ぶんかつブログ

茨城県立歴史館でサムライ体験

文化財活用センター〈ぶんかつ〉は、文化庁より「令和2年度 地域ゆかりの文化資産地方展開促進事業(先端技術を活用した文化資産コンテンツ制作プロジェクト)」の委託を受け、日本各地のミュージアムにおいて複製品や先端技術を使った文化財活用にも力を入れています。

今回は2021年2月20日(土)からスタートした茨城県立歴史館での甲冑レプリカの展示の様子をご紹介いたします。


入口すぐのロビーにどーん!この迫力!

徳川家康に仕えた四天王のひとり榊原康政(1548~1606)所用の具足。重要文化財「黒糸威二枚胴具足」(東京国立博物館所蔵)のレプリカで、実際に着用することができます。
徳川家にゆかりのある水戸市の茨城県立歴史館での開催は、地域の歴史や文化にふれる効果的な体験が期待されると、同館との協力で実現しました。


(左)重要文化財 黒糸威二枚胴具足 江戸時代・17世紀 東京国立博物館
(右)重要文化財 榊原康政像 江戸時代・17世紀 東京国立博物館

甲冑のレプリカは、みなさんもこれまでにご覧になる機会があったかもしれません。ですが、この茨城県立歴史館のために制作したレプリカ、より本物に近づけるための特別なカスタマイズがされていて、通常のレプリカとはちょっと違うんです。
レプリカ制作の監修を担当した東京国立博物館(トーハク)の佐藤寛介研究員にこだわりのポイントを教えてもらいました!

着用した姿と台に平置きした状態で展示しています。

胸の部分には、杏葉(ぎょうよう)という胸もとを守るパーツがあり、中央に金色の金具で榊原家の家紋である源氏車紋(げんじぐるまもん)が飾られています。
この杏葉の縁取りにご注目ください。一般的なレプリカでは省略されてしまうこともあるようですが、今回は本物と同じように銀色の金具で縄目の縁取りを再現しています。

腰を守る草摺(くさずり)の部分は、鉄板を黒色の組紐で上下につないでいるのですが、この組紐にもこだわりが。化学繊維のようにも見えますが、本物にあわせて絹を使っています。
一見してわからないところにも研究員と制作に携わった職人さんの気概が伝わってきます。

兜の部分をみてみましょう。

この兜は表面に筋がある筋兜といいますが、細長い鉄板ひとつひとつを貼り合わせてヘルメット形にしています。この筋はその鉄板のつなぎ目。本物の「黒糸威二枚胴具足」では62枚の鉄板でつくられており、今回は制作の都合で枚数こそ減らしてはいるものの、本物と同様の構造になっています。強度が高まりしっかりと頭が守られそうですね。

次に肩の部分をご覧ください。首から肩にかけての、小鰭(こびれ)と呼ばれる部分です。赤色の布地に白糸で白糸で六角形の模様が縫ってあります。じつはこれ、単なる装飾ではなくて、この六角形のひとつひとつの中に六角形の鉄片が入っているんです。ただのおしゃれではなかったんですね!

一枚板ではなくパーツが独立しているので驚くほど柔軟に動かすことができます。通常のレプリカでは、見た目の刺繍のみを施したものも多いそうなのですが、今回のレプリカはこの部分も本物で用いられている手法をきちんと再現しています。
首、肩の部分など曲げ伸ばしよく動かす箇所に使用されていて、当時の甲冑職人が強度と動きやすさを追求したあとが感じられます。こういったこだわりは、実際に身に着けてみることで実感していただけると思います。

最後に足元をご覧ください。


着用体験用の毛沓(けぐつ)風スリッパ。もちろん履くことができます。

こちらは榊原康政像(東京国立博物館)で康政が着用している毛沓からイメージして制作しました。どうですか?そっくり!


重要文化財 榊原康政像(部分) 江戸時代・17世紀 東京国立博物館

本来は展示するだけではなく、甲冑を着てみるワークショップをあわせて行なう予定で準備を進めていたのですが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために残念ながら開催を見送ることになりました。 しかしながら、このレプリカは今後も茨城県立歴史館で使っていただけることになっていますので、事態が落ち着き、着付け体験が開催される折にはぜひ参加してみてください。
茨城県立歴史館はこれまでにも甲冑の着用体験や、十二単の着付け体験などを積極的に開催されていて、新しく仲間入りするこの榊原康政の甲冑も今後の活躍が楽しみです。サイズは大人用と子ども用を用意していますので、親子での参加もおすすめ。いずれはたくさんの海外からの観光のお客さんにも日本文化を楽しんでもらえるきっかけとなりそうです。


現在は着用体験はしていただけませんが、こんな風に一緒に写真を撮ることが可能です。
格好よくポーズきめてみてください。(今回の複製事業を担当した〈ぶんかつ〉高橋さん)

ところで、甲冑ってどうやって着付けるの?そんなときはこちらの動画がおすすめ。今回、レプリカの監修をし、このブログのためにお話を聞かせてくれた佐藤さんが着付けの紹介をしてくれます。動画で使用されているのも黒糸威二枚胴具足です。

東京国立博物館 YouTubeチャンネル
「日本のよろい、そのしくみ」
https://www.youtube.com/watch?v=VWaQTChZOBA


茨城県立歴史館 外観

茨城県立歴史館は、JR水戸駅の北口バス乗り場から、バスに揺られること10分。駐車場もあるのでお車でもご来館いただけます。
また、現在は特別展「鋼と色金-茨城の刀剣と刀装-」(~4月11日まで)が開催中。刀剣の制作工程をわかりやすく紹介したコーナーや、鑑賞のポイントなど丁寧な導入があるので刀剣をはじめてみる人も大丈夫。自分のお気に入りの一口を探す気持ちで展示を楽しんでみましょう。第一章、2メートルを超える国宝「直刀」は圧巻! 茨城ゆかりの刀剣や刀装がこれでもかと展示されていますので、時間に余裕をもっていくのがよいですよ。


「鋼と色金-茨城の刀剣と刀装-」展覧会チラシ

水戸には茨城県立歴史館のほかにも、徳川ミュージアムや、水戸芸術館、茨城県近代美術館など複数の文化施設が点在し、1日たっぷり楽しめます。ちょうど梅が見ごろの偕楽園も茨城県立歴史館から徒歩10分ほど。
まだまだ、遠方への旅行や行楽はこれまで通りとはいきませんが、マスクや消毒などルールを守って、地域ゆかりの文化に触れるお出かけもいいですね。


つぼみがほころぶ偕楽園の梅

鋼と色金-茨城の刀剣と刀装-

日時:2021年2月20日(土)~ 4月11日(日)
9:30~17:00(入館は16:30まで)

会場:茨城県立歴史館(〒310-0034 茨城県水戸市緑町2-1-15)

休館日:月曜日

料金:一般 610円、大学生 320円、70歳以上 300円

※会期、開館日、開館時間、入館方法等については、諸事情により変更する場合がありますので、茨城県立歴史館ウェブサイトでご確認ください。

茨城県立歴史館ウェブサイト https://rekishikan-ibk.jp/

カテゴリ: 複製の活用