進化する所蔵品データベースと調査研究活動
はじめまして。デジタル資源担当の今井です。
みなさんは、所蔵品のデータベースをどのようにご利用されているでしょうか。展示場でご覧になった文化財についてより深く知るため、あるいは大学のレポートなどである作家の業績について調べるため、また、ミュージアムの業界関係者ならば、特別展の出品候補作品の選定のためといったこともあるかもしれません。
国立文化財機構では、「e国宝」[http://www.emuseum.jp/]と「ColBase(コルベース)」[https://colbase.nich.go.jp/]の2つのデータベースを公開しています。e国宝の方は、4つの国立博物館が所蔵する国宝と重要文化財について、高精細画像をスマホなどで気軽にお楽しみいただくことを目的としています。これに対しColBaseは、網羅的・体系的な所蔵品のデータベースとなっています。
これらのデータベースの運用は、実はミュージアムの調査研究活動と密接な関係があるのです。作品の名称や作者、あるいは時代などの表記が、最新の研究水準に照らして適切なものになっていなければ、検索してもヒットせず、データベースとしての機能を果たせません。
染織の調査の様子
ミュージアムの活動には、収集、保管、保存・修復、展示・公開、教育・普及などさまざまな側面がありますが、なかでも文化財の新たな受け入れは、根幹をなす活動の一つです。
文化財を購入したり、寄贈を受ける際、研究員は、学界の最新の研究成果をふまえて文化財を調べ尽くし、文化財についてのさまざまなデータを準備して会議に諮ります。その結果、文化財は新たに所蔵品に加わるのです。
例えば、作品の寸法も文化財のデータのひとつです。
データベース運用について、東京国立博物館(トーハク)を例にお話しします。トーハクには150年近い長い歴史があるので、古いデータがそのまま残っていることもしばしばあります。データベース構築だけのための作業をしていても業務の効率が上がりませんので、展示プランの作成、所蔵品の貸し出し、あるいは文化財の修理などの際の事務手続きは業務用のデータベースを用いて行ない、文化財が何らかの形で活用されると、その都度データもアップデートされるようになっています。これと並行して、所蔵品目録の刊行などに合わせて、悉皆的に所蔵品のデータを整備する作業も、計画的に実施しています。こうして、データベースは日々成長しています。
現在、4つの国立博物館の業務用データベースでアップデートされた情報が、すみやかにColBaseに反映される仕組みを準備中で、2020年にリリースする予定です。これにより、ColBaseで公開している文化財のデータの精度は、飛躍的に向上します。同時にColBaseに掲載する画像の高精細化を進めてまいります。
今後のColBaseの進化に、どうぞご期待ください。
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- 2019年09月10日 (火)