ぶんかつブログ

天平人も夢中!よみがえった古代ボードゲーム「かりうち」

「かりうち」とは、「かり」という4本の棒をサイコロ替わりに投げて目を読み、手持ちの4つのコマをすべて先に上がらせた方が勝ち、という双六(すごろく)に似たゲームです。
古代日本で遊ばれていた盤上遊戯の一つで、奈良時代には囲碁・双六とともに流行していましたが、どういうわけか後世に廃れてしまい、現代の日本には伝わっていません。


よみがえった「かりうち」

ところが近年、奈良文化財研究所による平城宮・京跡で出土した土器の調査研究の過程で、このかりうちの盤面が発見されました。


平城京二条大路で出土した土師器(はじき)。皿の内面に盤面が刻まれている。

平城宮で出土した須恵器。裏面に盤面の模様が描かれている。

もともと、かりうちは『万葉集』の歌に4本の棒とその組み合わせを意味する言葉遊びとして登場することから、韓国で現代も遊ばれている「ユンノリ」という盤上遊戯に似たもので、朝鮮半島から伝わった遊びではないか、と推定されていました。盤面そのものの発見によって、これが考古学的にも裏付けられることとなったのです。

かりうちの遊び方は現代に伝わっていませんが、ユンノリのルールを手がかりにすれば、現代においてもかりうちを楽しむことができるのではないか?そう考えて、試しに遊んでみると、古代にあまりの流行に禁止令が出たこともうなずける面白さ。
この遊びを現代にも流行させて、全国の古代遺跡で遊んでほしい!そして平城宮跡で全国大会を開催したい!そんな考古学者の夢を実現させるべく、かりうちを現代も遊べるボードゲームとしてよみがえらせる「かりうちプロジェクト」が立ち上がりました。

ルールや用具の検討では、学術的に導きだせるものと、推測で補う部分、そして現代のさまざまな人に広く遊んでもらうためのアレンジとを仕分けし、ボードゲーム愛好家の方々や、地元奈良県内の業者さんからも助言をいただいて、試作品をつくり、テストプレイを繰り返しました。


奈良文化財研究所でのテストプレイの様子。少しずつ形状の異なる用具の使用感をメモ。わかりにくいと感じたルールについて意見を聴取しました。

▷「かりうち公式ルールができるまで」(なぶんけんブログ)
[https://www.nabunken.go.jp/nabunkenblog/2023/08/20230816.html]

そして、2023年度より「なぶんけん×ぶんかつ!アウトリーチプログラム よみがえった古代のゲーム『かりうち』で遊ぼう!」が始動。ついに全国の皆様にかりうちを遊んでいただける「かりうちキット」をお届けできるようになりました。

▷「かりうちアウトリーチプログラムについて」

この、よみがえった古代のボードゲームかりうちは、こどもからシニアまで楽しめる、運と戦略のバランスが絶妙なゲームです。
自分のコマをまとめて進めることのできる「おんぶ」、相手のコマを振り出しに戻せる「どんでん返し」、大きな目を連続で出して猛攻する「連チャン」などの技で、最後まで逆転の可能性があるハラハラの展開となることもあります。
遊び方を動画でも説明していますので、関心のある方は、ぜひご視聴ください。

▷「かりうちの遊び方(YouTubeなぶんけんチャンネル)
[https://www.youtube.com/watch?v=NWMjVsVTnwg]

かりうち全国大会の開催に向けて、平城宮跡歴史公園の朱雀門ひろばでは、秋にかりうち対戦試合を開催しています。
2023年の対戦試合では、小学校や奈良市の放課後児童クラブでかりうちを体験した子どもたちが参戦するなど、奈良を中心にかりうちが広まりつつあることが実感できました。


平城宮跡でのかりうち対戦試合。天平人も楽しんだであろう「かりうち」を通じて、古代とつながる瞬間です。


天平衣装を着てご参加くださる出場者の方も。

かりうちを体験していただいたみなさんからは、「4本のかりを投げる感触や音がいい!」「こどもでも大人に勝てるのが楽しい!」という感想や、「古代にこんな楽しい遊びがあったなんて!」という驚き、「なぜこのような楽しい遊びが廃れてしまったのか?」という問いも寄せられています。

私たちプロジェクトのメンバーは、歴史ファンではない方にも、遊びを通じて知らず知らずのうちに、天平人と体験を共有してもらい、平城宮跡をはじめとする地域の古代遺跡に目を向けるきっかけにしてほしい、という思いで活動しています。
また、かりうちを現代に再び流行させることができれば、なぜかりうちが古代に流行しその後廃れてしまったのか、という謎を解明する手がかりを得られるのではないか、と密かに期待もしています。

みんなで、かりうちを現代に大流行させましょう!

▷「かりうちプロジェクト」(奈良文化財研究所ウェブサイト)
[https://www.nabunken.go.jp/research/kariuchi.html]

かりうちキットの販売は、平城宮跡資料館および平城宮跡歴史公園いざない館にて販売中。
オンライン販売は、下記のリンクよりオンラインショップ「六一書房」サイトにて。
[https://www.nabunken.go.jp/heijo/museum/shop.html]

なお、2024年1月16日(火)~3月10日(日)の期間限定で、東京国立博物館ミュージアムショップにて、かりうちキットをはじめとする、奈文研グッズを販売しています。
この機会をお見逃しなく!


東京国立博物館ミュージアムショップの奈文研グッズコーナー

カテゴリ: 複製の活用