ぶんかつブログ

〈冬木小袖〉修理プロジェクト1年間を振り返って

江戸時代の絵師・尾形光琳が秋草を描いたきもの、〈冬木小袖〉を未来につなぐ寄附プロジェクトをご存知ですか?

白い絹地に桔梗や菊、萩や芒(すすき)がのびやかに描かれた「小袖 白綾地秋草模様(こそで しろあやじあきくさもよう)」。こうした「描絵小袖」は、まさに一品ものの特注品、当時裕福な女性の間で流行していました。このきものは、江戸・深川の材木問屋、冬木家の夫人のために描かれたといわれ、〈冬木小袖〉と呼ばれています。
「風神雷神図屏風」「八橋蒔絵螺鈿硯箱」といった名宝の作者としても知られる尾形光琳が、自ら筆を執った作品であること、なによりその美しさで広く知られてきました。

重要文化財  小袖 白綾地秋草模様  尾形光琳筆 江戸時代・18世紀前半

 

制作から約300年。少しずつ劣化が進み、現在の〈冬木小袖〉には汚れや糸の断裂がみられます。そして前の修理で施した補強の糸が原因となって、時間の経過とともに表地に傷みが生じています。


補強の並縫いが負担となり傷みが進行している部分

襟から肩にかけて生地が傷んでいる様子

そこで、2020年1月、修理のために皆さまからご寄附を募る〈冬木小袖〉修理プロジェクトが始まりました。プロジェクト開始から1年を迎えるにあたって、改めてご寄附の方法を紹介しつつ、感謝の気持ちをこめてこれまでの歩みを振り返ります。

1.ウェブサイトでのご寄附

ウェブサイトでのご寄附を1,000円から承っています。これまでなんと166名もの方に、3,496,000円のご寄附をいただきました。

人間国宝の室瀬和美先生監修の蒔絵箸置きなど、ご寄附額に応じたオリジナルの返礼品もご用意。ご好評いただいています。ウェブサイトでは、ご寄附者のお名前を顕彰するとともに、皆さまからのメッセージも掲載しています。

▷〈冬木小袖〉寄附ページを見る


返礼品の一例 「光琳波」と「冬木小袖」をモチーフにした蒔絵の箸置きをペアで

2.トーハク館内募金箱へのご寄附

2020年6~8月に東京国立博物館(トーハク)で開催した特別展「きもの KIMONO」で〈冬木小袖〉が展示されました。これにあわせてトーハク平成館1階に募金箱を設置し、多くのご来場者に募金いただきました。
募金コーナーでは複製きものを展示しました。同時代に描かれた絵画作品をもとに、裾を引きずって、帯は腰のあたりで前結びに。当時の着方を再現して多くの反響をいただきました。

また、本館1階11室(彫刻展示室)脇の階段室には、常設の募金コーナーを設けています。
ご好評いただいた複製きものは現在こちらに展示中です。染織担当研究員による〈冬木小袖〉解説動画も上映しています。

これまで館内募金コーナーに寄せられた寄附金は、2,379,962円。心から感謝申し上げます。
小さな〈冬木小袖〉がつくれるオリジナル折り紙はここでしか手に入れることができません。トーハクご来館時には、どうぞお立ち寄りください。

▷Youtubeで〈冬木小袖〉解説動画を見る


複製きもの展示の様子

常設の募金コーナー(本館1階11室脇の階段室)

折り図を見て折っていくと小さな〈冬木小袖〉に。

3.グッズのご購入

トーハクミュージアムショップではレターセットや手ぬぐいなど〈冬木小袖〉モチーフのグッズをたくさん販売しています。ご購入いただくと売上の一部が本プロジェクトに寄附されます。

初音ミクとコラボレーションした、〈冬木小袖〉ミクグッズも発売中。ミクの年齢にあわせた振袖姿で、帯には光琳の作品から流水紋や燕子花(かきつばた)の模様を取り入れたとても華やかなデザインです。
クリアファイルやポスターなど、ウェブサイトでも販売していますので、どうぞご覧ください。

▷〈冬木小袖〉ミクのページを見る


充実のラインナップでお待ちしています

特別展期間中は等身大のミクパネルも。お揃いのポーズで記念撮影!

 

たくさんの方に支えられ、ご寄附総額は8,745,769円(2021年2月5日時点)に達しました。
ご寄附いただいた皆さま、協賛企業である株式会社やまと、株式会社 東京美術倶楽部、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社の皆さまに心より感謝申し上げます。

〈冬木小袖〉は先日、修理工房のある京都へ送られました。これから約2年かけて本格修理が行なわれます。
プロジェクト達成まであと630万円。これからも応援、ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

▷〈冬木小袖〉修理プロジェクトのページを見る

最後に…現在〈冬木小袖〉修理プロジェクトでは、Nintendo Switchのゲームソフト『あつまれ どうぶつの森』でお使いいただける〈冬木小袖〉のマイデザインを制作中です。
詳細は後日のブログで。どうぞお楽しみに!