文化財の魅力を伝えるために
文化財活用センター〈ぶんかつ〉が実施している貸与促進事業では、貸し出しに先立って文化財の安全性や展示効果を高めるために、埃などの汚れをクリーニングしたり、剥落留めなど応急修理したりします。また文化財の形状に合わせた専用の展示具の作成を行なうこともあります。
▷貸与促進事業とは
今回ご紹介する滋賀県野洲市大岩山古墳から出土した鏡(獣帯鏡、三角縁二神二獣鏡)は、今秋に滋賀県立安土城考古博物館で開催される特別展「大岩山銅鐸里帰り展(仮称)」のために貸し出しが予定されているものです。
獣帯鏡 古墳時代・4世紀 滋賀県野洲市大岩山古墳出土 沢友之進氏他寄贈 鏡背面
三角縁二神二獣鏡 古墳時代・4世紀 滋賀県野洲市大岩山古墳出土 沢友之進氏他寄贈 鏡背面
大岩山古墳出土品は大正8年(1919)に東京国立博物館(トーハク)へ寄贈され、これらの鏡は昭和初期に修理がなされただろうものです。その修理方法は、まず鏡の破片を漆で接合し、次に欠損部分を覆うように鏡面から薄い銅板で裏打ちし、最後に石膏などの複数の材料を用いて欠損部分の補填がなされています。当時の修理方法としてしばしばみられるものですが、当該品は補彩がなされていないため、修理に用いた材料の地色が汚れのように悪目立ちし、鑑賞を妨げていました。
三角縁二神二獣鏡 古墳時代・4世紀 滋賀県野洲市大岩山古墳出土 沢友之進氏他寄贈 鏡面
そこで今回の貸し出しに先立っては、文化財を丁寧に観察して状態に問題がないことを確認し、展示効果を高めるために復元部分にアクリル絵の具で補彩することにしました。まず鏡の現存する部分を参考に近似する色を作り、その後仕上がりを見ながら何回かに分けて補彩しました。
点検作業
補彩作業
補彩の前後を見比べると、それまで鑑賞を妨げていた復元部分が気にならなくなったとは思いませんか?
三角縁二神二獣鏡 古墳時代・4世紀 滋賀県野洲市大岩山古墳出土 沢友之進氏他寄贈 補彩前/補彩後
ほんのささやかなことかと思いますが、所蔵品の魅力を高めるべく、〈ぶんかつ〉では文化財の調査研究、保存修復、展示活用とさまざまな側面から活動を進めています。
秋にはふるさとに里帰りして展示される大岩山古墳出土品。ぜひ滋賀県立安土城考古博物館へ足をお運びいただき、多くの方々にご覧いただければと思っています。
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- 2022年04月21日 (木)