古代出雲歴史博物館の「特別展 ハニワの世界へようこそ」(2)
こんにちは!東京国立博物館(トーハク)考古室研究員の山本です。
今回は島根県立古代出雲歴史博物館で8月28日(日)まで開催されている「開館15周年記念特別展 ハニワの世界へようこそ」、そのご紹介の第2弾です。
▷「開館15周年記念特別展 ハニワの世界へようこそ」の開催概要をみる
「開館15周年記念特別展 ハニワの世界へようこそ」が開催されている島根県立古代出雲歴史博物館
「古代人が生んだゆるカワ文化。」というコピーが付けられているこの展覧会。
自由な見方のススメともいうべき、ユニークな取り組みが試みられているのは前回のブログで河野がご紹介した通りです。
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今回の展覧会、展示作品リストを見ていて気づくことがあります。
出展されている埴輪は中国地方と関東地方のもの。
関東地方では特に古墳時代後期(6世紀)以降、多彩な形象埴輪が展開したという特色がありますが、島根を中心とする中国地方勢も負けず劣らずの内容があります。
会場の様子。数多くの埴輪たちが集まっています。
四国出身の私は関東に来てからよくお蕎麦を食べるようになりましたが、ことに島根は西日本の中では珍しくお蕎麦が有名というのも共通するでしょうか・・・(適当なことを書いてすみません)
さて「ゆるカワ」埴輪を多く紹介しているこの展覧会ですが、このうち「カワ」すなわち「カワイイ」部分には、もしかしたら出雲の特産品が貢献しているかもしれません。
人物埴輪は特に関東でよく発達した埴輪のうちの一つです。
その中でも高位の人物や巫女の埴輪には、カワイイ玉飾りを身につけたものも目立ちます。
古墳時代に限らずその前後の時期も含めて、現在の島根県東部にあたる出雲で盛んだったのが玉作り。
花仙山とその周辺で採掘される碧玉や瑪瑙を使って、勾玉をはじめとするさまざまな玉が作られました。また製品だけでなく、原料となる石材も出雲から奈良に運ばれ、玉類が生産されたこともわかっています。
玉造温泉街に近い、松江市出雲玉作資料館と隣接する出雲玉作史跡公園。出雲の玉作りについて学ぶことができます
出雲産の石材で作られた玉は日本各地で見つかっており、同じく日本各地の人物埴輪たちが身につけている玉のモチーフとなったものも多いでしょう。
埴輪 両手を挙げる女子(部分) 古墳時代・6世紀 茨城県水戸市愛宕町出土 東京国立博物館蔵
今回お貸し出ししている埴輪のうちのひとつ。首飾りの玉は島根の石材で作られたものでしょうか・・・
島根の埴輪のなかには表現の省略部分が多く、結果として「ゆる〜い」感じになるものが多く見受けられます。
その代表とも言えるのが、今回の特別展に合わせてトーハクからお貸し出ししている松江市の岩屋後古墳から出土した「ゆる〜い」風貌の埴輪たち。
埴輪 両手を挙げる女子 古墳時代・6世紀 島根県松江市 岩屋後古墳出土 東京国立博物館蔵
埴輪 両手を挙げる女子 古墳時代・6世紀 島根県松江市 岩屋後古墳出土 東京国立博物館蔵
埴輪 首飾りの女子 古墳時代・6世紀 島根県松江市 岩屋後古墳出土 東京国立博物館蔵
埴輪 帽子を被る男子 古墳時代・6世紀 島根県松江市 岩屋後古墳出土 東京国立博物館蔵
これら地元の古墳から出土した埴輪たちが今回の国立博物館収蔵品貸与促進事業によって里帰りを果たしています。
この埴輪たちは松江市に所在する岩屋後古墳に立て並べられていたものです。
岩屋後古墳と、トーハク所蔵の同古墳出土埴輪のレプリカたち。島根県立八雲立つ風土記の丘資料館で展示されているものです(島根県立古代出雲歴史博物館提供)
上の写真はさすがに実物を現地に並べて撮影したものではありませんが、岩屋後古墳は山陰地方でも最大規模の石室を有する古墳として著名です。
現在の岩屋後古墳。島根県立八雲立つ風土記の丘資料館のほど近くにあります
遺跡から出土する考古資料は、特にその遺跡が存在する地域とのつながりが強いもの。
「ハニワの世界へようこそ」展は里帰りした埴輪たちを地元でご覧になれるまたとない機会となっています。
国立博物館収蔵品貸与促進事業では、これまでにも多くの地域ゆかりの収蔵品を全国のミュージアムへお貸し出ししています。
今後も本事業を通じ、各地の皆様と力を合わせて展覧会を開催していければと考えています。
開館15周年記念 特別展「ハニワの世界へようこそ」
会期 2022年7月1日(金)~8月28日(日)
会場 島根県立古代出雲歴史博物館 (〒699-0701 島根県出雲市大社町杵築東99番地4)
島根県立古代出雲歴史博物館・公式サイト https://www.izm.ed.jp/
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- 2022年08月10日 (水)