ぶんかつブログ

東西日本の弥生文化を糸島で!

東京国立博物館日本考古担当の菊池望です。
突然ですが、日本の東西と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
例えば、食文化。
ところ変われば身近な食材もそれぞれ、これに応じて人々の好みも変わるように、うどん一つとっても日本各地で出汁の味や具材などがさまざまですよね。

2000年以上昔の弥生時代の人々の暮らしも同じで、生活に用いる道具や祈りの対象も地域によってさまざまです。

 

そのため、東西に長く伸びた日本列島では、気候や風土に合わせて、地域色豊かな弥生文化が花開きました。

こうした弥生文化の東西を、文化財から実感できる展覧会「東西日本の弥生文化 ~東京国立博物館収蔵コレクションより~」が、福岡県糸島市の伊都国歴史博物館で開催中です。

▷東西日本の弥生文化 ~東京国立博物館収蔵コレクションより~の概要をみる


伊都国歴史博物館外観

全4章で構成されている展覧会の魅力をダイジェストでご紹介します。

「第Ⅰ章 稲作文化の到来と土器様式の変化」では、糸島市内出土の弥生時代開始期の土器を展示しています。

古来より朝鮮半島からの文化伝播が伝わる窓口となった糸島では、水稲農耕を伴った新たな文化様式がいち早く到来しました。
弥生時代が始まったころの糸島では、朝鮮半島の土器とよく似た、シンプルな形や装飾の土器が使われていたようです。


会場の様子

「第Ⅱ章 東西日本列島の土器 西日本」・「第Ⅲ章 東西日本列島の土器 東日本」では、北海道から九州までさまざまな土器を一同に展示し、その形の特徴やその使い方を展示しています。

ところ変われば土器も変わる、中でもおすすめは土偶形容器です。
頭の部分が開口し、底まで中空になっています。
弥生時代の東日本ではこうした人体を模した土偶形の土器が、葬送儀礼に用いられました。
本例では見つかっていませんが、土偶形容器の中には骨が納められていたものもあります。
縄文時代以来の伝統も色濃く残す、東日本の弥生文化らしい逸品です。


土偶形容器(J-7532 弥生時代(前期) 長野県上田市腰越出土) 東京国立博物館蔵

また、今回は九州地方ではなかなか見ることのできない、北海道で弥生時代と同時期にあたる続縄文時代の土器も展示しています。


深鉢形土器(J-8926 続縄文時代(前期)  北海道室蘭市祝津町出土) 東京国立博物館蔵

「第Ⅳ章 列島の多様な青銅器文化」では、弥生時代に用いられたさまざまな青銅器を展示します。

青銅器は主に祭りの道具として発達を遂げますが、中でもひときわ目立つのが近畿地方を中心に生産された釣鐘形の祭りの道具、銅鐸です。

注目すべきはその大きさの変化です。

成立した当初は20㎝ほどに小さかった銅鐸も、弥生時代を通じてどんどん大きくなっていきます。
その機能も移り変わり、実際に鳴らして音を聞くものから、派手に飾られ眺めるものへと変化したと考えられています。
今回展示している銅鐸は、重さは15キロほど、その大きさは優に1mを超える、弥生時代の終わりごろに作られた大型の銅鐸です。


突線鈕式銅鐸(J-8983 弥生時代(後期) 和歌山県みなべ町西本庄出土) 東京国立博物館蔵

展示を見た後には、銅鐸の実物大パネルと記念撮影もできます!


近畿の弥生文化を代表する大型青銅器、銅鐸と背比べしてみてください。

また、今回は東京国立博物館所蔵の糸島市出土の文化財も里帰りし展示されています。


勾玉(J-36684 弥生時代(中期) 福岡県糸島市二丈石崎(甕棺内)出土) 東京国立博物館蔵

本展覧会は文化財活用センター〈ぶんかつ〉の収蔵品貸与促進事業の一環として開催しており、これまでに国立文化財機構所蔵のさまざまな文化財が本事業で各地域へ里帰りしています。

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特別展をご覧になった後には、併せて常設展示もご観覧いただけます。
伊都国王の墓と考えられ、国内最大の銅鏡が出土した国宝である平原1号墓から出土した副葬品一括を中心に、糸島の旧石器時代から近代までの文化財が展示されています。


平原1号墓の主体部(棺が納められていたところ)発見当時の状況を、実物大で再現した模型は必見です。

伊都国歴史博物館の周辺には、平原1号墓などの弥生時代の王墓や、古墳の数々、古代山城として著名な怡土城(いとじょう)など、見ごたえのある史跡が多数あります。
ぜひ、博物館と併せて散策されることをお勧めします。


平原1号墓は公園として復元・整備されています。実際に現地にいくと、眺めのよい場所が選ばれたことがわかります。弥生時代の伊都国王が眺めたであろう糸島の風景に思いを馳せてみてください。

以上、簡単ではありますが、この冬一押しの展覧会をご紹介いたしました。

令和5年度伊都国歴史博物館冬季特別展「東西日本の弥生文化 ~東京国立博物館収蔵コレクションより~」は3月17日(日)まで。

ぜひ、糸島の史跡巡りともに、伊都国歴史博物館で弥生文化の東西を味わってみてはいかがでしょうか。

東西日本の弥生文化 〜東京国立博物館収蔵コレクションより~

会期 2024年1月27日(土) ~ 2024年3月17日(日)

会場 糸島市立伊都国歴史博物館(福岡県糸島市前原西1丁目1-1)

開館時間 9:00〜17:00 (入館は16:30まで)

休館日 毎週月曜日

特別展観覧料 大人400円(団体300円)、高校生200円(団体150円)
・中学生以下無料
・有料入館者20名以上の団体の場合、上記()内の団体料金でご覧頂くことができます。
・身体障がい者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳等を提示の場合は無料です(付添い1名まで)。

糸島市立伊都国歴史博物館・公式サイト https://www.city.itoshima.lg.jp/m043/010/index.html

カテゴリ: 文化財の貸与