ぶんかつブログ

国宝屏風を楽しむための新たな「インクルーシブ」サービスを公開!

あらゆる場所で「バリアフリー」が求められている昨今、博物館も例外ではありません。文化財活用センター〈ぶんかつ〉もまた、博物館における「バリア」=「壁」を取り除き、一人でも多くの方々が文化財と出会い、その魅力を十分に楽しめるようなプログラムやサービスの開発に取り組んでいます。

3月19日(火)から4月7日(日)まで、東京国立博物館・平成館1階のガイダンスルームで公開中の実証実験「8Kで楽しむ国宝屏風『洛中洛外 京めぐり』」もその一つ。本ブログでは、デジタル技術を使い、新たに開発した「インクルーシブ」なサービスをご紹介いたします。

早速、会場に行ってみましょう!


8Kで楽しむ国宝屏風「洛中洛外 京めぐり」会場風景

右手のモニターに映し出される国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」(東京国立博物館蔵)の超高精細な拡大映像にご注目。これは、東京国立博物館とNHKの共同研究「みんなの8K文化財プロジェクト」で制作された8K3DCGを用いた映像です。
「食」「享楽」「美」「芸能」「歴史」「文化」という切り口で、それぞれ土井善晴さん〔料理研究家〕、伊集院光さん〔タレント〕、IKKOさん〔美容家〕、林家正蔵さん〔落語家〕、磯田道史さん〔歴史学者〕、山崎怜奈さん〔タレント〕が、ご専門分野やご興味のある視点から、屏風の中に描かれたさまざまな場面に注目し、描かれている人やモノを読み解き、京の町を紹介していきます。


料理研究家の土井善晴さんは、屏風の中に描かれた「しじみ汁」を食べている人物に注目!


8K3DCGの高精細映像では、絵師・岩佐又兵衛の緻密な筆致を堪能できる

「舟木本」の名で親しまれるこの国宝屏風は、江戸時代に活躍した絵師・岩佐又兵衛が、約400年前の京都の街並みを俯瞰するような視点で描いたパノラマ図。清水寺、八坂神社、二条城などの名所に加え、武士や商人のみならず、かぶき者や酔っ払い、祇園祭の様子まで、じつに老若男女2500人を超える人びとが遊び、暮らすさまが描かれています。ほかの「洛中洛外図」に比べても、「舟木本」は人物の描写が、非常に表情豊かで生き生きと個性あふれている点がユニークです。

国宝「洛中洛外図屏風(舟木本)」 岩佐又兵衛筆 江戸時代・17世紀 東京国立博物館蔵

この映像コンテンツに見覚えがある方もいらっしゃるかもしれません。実はこれ、2022年に開催された東京国立博物館創立150年記念 特別企画「未来の博物館」で初公開されたもの。
前回公開時に寄せられた「遠くに住んでいる方」、「外国人の方」、「聴覚障がいのある方」でも楽しめるようにしてほしい!というお声にお応えして改修を行ない、このたび再公開をすることになりました。

改修にあたっては、巨大画面用の特殊映像を一般的な映像規格に変換し、市販のモニターで上映可能に。今後、このコンテンツのお貸し出しや巡回にも対応することができます。そしてモニター画面上には日本語と英語のバイリンガル字幕を表示、さらに手元のスマートフォンやタブレットで言語字幕や英語の音声、手話CGのサービスが利用可能となり、言語や障がいの壁を越えて「舟木本」の魅力をお届けできるようになりました。

それでは、新サービスを体験してみましょう!


QRコードを読み込んで、会場内の特設Wi-Fiに接続、コンテンツをSTART!


選んだ言語の字幕が手元の画面に流れ始めます。


英語の字幕画面イメージ


英語は音声でも聴くことが可能(※利用時はイヤホンの着用をお願いしています)

歴史学者の磯田道史さんがナビゲートする「歴史」では、NHKグループが筑波技術大学の大杉豊教授の監修のもと開発した「手話CG」サービスの利用が可能。手話が得意なデジタルヒューマン「KIKI」が、聴覚障がいがある利用者の皆さまにもわかりやすく、屏風の見どころを紹介します。
まるで人間のような「KIKI」の自然な表情や手の動きは、手話ネイティブの動きをモーションキャプチャにより収録し、反映しているからなのだとか。


デジタルヒューマン「KIKI」©︎NEP/GMS


手話CGの画面イメージ

今回の実証実験では、字幕サービスは英語と日本語のみ、手話CGは「歴史」のみですが、今後、言語や手話CGの数を増やし、サービスをより充実させていく予定です。会場にはアンケートを用意し、皆さまからの感想やご意見をお待ちしています。

最後にもう一つ。同じ室内には「舟木本」の高精細複製屏風(*)も展示中。拡大映像の描写をご覧いただいた後に、実寸大の屏風の描写と見比べてみるのもおすすめです。


高精細複製屏風も展示。ガラス越しではなく、至近距離から実寸大の描写を鑑賞できる

「8Kで楽しむ国宝屏風『洛中洛外 京めぐり』」は、2024年4月7日(日)まで。
庭園の桜も待ち遠しい春の東京国立博物館にお越しの際には、平成館1階ガイダンスルームでぜひ屏風の中の「京めぐり」もお楽しみください。

(*)〈ぶんかつ〉とキヤノン株式会社による共同プロジェクト「高精細複製品を用いた日本の文化財活用のための共同研究」の一環として活用

8Kで楽しむ国宝屏風「洛中洛外 京めぐり」

日時:2024 年 3 月 19 日(火)~4 月 7 日(日)

会場:東京国立博物館 平成館 1 階 ガイダンスルーム (東京都台東区上野公園 13-9)

開館時間:9:30~ 17:00(入館は閉館の30分前まで)
※毎週金曜日と土曜日は夜19:00まで開館
※総合文化展の開館時間に準じます。

休館日:月曜日

観覧料:無料 *ただし、総合文化展観覧料もしくは開催中の特別展観覧料[観覧当日に限る]が必要

主催:東京国立博物館、文化財活用センター、NHK

▷8Kで楽しむ国宝屏風「洛中洛外 京めぐり」