ぶんかつブログ

ワークショップ「絵巻物をみて!きいて!さわろう!」

文化財活用センター〈ぶんかつ〉は、先端技術を用いて国立博物館の収蔵品の複製やデジタルコンテンツを開発し、それらを活用する活動を行なっています。
このブログでは、奈良国立博物館が2021年度に制作した複製「辟邪絵(へきじゃえ)」と「地獄草紙」の活用についてご紹介します。

2023年6月29日に公開したブログでは、ならはく教育普及スペース「ちえひろば」で定期的に開催している、仏像の複製品に服を着せる とくべつワークショップ「ほとけさまに服を着せよう!」についてご紹介しました。
▷関連ブログ「ワークショップ「ほとけさまに服を着せよう!」の記事を読む

今回は、同じく「ちえひろば」で定期的に開催している、文化財の複製品を活用したもう一つのワークショップをご紹介します。その名も、とくべつワークショップ「絵巻物をみて!きいて!さわろう!」です。


ワークショップのポスター

これは、その名の通り、絵巻物を題材としたワークショップです。絵巻物というと、文化財の中でも比較的なじみがあるものの一つかもしれません。けれど、その内容や鑑賞方法については、知っているようで、実はあまり詳しく知らないかも…という方が多いのではないでしょうか。

そこで、絵巻物の内容や鑑賞方法を体験的に学ぶことで、絵巻物についてより理解を深め、さらに親しみをもってもらおうと、絵巻物の複製品を活用するこのワークショップを企画しました。

現在は、奈良博所蔵の国宝「辟邪絵」と国宝「地獄草紙」の2つを題材としてワークショップを行なっています。どちらも今からおよそ850年前の、平安時代の終わり頃から鎌倉時代のはじめにかけての時期(12~13世紀)に制作された文化財です。

国宝「辟邪絵」は、人々に病気や災いをもたらす悪い鬼たちを退治する、5人の神さまを表した作品です。現在はそれぞれの場面が切り離された状態で、計5幅の掛け軸として伝わっていますが、もともとは絵巻物として制作されました。このワークショップでは、当初の状態を復元した絵巻物の状態で、国宝「辟邪絵」を紹介しています。


国宝 辟邪絵のうち天刑星

もう一方の国宝「地獄草紙」は、8つの地獄の世界を表した作品です。それぞれの地獄の世界で、生前に罪を犯した人たちが、鬼などに責められ罰を与えられる凄惨な様子が描かれています。


国宝 地獄草紙のうち鉄磑所

ではここから、国宝「辟邪絵」と国宝「地獄草紙」の2つの絵巻物を題材として、どのようにワークショップを行なっているのか、その方法を簡単にご紹介します。

このワークショップでは、まず10分ほど、実際の絵巻物を約4倍に拡大した大型の絵巻装置、その名も「びっくり絵巻」を使って、ボランティアが読み聞かせをします。


「びっくり絵巻(国宝 辟邪絵)」

紙芝居ならぬ絵巻芝居で、楽しく絵巻物のストーリーを学べます。また、拡大した画面を間近で見ることができるので、まさに大迫力!子どもから大人までみんなが夢中になり、じっくりと聞いてくれます。


「びっくり絵巻」を用いた読み聞かせの様子

そして絵巻物の読み聞かせの後に、参加者の方々に、〈ぶんかつ〉の協力のもと制作した、国宝「辟邪絵」と国宝「地獄草紙」の原寸大の絵巻物の複製品に実際に触れていただきます。


国宝 辟邪絵の複製品


国宝 地獄草紙の複製品


国宝 辟邪絵と国宝 地獄草紙の複製品を巻いた状態

原寸大の絵巻物の複製品を参加者の方に実際に触れていただく体験の目的は主に二つあります。一つ目は、絵巻物の世界をより身近に感じてもらうことです。

「びっくり絵巻」を用いた読み聞かせで絵巻物のストーリーを一通り理解した上で、原寸大の絵巻物の複製品に触れることで、ストーリーの理解がより深まります。

参加者の方の体験の様子を観察していると、「あ!これ、さっき見た神さまだ!悪い鬼をいっぱい食べる神さまなんだよね!」「地獄でこんな怖い目に遭うのは嫌だな~」などといった感想を耳にし、絵巻物の世界に入り込んでいる様子をうかがうことができます。


国宝 辟邪絵の複製品に触れる子どもたちと内容を解説するボランティア

また手元で絵巻物の複製品を画面の細部までじっくりと見ることができ、新たな発見があることも。 「見て!こんなところにも鬼が描かれている!」「とても繊細なタッチで描かれているのがよく分かる!」と、驚きの声もよく耳にします。絵巻物の読み聞かせと複製品を使った鑑賞体験をセットで行なうことで、絵巻物のストーリーへの理解がより深まる相乗効果を発揮できていると実感しています。

そして、この絵巻物の複製品を使った体験のもう一つのねらいは、絵巻物の鑑賞方法について知ってもらうことです。

絵巻物は、博物館や美術館などで、複数の場面を一度に見られるよう、長く広げた状態で展示されることが多いため、昔も長く広げた状態で鑑賞されていたとイメージされる方が多いかもしれません。


2021年に開催した特別展「奈良博三昧」での国宝 地獄草紙の展示風景

けれど実は、昔の人たちは、絵巻物を長く広げた状態で一度に複数の画面を眺めていたのではなく、肩幅ほどの長さを広げて一つの場面を鑑賞し、見終わった画面の部分は巻きつつ、次の一場面を開くという動作を繰り返しながら、絵巻物を鑑賞していました。次にどんな場面が登場するのか、ドキドキしながら絵巻物を広げ、鑑賞していたのです。

ワークショップの参加者の方々には、実際に絵巻物の複製品に触れてもらいながら、昔の鑑賞方法を追体験していただきます。


絵巻の複製品に触る体験の様子

体験にご参加いただいた方からは、「こんな風に鑑賞するなんて知らなかった」「絵巻物のことがよくわかった」という感想をよくお寄せいただきます。絵巻物の世界は奥深く、知れば知るほど楽しい、ということを、このワークショップを通してもっと広めていけたら、と思っています。

今回ご紹介した、とくべつワークショップ「絵巻物をみて!きいて!さわろう!」は、基本毎月第4日曜の10時30分から15時30分の時間帯に開催しています。事前申込は不要、また参加費も無料ですので、お気軽にお立ち寄りください。

さらに今後は、題材となる絵物巻の種類をより増やし、ワークショップを一層充実させていく予定です。どうぞお楽しみに!
年内は、11月26 日(日)、12月24日(日)に開催予定です。

とくべつワークショップ「絵巻物をみて!きいて!さわろう!」

日程 毎月第4日曜日

時間 10:30~15:30

場所 ならはく教育普及スペース「ちえひろば」(当館の地下回廊にあります)

入場・参加料 無料

事前申込 不要

ならはく教育普及室ウェブサイト https://edu.narahaku.go.jp/

奈良国立博物館・公式サイト https://www.narahaku.go.jp/

奈良国立博物館・公式Twitter https://twitter.com/narahaku_PR

カテゴリ: 複製の活用