして土偶の内側をみられるようにした複製の展示もあります。これは、原品の3D計測データとX線CTデータをもとに制作したもので、ほんものの土偶を割ってみることはできませんが、内側に残された土偶が作られたときの指の跡まで再現していて触れることができます。


指の跡に自分の指を重ねてみると気が付くかもしれません。どうやらこれは右利きの人が作ったのだということも触ることで実感できます。

現代の最新技術を使って縄文時代とつながっているような気持ちになってきますね。

 


会期中には特設ミュージアムショップもオープン

ところで、本展は十日町市博物館のリニューアルオープン1周年記念ということですが、1周年を記念して博物館の愛称を募集されているそうです。

▷博物館の愛称募集の情報を見る[https://www.tokamachi-museum.jp/news/博物館の愛称を募集します/]

菅沼さん、どんな愛称がよさそうでしょうか?

「十日町市博物館を略して「十博」(トーハク)が良いかと考えたのですが、東京国立博物館の愛称「トーハク」と被ってしまいます。駄目でしょうか。また、当館では秋に「岡本太郎と縄文」をテーマにした、新館オープン1周年記念特別展の第2弾を予定しています。ご期待ください。」

なんと!たしかに、十日町市博物館も「トーハク」ですね。素敵な愛称、楽しみにしています!

6月1日より上野のトーハクも再開することができましたが、このような状況下で県をまたぐ移動が難しく筆者もまだこの展覧会を見ることができていません。会場に行ける日をいまかいまかと楽しみにしています。お近くにお住まいの方はマスクの着用や手指の消毒など、新型コロナウイルス感染拡大防止に気をつけながら十日町市博物館を訪れてみてくださいね。

夏季特別展「形をうつす」―文化財資料の新たな活用―

2021年6月1日(火)~7月4日(日)

十日町市博物館(〒948-0072 新潟県十日町市西本町一丁目448番地9)

展覧会チラシ https://www.tokamachi-museum.jp/engine/wp-content/uploads/2021/05/ev210601.pdf

公式サイト https://www.tokamachi-museum.jp/

公式Twitter https://twitter.com/tokamachimuseum

カテゴリ: 複製の活用