拡充した貸与促進事業 2025年度開催の8つの展覧会をご紹介

みなさん、こんにちは。
新年度を気持ちよくスタートされたことと思います。
2025年度で9年目を迎えた貸与促進事業もまた新たな一歩を踏み出しました。
みなさんのお近くのミュージアムで国立文化財機構が所蔵する文化財をより多くご覧いただけるよう、「国立文化財機構所蔵品貸与促進事業」と名称を変え、従来の4つの国立博物館に加えて東京・奈良の2つの文化財研究所の所蔵品もお貸し出しの対象といたしました。
事業を拡充してさっそく、奈良文化財研究所の所蔵品をお貸し出しする展覧会も採択され、今年度は島根、兵庫、長野、埼玉、山口、愛媛県内の8つのミュージアムに、国立文化財機構が所蔵する各地域にゆかりのある文化財73件のお貸し出しが予定されています。
今年度も魅力あふれる必見の展覧会が目白押しです!じつは、まもなく開幕を迎える展覧会も。そして夏から秋にかけてぞくぞくと開幕する展覧会に、貸与促進担当もそれぞれのミュージアムとの調整に大忙しです。
それでは、各ミュージアムからお聞きした展覧会の「みどころ」を盛り込んで、さっそく開催順にご紹介いたします!
1.松江歴史館
「小林如泥-その技、 神の如し―」 貸与予定件数:2件
会期:2025年4月25日(金) ~ 2025年6月15日(日)
ホームページ: https://matsu-reki.jp/
X: https://x.com/matsureki/
Instagram: https://www.instagram.com/matsue_rekishikan/
Facebook: https://www.facebook.com/matsu.reki
みどころ: 小林如泥(こばやしじょでい・1753~1813)は、松江藩松平家七代藩主松平治郷(まつだいらはるさと、号 不昧・ふまい)(1751~1818)に仕えた指物師(さしものし)です。小林如泥の作品と如泥に影響を受けた人々の作品をとおして、松江が誇る木工文化をご紹介します。如泥は、透かし彫りや厚材の扱いに優れ、「その技、神の如し」とたたえられた技は、梶谷東谷軒(かじたにとうこくけん・?~1853)や青山泰石(あおやまたいせき・1864~1933)などの後世の作り手にも影響を与えました。松江藩松平家の茶室に用いられたと伝わる「袖障子」(東京国立博物館蔵)は如泥の代表作で、1.7cmほどの厚板に陽刻と陰刻で麻の葉透かしの文様をあらわし、如泥の技術の高さをあらわしています。


東京国立博物館から小林如泥作「袖障子」、「茶箱」の2件を貸し出す予定です。
2.兵庫県立考古博物館
「弥生の至宝 銅鐸」 貸与予定件数:7件
会期:2025年4月26日(土) ~ 2025年6月29日(日)
ホームページ: https://www.hyogo-koukohaku.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/hyogo_koukohaku/
Facebook: https://www.facebook.com/hyogokoukohaku
みどころ: 日本を代表する青銅器の一つである「銅鐸」。弥生時代の祭祀に使用された神秘のカネである銅鐸は、兵庫県で67口が出土しており日本一の出土量を誇ります。また、県内からは銅鐸の鋳型も出土しており、「石井谷(いしいだに)型」と呼ばれる銅鐸は播磨地域で作られていたと考えられています。いにしえの美と技術の結晶である銅鐸を大阪・関西万博の開催にあわせて展示するとともに、鋳型をはじめとした鋳造関連資料や後世に描かれた絵図など、さまざまな視点から銅鐸について考えます。
重要文化財 外縁付鈕2式銅鐸 弥生時代(中期)・前2~前1世紀 兵庫県豊岡市気比字溝谷出土 青銅製 東京国立博物館蔵
東京国立博物館から、重要文化財である豊岡市気比出土銅鐸をはじめとした銅鐸7件を貸し出す予定です。
3.神戸市立博物館
「銅鐸とムラ-国宝 桜ヶ丘銅鐸をめぐる弥生の営み-」 貸与予定件数:2件
会期:2025年7月5日(土) ~ 2025年8月31日(日)
ホームページ: https://www.kobecitymuseum.jp/
X: https://x.com/kobemuseum
Instagram: https://www.instagram.com/kobemuseum/
Facebook: https://www.facebook.com/kobemuseum
みどころ: 桜ヶ丘銅鐸・銅戈(どうか)群は、昭和39年(1964)12月10日、神戸市灘区桜ヶ丘町にて偶然発見されました。銅鐸14点と銅戈7点の埋納、両面に絵画をあらわした銅鐸の存在などの重要性から、昭和45年(1970)に一括して国宝に指定されます。桜ヶ丘銅鐸・銅戈群のように銅鐸を複数埋納することの意味を各地の複数埋納事例から考えます。また、桜ヶ丘銅鐸・銅戈群が発見された六甲山南麓は、銅鐸の出土が集中する地域として知られています。本展では六甲山南麓の銅鐸が一堂に会するとともに、周辺集落〈ムラ〉の様子を出土資料でたどります。
扁平鈕式銅鐸 弥生時代(中期)・前2~前1世紀 兵庫県神戸市東灘区渦森台出土 青銅製 東京国立博物館蔵
東京国立博物館から神戸市出土の銅鐸2件を貸し出す予定です。
4.長野県立歴史館
令和7年度秋季企画展「疫病退散! 除災祈願の考古学 ~木製祭祀具にみる古代の祈り〜 」 貸与予定件数:20件
会期:2025年10月4日(土) ~ 2025年11月16日(日)
ホームページ: https://www.npmh.net/
X: https://x.com/official_NPMH
Facebook: https://www.facebook.com/naganokenriturekisikan
みどころ: 現代と同じように、相次ぐ災害の発生や感染症等が蔓延した飛鳥・奈良時代。人々は水辺で木製祭祀(さいし)具を用いた祭祀を行い、疫病退散や除災を祈願しました。長野県では千曲市屋代遺跡群(やしろいせきぐん)から大量の木製祭祀具や木簡が出土し、地方での祭祀の様子が明らかとなってきました。今回は、藤原京・平城京の資料も展示し、当時の人々がこうした災厄にどのように向きあったかを見ます。また、あわせて古墳時代中期に遡る水辺の祭祀や中世の呪符木簡、そして現代まで続く祓いの行事などの展示も行い、疫病退散・除災祈願の歴史をたどっていきます。
人形(ひとがた) 奈良時代 奈良文化財研究所蔵
奈良文化財研究所から人形や斎串(いぐし)などの考古資料20件を貸し出す予定です。
5.遠山記念館
「中国絵画への憧憬―楊文驄「江山孤亭図」と江戸時代の文人たち―」 貸与予定件数:6件
会期:2025年10月4日(土) ~ 2025年11月16日(日)
ホームページ: https://www.e-kinenkan.com/
みどころ: 明の遺臣である楊文驄(ようぶんそう・1597~1646)の描いた「江山孤亭図(こうざんこていず)」は、江戸時代から山本梅逸(やまもとばいいつ・1783~1856)や頼山陽(らいさんよう・1781~1832)といった文人の間で、御神体のように崇拝されていた作品です。そして文人趣味が京都から関東へと広がる中で、この作品が最後にたどりついたのが埼玉県の遠山家だったのです。本展はこの「江山孤亭図」に加え、稀少な楊文驄の絵画作品を8点集めた、これまでにない展示となります。また別室には、楊文驄にあこがれ、付属品に讃を付した日本の文人画家たちの作品を集めました。この中国と日本の文人画の違いを、ぜひ展示室で見比べてみてください。
渓亭山色図(けいていさんしょくず) 楊文驄筆 明・1637年 絖本墨画 京都国立博物館蔵
東京国立博物館から「山水図巻」1件を、京都国立博物館からは「渓亭山色図」など5件を貸し出す予定です。
6. 茅野市八ヶ岳総合博物館
「古墳の茅野-地域のなかの古墳-」 貸与予定件数:9件
会期:2025年10月4日(土) ~ 2025年12月14日(日)
ホームページ: https://www.city.chino.lg.jp/site/y-hakubutsukan/
みどころ: 茅野市域は豊かな縄文遺跡群とともに、諏訪地方でも古墳が集中する地域の一つです。華麗な装飾大刀や独特の石室など、小規模ながらも豊かな歴史を物語る遺構・遺物が今に残されています。近年も永明寺山古墳(えいめいじやまこふん)の発掘や、人々の生活の様子の一端を垣間見せる集落遺跡など、新たな発見が相次いでいます。
本展では、茅野市域に築造された古墳の被葬者像や社会的背景に迫るとともに、従来あまり知られていなかった茅野市域の古墳時代の造形美術の優品を多数展示することで、地域の新たな魅力を創出する機会となることを目指します。
重要美術品 子持高坏(こもちたかつき) 古墳時代・6世紀 長野県茅野市疱瘡神塚古墳出土 須恵器 五味健藏氏寄贈 東京国立博物館蔵
東京国立博物館から茅野市疱瘡神塚古墳(ほうそうがみづかこふん)出土の考古資料9件を貸し出す予定です。
7.下関市立考古博物館
下関市立考古博物館開館30周年記念特別展「上ノ山古墳と穴門の趨勢-本州最西端の後期古墳と集落-」 貸与予定件数:15件
会期:2025年10月11日(土) ~ 2025年12月7日(日)
ホームページ: https://www.shimo-kouko.jp/
X: https://x.com/shimokouko
Facebook: https://www.facebook.com/shimonosekicity.koukohaku
みどころ: 下関市立考古博物館は2025年に開館30周年を迎えます。その記念特別展として、これまで本市を代表する6世紀前半頃の前方後円墳とされ、その優れた副葬品からヤマト王権の関与が窺える上ノ山古墳(うえのやまこふん)の実像に迫るとともに、上ノ山古墳が所在しその後の穴門国造(あなとのくにのみやつこ)の中枢域と目される市域南部における古墳時代後期の古墳と集落の歴史的意味を考察します。本展では、本市の古墳時代後期の有力古墳や集落出土資料を一堂に会し、穴門におけるヤマト王権と在地有力首長の趨勢から、後に穴門から長門(ながと)となり国府設置に至った地域的特性に迫ります。
六鈴鏡(ろくれいきょう) 古墳時代・6世紀 山口県下関市 上ノ山古墳出土 青銅製 山口県豊西下村寄贈 東京国立博物館蔵
東京国立博物館から上ノ山古墳出土品を中心に15件を貸し出す予定です。
8.愛媛県歴史文化博物館
「伊予の経塚名品展―堂ヶ谷経塚と松渓経塚― 」 貸与予定件数:12件
会期:2026年2月14日(土) ~ 2026年4月5日(日)
ホームページ: https://www.i-rekihaku.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/ehime_rekihaku/
みどころ: 経典を容器に納め埋めた経塚は、経典をはるか未来まで残すためにつくられたタイムカプセルです。平安時代末期より極楽往生や追善供養のため盛んに営まれるようになり、鎌倉時代にかけて流行しました。本展では保存修理を行った県内最古の紀年銘をもつ堂ヶ谷経塚(どうがやきょうづか)出土品を初公開します。さらに初の里帰りとなる松渓経塚(まつたにきょうづか)出土品や陶磁器としても価値の高い石手寺経塚(いしてじきょうづか)出土品など、県内各地の経塚出土の名品や埋納された仏教遺物も紹介。経典を埋めるという行為や込められた祈りに注目し、経塚の魅力に迫ります。
経筒(愛媛県松溪経塚出土) 鎌倉時代・徳治元年(1308) 愛媛県西予市野村町松溪出土 銅板製 鍍銀盛蓋 奈良国立博物館蔵
奈良国立博物館から松渓経塚出土経筒など12件を貸し出す予定です。
以上、今年度に開催される8つの展覧会をご紹介いたしました。
お近くのミュージアム、帰省や旅行を検討されている先などで開催される展覧会へ、ぜひおでかけいただけるとうれしいです。
展覧会の開催の様子などは、今後こちらでも案内していきます。
▷貸与促進事業 展覧会情報
貸与促進担当は今年度も、国内各地のミュージアムに対し、国立文化財機構が所蔵する各地域にゆかりのある文化財を貸し出し、文化財活用センターが作品輸送費や梱包・開梱・展示・撤収作業費等を支出する貸与促進事業を通じて、魅力的な展覧会の開催を応援してまいります。
- posted by
- at
- 2025年04月10日 (木)