ぶんかつブログ

「悲母観音図綴織額」~東京国立博物館から下関市立美術館へ

狩野芳崖(1828~1888年)が最晩年の明治21年(1888)に描いた「悲母観音図」。それを織物で表現しようと、川島織物の二代川島甚兵衛が京都・西陣の伝統的な織物技法、綴織(つづれおり)で仕上げたのがこの作品です。
明治28年(1895)に完成し、京都で行なわれた第4回内国勧業博覧会に出品された際には、柳の樹に花鳥をあしらった木彫の額縁のある重厚な額におさめられ、展覧されました。東京国立博物館でもめったに展示されることがない、名品です。


悲母観音図綴織額(部分)二代川島甚兵衛作 明治28年(1895) 東京国立博物館蔵

今回は下関市立美術館で開館40周年記念特別展「狩野芳崖、継がれる想い―悲母観音からはじまる物語」が開催されることとなり、東京藝術大学が所蔵する狩野芳崖の「悲母観音図」とともに、展示されることとなりました。

▷開館40周年記念特別展 狩野芳崖、継がれる想い——悲母観音からはじまる物語の概要を見る

 

その大きさは、高さが3メートルあまり、幅も1.5メートル近くあり、重さは本体のみで80kgあります。大の大人が6人がかりでようやく持ち運びができるような大作です。
運ぶための点検や梱包も入念に、時間をかけて行なわれました。

画面の一部を拡大画像でみると、織りなす糸の間に隙間が見えます。

色糸で絵を描く技法が「綴織」で、この色が変わる部分に隙間ができる点が綴織の特徴です。糸と糸の間に張力がかかるので、運ぶのにも神経を使います。下関市立美術館には、同館学芸員の添乗のもと美術品を運ぶ専用のトラックに載せて運ばれます。

会場に到着した「悲母観音図綴織額」。いよいよ開梱です。

点検を終えて、いざ、展示へ。重量のある作品を展示するためには、その重さに耐えられるよう、慎重に展示作業を行ないます。

国立博物館からお貸し出しする作品は、原則としてケース内に展示いただくことになっています。今回の展示では、この大型作品のために、特別なケースを制作していただきました。

織の糸目が見えるほど、至近距離でご覧いただけます。

衣装の模様、悲母観音が被るレースの透け感など、綴織の超絶技巧が生かされています。

同じ会場に狩野芳崖の実物と、川島甚兵衛の綴織、2つの「悲母観音」が展示されることは、まれにみる機会です。芳崖の「悲母観音図」はいうまでもありませんが、川島甚兵衛の綴織には、人の手技から生まれる作品の凄みがあります。
ぜひ、会場で2つ名作を見比べてみてください。

開館40周年記念特別展 狩野芳崖、継がれる想い——悲母観音からはじまる物語

会期 2024年2月6日(火) ~ 2024年3月17日(日)

会場 下関市立美術館(下関市長府黒門東町1-1)

開館時間 午前9時30分~午後5時 (入館は午後4時30分まで)

休館日 月曜日

観覧料 一般1,200円(1,000円)/大学生1,000円(800円)※()内は、平日料金。
18歳以下の方、高等学校、中等教育学校、特別支援学校に在学の生徒は、観覧料が免除されます。
下関市内に居住する65歳以上の方は半額が免除されます。(いずれも公的証明書の提示が必要です)

下関市立美術館・公式サイト https://www.city.shimonoseki.lg.jp/site/art/

下関市立美術館・Instagram https://www.instagram.com/shimonosekicityartmuseum/

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カテゴリ: 文化財の貸与