2022年度貸与促進事業による6つの展覧会をご紹介
今年度、最初のブログは貸与促進担当からお届けします!
春の陽気とともに新年度がスタートしました。新しい年度の始まりは気持ちが引き締まるとともに、ワクワクとした気分にもなりますね。みなさんはどのように新しい年度をお迎えでしょうか。
さて、東京・京都・奈良・九州の4つの国立博物館が全国の美術館・博物館に対し、地域ゆかりの収蔵品を貸し出し、文化財活用センター〈ぶんかつ〉が輸送費等を支出する「国立博物館収蔵品貸与促進事業」(以下、貸与促進事業)。事業開始から6年目となりました。
2022年度、この事業に採択されたのは、愛知・島根・栃木・鹿児島・滋賀・沖縄の6つの施設。今年度も、文化財をとおして各地域の歴史と文化にふれられる魅力あふれる展覧会が選定され、国立博物館が所蔵する地域ゆかりの文化財113件が里帰りをします。
それではさっそく、6つの展覧会を開催順にご紹介してまいりましょう。
1. 刈谷市歴史博物館
「伊勢物語とかきつばた」 貸与予定件数:3件
会期:2022年4月23日(土)~2022年6月5日(日)
URL:https://www.city.kariya.lg.jp/rekihaku/
公式Twitter:https://twitter.com/kariyarekihaku
今年度、最初の展覧会は、刈谷市歴史博物館の「伊勢物語とかきつばた」展です。
かきつばたの名所として知られる、愛知県刈谷市をはじめとする西三河地域。これは、平安時代の歌物語「伊勢物語」第九段の「東下り」で、在原業平といわれる主人公が八橋(現・愛知県知立市)で「かきつばた」を歌に詠んだことに由来します。
公家の教養であった「伊勢物語」ですが、江戸時代には尾形光琳(1658~1716)や乾山(1663~1743)といった琳派によって八橋のかきつばたが描かれ、出版文化の隆盛とともに庶民にも活字で読まれるようになりました。
本展では、「伊勢物語絵巻(模本)」などを東京国立博物館(トーハク)から、「伊勢物語絵巻 上巻」を京都国立博物館(京博)から貸し出し、江戸時代に焦点をあて、伊勢物語やかきつばたが広く受容された歴史を紹介します。
伊勢物語絵巻(模本) 巻第一(部分) 古藤養成(他)模 江戸時代・天保9年(1838) 東京国立博物館蔵
2. 島根県立古代出雲歴史博物館
「ハニワの世界へようこそ」 貸与予定件数:9件
会期:2022年7月1日(金)~2022年8月28日(日)
URL:http://www.izm.ed.jp/
7月1日から夏休み期間にかけて開催されるのは、島根県立古代出雲歴史博物館の「ハニワの世界へようこそ」展です。
土を高く持ち上げて営造されたお墓である、古墳。その上に埴輪を立て並べる習慣は、前方後円墳が全国的に築造されはじめるのにあわせて各地に広まりました。
古墳時代後期には、古墳の一角を区切り、人物や動物、武具等のさまざまな器物を表現した埴輪を並べ、被葬者の生前の活躍や首長継承のまつりを再現するようになります。こうして埴輪は、より表情豊かで多彩なものへと変化していきました。
本展では、トーハクから「馬形埴輪」(重要文化財)をはじめとする考古資料を貸し出し、そのほか山陰地域出土の形象埴輪を中心に、人物や動物をかたどったさまざまな埴輪を展示します。制作時期や地域ごとの特徴や違いといった考古学的な比較だけでなく、個々のハニワが持つデフォルメの妙や豊かな表情など、形象埴輪の魅力を紹介します。
重要文化財 馬形埴輪 古墳時代・6世紀 埼玉県熊谷市上中条出土 東京国立博物館蔵
3. 足利市立美術館
「あしかがの歴史と文化再発見!」 貸与予定件数:16件
会期:2022年4年7月30日(土)~2022年4年10月10日(月・祝)
URL:http://www.watv.ne.jp/ashi-bi/
公式Twitter:https://twitter.com/ashikagamuseum
7月30日の夏休み期間から10月10日のスポーツの日まで開催されるのは、栃木県の足利市立美術館の「あしかがの歴史と文化を再発見!」展です。
2021年に市制100周年を迎えた足利市では、100周年記念に続く取り組みとして、郷土を見つめ直す企画展を開催します。
本展では、トーハクが所蔵する、熊野山古墳や十二天塚古墳(いずれも足利市)などから出土した考古資料を貸し出します。そのほか、足利ゆかりの文化財等を一堂に集め、これらを受け継いでゆく子どもたちにもわかりやすく、足利市の歴史と文化の源流を紹介します。
埴輪 童女 古墳時代・6世紀 栃木県足利市 熊野山古墳群出土 山田宗治氏他寄贈 東京国立博物館蔵
4. 鹿児島県歴史・美術センター黎明館
「茶の湯と薩摩」 貸与予定件数:30件
会期:2022年9月22日(木)~2022年11月6日(日)
URL:https://www.pref.kagoshima.jp/reimeikan/
公式Twitter:https://twitter.com/official_reimei
芸術の秋、展覧会シーズンに開催されるのは、鹿児島県歴史・美術センター黎明館の「茶の湯と薩摩」展です。
日本の伝統文化のひとつである茶の湯は、中国から伝来した喫茶法をもとに育まれました。室町時代には将軍家を中心に権威の象徴となり「唐物」が愛好されましたが、安土桃山時代に千利休(1522~1591)が侘茶を大成すると、新たに価値づけされた「和物」が登場し、政権者から大名、町衆へと広がりました。
本展では、トーハクから、薩摩焼を代表する文琳形茶入として名高い「黒釉文琳茶入 銘 望月」をはじめとする23件、九州国立博物館(きゅーはく)からは「油滴天目」(重要文化財)を含む7件を貸し出し、侘茶との出会いや大名茶への展開など、歴史の動向やさまざまな文化交流によって拡がる薩摩の茶の湯文化の歴史について人的交流を軸に紹介します。
左:黒釉文琳茶入 銘 望月 薩摩 江戸時代・17世紀 松永安左エ門氏寄贈 東京国立博物館蔵
右:重要文化財 油滴天目 中国・建窯 南宋時代 九州国立博物館蔵
5. 滋賀県立安土城考古博物館
「大岩山銅鐸里帰り展 (仮称)」 貸与予定件数:6件
会期:2022年10月8日(土)~2022年11月20日(日)
URL:https://azuchi-museum.or.jp/
現存する日本最大の銅鐸、なんと総高 約135cmが里帰りをするのは、開館30周年を記念して開催される、滋賀県立安土城考古博物館の「大岩山銅鐸里帰り展(仮称)」です。
弥生時代後期の銅鐸は、滋賀県野洲市の大岩山遺跡から明治14年(1881)、昭和37年(1962)の調査によって計24個が出土しました。
本展では、トーハク所蔵の、大岩山遺跡から出土した「突線鈕5式銅鐸」(重要文化財)をはじめ、〈ぶんかつ〉が修理費用を負担し、復元部分の補彩を行なった「三角縁二神二獣鏡」など、地域ゆかりの考古資料6件を貸し出します。
貸与促進担当では、各国立博物館と連携し、お貸し出しが難しい状態の作品修理も行なっています。滋賀県立安土城考古博物館へお貸し出しする考古資料の修理の様子は、次回ぶんかつブログでご紹介予定です。
重要文化財 突線鈕5式銅鐸 弥生時代(後期)・1~3世紀 滋賀県野洲市小篠原字大岩山出土 東京国立博物館蔵
6. 沖縄県立博物館・美術館
「琉球 ―美とその背景― 」 貸与予定件数:49件
会期:2022年10月14日(金)~2022年12月4日(日)
URL:https://okimu.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/okimu_chan
2022年に本土復帰50年を迎える沖縄県。その節目の年に開催されるのは、沖縄県立博物館・美術館の「琉球 ―美とその背景―」展です。
沖縄県は古くから海を通じてさまざまな国と交流し、独自の文化を発展させてきました。王都・首里を中心として発展したもの、島々で花開いたもの、各地域によって多様な文化を見ることができます。
本展では、トーハクから「黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙」や「三線」など28件を、きゅーはくからは「浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳」や「鳳凰螺鈿七弦琴」など21件を貸し出します。島々・村々で享受された「美」を地理的・歴史的な視点のみならず、民俗的な視点も含めて紹介します。
左:黒漆葡萄栗鼠螺鈿箙 沖縄本島 第二尚氏時代・18世紀~19世紀 東京国立博物館蔵
右:浅葱地窓絵枝垂桜文紅型衣裳 第二尚氏時代・19世紀 九州国立博物館蔵
以上、今年度に開催される魅力あふれる展覧会をご紹介しました。
お近くにお住まいのかた、ゴールデンウィークや夏休みに帰省されるかた、旅行を予定されているかた、貸与促進事業によって各地で開催される6つの展覧会をどうぞお楽しみに!
今後、展覧会の情報はこちらでもご案内していきます。
▷貸与促進事業 展覧会情報
- posted by
- at
- 2022年04月07日 (木)